2014年3月9日日曜日

スボレキサント 新規作用機序不眠症治療薬



スボレキサント(Suvorexant,MK-4305:MSD)は
デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)と呼ばれる新規作用機序の不眠症治療薬です。

商品名はベルソムラ錠を予定

(追記:2014年9月承認されました)

オレキシンは
発見当初、食欲に関係する脳内の物質として考えられていました。

ところが、このオレキシンを全く作り出せないマウスを作製したところ、
そのマウスがナルコレプシーに似た症状を示しました。

更に研究が進むと、ヒトのナルコレプシー患者の脳脊髄液で
オレキシンの量が非常に減少していることがわかりました。

つまり、ナルコレプシーの病因としてオレキシンの欠乏が証明されたのです。

ナルコレプシー患者さんは症状として、日中の過度の眠気に加えて、
睡眠麻痺、悪夢、入眠時幻覚、カタプレキシーを起こします。
つまり、オレキシンが覚醒状態の維持や睡眠状態お安定化に関わっていることが
わかると思います。


過度の睡眠を逆手に取って、不眠治療に応用できないかと考えられたのが、
オレキシン受容体拮抗薬のスボレキサントです。


第三相臨床試験の結果

2879人をプラセボ、低用量群、高用量群の3群に分けました。
3~12ヶ月間追跡投与を行いました。

結果、高用量群(高齢者15mg、非高齢者20mg)では総睡眠時間が20分以上有意に延長し、
中途覚醒時間は減少しました。
更にその効果は試験終了の12ヶ月間持続しました。

有害事象としては、眠気、倦怠感、口渇などの出現率が高く、
悪夢や入眠時幻覚、睡眠麻痺がわずかながら報告されました。
また、気になる事象として自殺念慮が認められています。

一方、睡眠薬の代表とされるベンゾジアゼピン系睡眠薬でみられるような
断薬時の反跳性不眠(いわゆるリバウンド)や退薬症状(禁断症状)はありませんでした。


その他の特徴として
半減期は12時間程度と長いけれど、持ち越し効果は少ないとされています。



Slides for the May 22, 2013 Meeting of the Peripheral and Central Nervous System Drugs Advisory Committee
http://www.fda.gov/downloads/AdvisoryCommittees/CommitteesMeetingMaterials/Drugs/PeripheralandCentralNervousSystemDrugsAdvisoryCommittee/UCM354215.pdf



【追記:2014.11.25薬価収載】

錠剤が粉砕された状態での薬物動態解析、有効性試験、安全性試験は実施されていません、
つまり、その有効性・安全性を評価する情報は存在しないのです。 
以上の理由により、本剤の粉砕投与は推奨されません。

 光及び湿気を避けるため、PTP シートのまま保存し、服用直前に取り出すようにしましょう。


また、錠剤に割線が入っていないので、分割することはできません。