2014年5月16日金曜日

新規経口抗凝固薬(NOAC)



これまで抗凝固薬といえば、ワルファリンでしたが
納豆やクロレラ、青汁の摂取禁止や、他の薬との飲み合わせや定期的な検査の必要性など
問題もありました。

これら問題を解決するために新規経口抗凝固薬は開発されました。

新規経口抗凝固薬は

Novel
Oral
Anti-
Coagulant

の頭文字をとってNOACと呼ばれています。

2011年にダビガトラン(プラザキサ)が発売され
2012年にリバーロキサバン(イグザレルト)
2013年にアピキサバン(エリキュース)が発売されました。

最近は、もう「新規」ではなくなっているという点から

Non vitaminK antagonist
Oral
Anti-
Coagulant

という意味のNOACでいいんじゃなかという意見もあります。


NOACの適応は
「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性閉塞症の発症抑制」です。

この非弁膜症性心房細動とはなんでしょうか。
これは「人工弁置換とリウマチ性僧帽弁膜症を有さない心房細動」
のことです。
つまり、人工弁を入れている患者さんや、リウマチ性僧帽弁膜症の方は
NOACの使用は出来ず、ワルファリン一択ということになります。

同様の考え方で、NOAC禁忌例では、ワルファリンを選択しなくてはなりません。


心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版)


NOACの減量基準
臨床の現場ではNOACの減量をどうするかが問題になっているように感じます。
一般内科や循環器内科では安全性を重視され低用量を好み、
脳卒中専門医は効果重視で標準用量を好む傾向にあるきらいがあります。

しかし、NOACは標準用量と低用量を好みで選択するような薬剤ではありません。
減量にはルールが定められています。
もちろんルールを逸脱して減量することがあれば問題となります。

ダビガトラン
用法・用量 
通常、成人にはダビガトランエテキシラートとして1回150mg(75mgカプセルを2カプセル)を1日2回経口投与する。なお、必要に応じて、ダビガトランエテキシラートとして1回110mg(110mgカプセルを1カプセル)を1日2回投与へ減量すること。 

用法・用量に関連する使用上の注意 
1. 以下の患者では、ダビガトランの血中濃度が上昇するおそれがあるため、本剤1回110mg1日2回投与を考慮し、慎重に投与すること。  
・中等度の腎障害(クレアチニンクリアランス30-50mL/min)のある患者  
・P-糖蛋白阻害剤(経口剤)を併用している患者  
2. 以下のような出血の危険性が高いと判断される患者では、本剤1回110mg1日2回投与を考慮し、慎重に投与すること。  
・70歳以上の患者  
・消化管出血の既往を有する患者

このように、ダビガトランの添付文書には記載があります。
減量については考慮する基準はありますが、
「減量をしなければならない」ルールは記載されていません。


リバーロキサバン
用法・用量 
通常、成人にはリバーロキサバンとして15mgを1日1回食後に経口投与する.なお、腎障害のある患者に対しては、腎機能の程度に応じて10mg1日1回に減量する. 

用法及び用量に関連する使用上の注意 
1. クレアチニンクリアランス30~49mL/minの患者には、10mgを1日1回投与する. 
 2. クレアチニンクリアランス15~29mL/minの患者では、本剤の血中濃度が上昇することが示唆されており、これらの患者における有効性及び安全性は確立していないので、本剤投与の適否を慎重に検討した上で、投与する場合は、10mgを1日1回投与する. 

このように、リバーロキサバンの添付文書には記載があります。
腎障害の程度によって減量をします。「適宜増減」ではありませんので、
減量基準に合致すれば。減量しなくてはなりません。
また、食後投与が規定されている唯一のNOACです。


アピキサバン
用法・用量 
通常、成人にはアピキサバンとして1回5mgを1日2回経口投与する。なお、年齢、体重、腎機能に応じて、アピキサバンとして1回2.5mg1日2回投与へ減量する。  

用法及び用量に関連する使用上の注意 
次の基準の2つ以上に該当する患者は、出血のリスクが高く、本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、1回2.5mg1日2回経口投与する。 
・80歳以上 
・体重60kg以下  
・血清クレアチニン1.5mg/dL以上 

このように、アピキサバンの添付文書には記載があります。
「適宜増減」ではありませんので、減量基準に合致すれば。
減量しなくてはなりません。


添付文書上の減量の基準に合致しないにも関わらず、医師の判断で減量し、
その患者さんが脳梗塞を発症した場合、問題となります。無論、訴訟リスクを伴います。

減量の基準に合致しないが出血リスクを回避するために減量する場合は、
その旨を患者さんやそのご家族に説明と同意を得てカルテに記載しておくほうが無難だと思われます。