2014年3月19日水曜日

うつ病は周囲の理解が大切です


うつ病(大うつ病性障害)の特徴と診断

米国精神医学会の診断基準DSM-IV-TRによると、以下に記した9つの症状のうち5つ以上が2週間ほど毎日存在し、かつそれらの内少なくとも一つに「抑うつ気分」もしくは「興味の喪失」があることを、大うつ病としています。

In Interest   興味の喪失 

S   Sleep       睡眠障害 

A   Appetite    食欲変化、体重変化

D   Depressive  抑うつ気分

C   Concentration 集中力低下

A   Activity      精神運動焦燥または制止

G   Guilt     罪責感

E   Energy    気力低下

S  Suicide    自殺念慮

In SADCAGES 「悲しいゆりかごの中で」と覚えてください。


診断基準にもあるようにこれらの症状が「毎日」存在していなければうつ病には当てはまりません。例えば平日は気分が落ち込み会社を休むが、週末は元気になるなるような、最近の「現代版うつ」はうつ病ではありません。


治療


下の3つのどれか当てはまる場合には、入院をしたほうがよいでしょう。すぐに専門医に相談しましょう。
・自殺未遂などをおこした。 
・休養、療養に適さない家庭環境・病期の進行が早い 
・幻覚妄想などの重度精神症状がある

これら以外の、軽症なものは一般のクリニックでも十分対応可能です。一般的に、心理カウンセリングや薬物療法が治療の柱となります。


薬物療法は抗うつ薬がメインです。抗うつ薬はセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンのトランスポーターの再取り込み阻害によって効果が現れます。第一選択薬として、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)、スルピリドがあります。

まずは、1つの抗うつ薬から始めます。少ない量からはじめて、徐々に増やしていきます。症状の改善が見られるまで増量していいきます。効果が出てくるまで2週間程度かかることは覚えておくとよいでしょう。効果が出てくる前に薬をやめてしまうことがないようにしましょう。
症状がひどい場合には、一時的に抗不安薬や睡眠薬などを併用するケースもあります。ただし、依存症や、認知機能障害などの問題点があるので、だらだらと飲み続けることは避けます。


抗うつ薬の副作用について予め理解しておくことが治療を続けていく上で重要です。吐き気や下痢などの消化器症状や、眠気・だるさの頻度は高いです。しかし、飲みだして数日でほとんど治まります。消化器症状の副作用を抑えるためにモサプリド(ガスモチン)が併用されることもあります。眠気の副作用が出ることがありますが、不眠の方には逆に効果的といえます。また、体重増加もおこるものもあるようですが、逆に食欲のない方には有効と言えます。副作用を上手に利用するお医者さんもいらっしゃいます。

アクチベーション症候群という抗うつ薬投与初期や増量の際に起こりうる副作用があります。焦燥感、じっとしていられない、自傷行為、イライラ、躁状態が生じた場合、投与が中止されます。
SSRIの増量や2剤以上の併用などでセロトニン症候群という副作用が起きることがあります。発熱、意識障害、自律神経症状、興奮、焦りなどが生じます。重症例では横紋筋融解症や腎不全に至ることがありますが、めったに起こりません。

肝障害患者さんでは、少ない量のお薬から始めます。腎障害患者さんでは、SNRIは少量から始めます。高齢者では、薬が効き過ぎることがあるので、少ない量で様子を見ます。妊婦では、薬にによる赤ちゃんへのリスクとお母さんの病気のバランスを考えて、薬を使うかどうか決められます。お乳に薬がでてくるので、授乳は避けます。




抗うつ薬の効果として、まずイライラや不安が軽くなります。続いて、抑うつ気分が改善され晴れやかな気分になることが多いです。薬を飲みだして4~8週の時点で十分に量を増やしても効果が見られない場合は、他の薬に替えることがあります。

症状が良くなったからといって、薬をすぐに中止、減量することは再発の危険性を高めます。基本的に症状が良くなってからも4~9ヶ月飲み続ける必要があります。再発例では、2年以上にわたり抗うつ薬を飲み続けることが推奨されています。