2014年5月16日金曜日

レボチロキシン(チラーヂンS)服用時に注意したい飲み合わせ


甲状腺ホルモン製剤のレボチロキシン(チラーヂンSなど)は甲状腺機能低下症や甲状腺腫などに用いられる薬です。

鉄剤やアルミニウム含有胃薬やカルシウム製剤などの金属含有製剤、胆汁酸を吸着するコレスチラミンやコレスチミド、セベラマーリン酸塩などととの併用により、吸収が阻害され薬効薬理が低下することが知られています。

医薬品以外にも、鉄、カルシウムやアルミニウム等は市販のOTC医薬品やサプリメントにも含まれています。

知らないうちにこれらとレボチロキシンとの同時投与がされているケースが有ります。注意が必要です。

効果減弱のメカニズム

金属含有製剤の併用(同時投与)によりレボチロキシンの吸収が低下するメカニズムは、レボチロキシンと金属が消化管内でキレートという複合体を形成し、吸収されにくくなることが考えられています。

コレスチミドやコレスチラミンやセベラマーリン酸塩、球形吸着炭については特定の分子を吸着結合させる性質を有するため、レボチロキシンを吸着し、吸収を阻害すると考えられています。


以上に上がっている薬は、レボチロキシンに特別ではなく抗生物質やワルファリンなどにも結合して効果を減弱させる恐れがあるので注意が必要です。


では、どう対処したらよいでしょうか。


レボチロキシと金属含有製剤などとの相互作用を回避するには、処方の中止や代替薬への変更により両薬剤を併用しないことの他に、投与時間をずらすことで相互作用の影響を回避、もしくは軽減する方法が考えられます。

スクラルファートとレボチロキシンを併用した臨床試験や併用症例では、スクラルファートの投与8時間後にレボチロキシンを投与した場合や、逆にレボチロキシン投与の4.5時間後にスクラルファートを投与した場合では、相互作用によるレボチロキシンの吸収低下作用が小さくなったという報告があります。

Havrankova J, Lahaie R.(1992) Levothyroxine binding by sucralfate. Ann Intern Med;117:445-446.

カルシウム製剤とレボチロキシンとの相互作用では両剤投与時間を4時間以上あけることにより吸収低下を回避できると報告されています。

Schneyer CR.(1998)Calcium carbonate and reduction of levothyroxine efficacy.JAMA. Mar 11;279(10):750.


しかし、レボチロキシンの吸収低下と投与間隔の関係や製剤ごとの相互作用の強さの違いは十分な検討がなされていません。

今後の検討が必要です。

両剤の投与時間をずらして併用する場合には、レボチロキシンの薬理効果低下に十分注意する必要があります。

相互作用については服用間隔や個人差によるところが大きいことが知られています。

血清TSH濃度や遊離T4などの測定を行い、レボチロキシンの投与量を調整することが必要です。