2014年7月17日木曜日

女性のミカタ エクオール

日常の食生活で大豆製品を多く摂取する日本人は、欧米人に比べ、
更年期障害の症状が軽く、乳がんや骨粗鬆症の罹患率が低いとされていました。

大豆に含まれる成分の中でも、
特にフラボノイドの一種である大豆イソフラボンは、
種々の生活習慣病に対する予防効果を持つ化合物として期待されています。

大豆イソフラボンの主要な成分として
ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインなどがあげられます。

ダイゼインは腸内の細菌叢によりエクオールへと変換され、
体内に吸収されます。

また、エクオールにはS体とR体という性質が異なる2つのタイプが存在します。

ヒトの腸内細菌叢ではS-エクオールのみが産生されます。

しかしすべてのヒトがエクオール産生菌を保持しているわけではありません。

西洋人では約70%、日本人では約50%はつくり出すことができないとされています。


Setchell らは、
2002 年に大豆摂取による更年期の諸症状の改善に関与する主な物質が
エクオールであるという“Equol hypothesis”を提唱し、
エクオールは大きな注目を集めました。

実際に疫学調査からエクオール産生者は非産生者に比べ、
乳がんの発症リスクの軽減や閉経後の骨密度低下に対する
保護効果が高いことが報告されています。


Yamamoto S,et al (2003)Soy, isoflavones, and breast cancer risk in Japan. J Natl CancerInst 95, 906-913

Setchell KD, et al (2006) Method of defining equol-producer status and its frequency among vegetarians. J Nutr 36, 2188-2193

Arai Y,et al (2000) Comparison of isoflavones among dietary intake, plasma concentration and urinary excretion for accurate estimation of phytoestrogen intake. J Epidemiol 10, 127-135

Setchell KD, et al (2002) The clinical importance of the metabolite equol-a clue to the effectiveness of soy and its isoflavones. J Nutr 132, 3577-3584


エクオールについて

女性ホルモン(エストロゲン)は
エストロゲン受容体に結合することで、生理機能を発揮します。

エストロゲン受容体には2つのサブタイプ(αとβ)が存在します。

エストロゲン受容体αとエストロゲン受容体βは
互いに異なる作用を示します。

大豆イソフラボンはエストロゲンと形が似ているので
エストロゲンと同様にエストロゲン受容体に結合します。

ダイゼインはエストロゲン受容体αよりβに対してよく結合します。

エクオールはダイゼインよりもさらにβに対し結合します。

Setchell KD, et al(2005) S-equol, a potent ligand for estrogen receptor β, is the exclusive enantiomeric form of the soy isoflavone metabolite produced by human intestinal bacterial flora. Am J Clin Nutr 81, 1072-1079



エクオールと乳がん

乳がん細胞には2つの種類が存在します。

エストロゲン受容体を発現して
エストロゲン依存的に発生・進展する
エストロゲン受容体陽性乳がんと、

エストロゲン受容体を発現せずに
エストロゲン非依存的に発生・進展する
エストロゲン受容体陰性乳がんです。

エストロゲン受容体陽性乳がんにおいて、
エストロゲンがエストロゲン受容体αを介して乳がん細胞の増殖を促進させます。

一方、エストロゲン受容体βは乳がん細胞の増殖を抑制します。

エクオールはエストロゲン受容体αよりもエストロゲン受容体βに強く作用するので、
乳がんではエストロゲンの様に作用せず、
エストロゲンの作用を抑制すると考えられます。

また、エクオールはダイゼインやゲニステインに比べ
乳腺組織に蓄積しやすいため
乳がんに対して他のイソフラボンよりも抗がん作用を発揮すると期待されます。

Maubach J, et al, (2003) Quantitation of soy-derived phytoestrogens in human breast tissue and biological fluids by high-performance liquid chromatography. J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci 784, 137-144



エクオールと骨粗鬆症

エストロゲン濃度の減少が閉経後の骨粗鬆症発症の最大の原因であるといわれています。

大豆摂取は閉経後の女性の骨密度低下を抑制します。大

豆摂取による骨密度はエクオール産生者の方が非産生者に比べ高いという報告があります。

Magee PJ (2011) Is equol production beneficial to health? Proc Nutr Soc 70, 10-18



エクオール含有食品の閉経後女性の骨代謝に対する影響を調査した二重盲検試験によると、
試験開始から2年後にエクオール含有食品を摂取した女性では
プラセボ群と比較して、骨密度の低下が抑制されることが報告されています。

Ishimi Y (2010) Dietary equol and bone metabolism in postmenopausal Japanese women and osteoporotic mice. J Nutr 40, 1373S-1376S

これらのことから、エストロゲン量の低下した更年期の女性の骨組織では、
エクオールがエストロゲンの代替物質として機能すると考えられます。



エクオールと肥満・糖尿病

閉経女性ではエストロゲンが減少すると、レプチンが減少して、
脂質代謝が異常となり肥満になりやすいといわれています。

肥満では血中の炎症性サイトカインのレベルが上昇しており、
これら炎症性サイトカインがインスリンシグナルを阻害し、
インスリン抵抗性を引き起こすことで糖尿病の発症リスクを増大させます。

ヒトにおいて大豆食品やイソフラボンを多く摂取していると、
肥満の女性や閉経後の女性で2型糖尿病発症リスクが低減するという報告があります。

さらに、大豆の摂取は、
特にエクオール非産生能の肥満女性において血糖値と
悪玉コレステロール値を顕著に減少させるという報告もあります。

Thorp AA, et al, (2008) Soy food consumption does not lower LDL cholesterol in either equol or nonequol producers. Am J Clin Nutr 88, 298-304

その他、
エクオールはエストロゲン受容体βを介した肥満や
糖尿病の予防効果をもつ可能性を示唆する報告が多くあります。




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