2014年8月28日木曜日

悪性黒色腫メラノーマ治療薬 ニボルマブ(オプジーボ点滴静注)




メラノーマとは、悪性黒色腫と呼ばれ、皮膚のメラニンという色素を作る色素細胞(メラノサイト)が
がん化した腫瘍と考えられています。

メラノーマの治療は、まず、全身の画像検査(レントゲン、CT、超音波、PET検査など)などを行い、病期(病気の進み具合をI 期~IV期に分けて判断する)を決定し、その病期に従った治療を行います。
 
メラノーマは抗がん剤の効き目があまり芳しくない腫瘍です。

放射線治療もあまり効果がみられません。

よって、手術により腫瘍を全部取り去ることが、最も治るための近道です。

早期に発見・診断されれば小さな手術のみで簡単に治ることが可能です。


しかし、発見・診断が遅れ、がん細胞が全身のあちこちに転移していて、手術ができない、あるいは手術しても治せない場合があります。

そのような場合は、抗がん剤による化学療法や特殊な放射線療法などの治療となります。

メラノーマに効果が認められる抗がん剤は少なく、さらに認められてもその有効率は低くあまり芳しくありませんでした。

そこで、新たな治療薬の登場が待ち望まれていました。
2014年9月、新たな治療の選択肢としてニボルマブ(オプジーボ点滴静注)という薬が切り取ることのできないメラノーマ(悪性黒色腫)に対して治療で使えるようになります。


ニボルマブの作用機序

私達の身体の中では、がん化した細胞を見つけて排除する免疫監視機構がはたらいています。

免疫監視機構の実働部隊はCD8陽性T細胞というリンパ球です。

これは、リンパ節で活性化され全身の監視を行います。

がん細胞には、がん抗原という目印が立っていてT細胞はがん化した細胞を認識することができます。

T細胞はがん細胞を見つけるとサイトカインやパーフォリン、グランザイムという武器を駆使してがん細胞をやっつけます。

しかし、がん細胞も黙ってみているわけではなくこの免疫監視機構から身を守る仕組みをもっています。

その仕組みに関与する分子に、「PD-1リガンド」というものがあります。

がん細胞は、自身の表面にPD-1リガンドを散りばめています。

PD-1リガンドにはPD-L1とPD-L2があります。


T細胞の表面にはPD-1という、活動停止スイッチのようなものが存在しています。

がん細胞のPD-1リガンドは近づいてきたT細胞のPD-1活動停止スイッチを押すことができます。

これでは、T細胞はがん細胞に攻撃をすることができません。


では、どうすればよいでしょうか。
がん細胞に活動停止スイッチを押させないようにすれば邪魔されること無く攻撃することができますよね。

長くなりましたがこれが、オプジーボの作用機序です。

オプジーボはT細胞のPD-1にくっついて、がん細胞のPD-1リガンドの手から活動停止スイッチを守ります。

いわゆる、カバーの役目をします。


こうすることで、効率よく癌細胞を攻撃できるようになります。


皮膚科Q&Aメラノーマ(日本皮膚科学会)

Loise M. Francisco, et al.(2010)The PD-1 Pathway in Tolerance and Autoimmunity.Immunol Rev. Jul; 236: 219–242.

Zou W1, Chen L.(2008)Inhibitory B7-family molecules in the tumour microenvironment.Nat Rev Immunol. Jun;8(6):467-77.




以下、医療関係者向けの内容です。

オプジーボ点滴静注には承認条件が設けられています。

承認条件
国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。


オプジーボ点滴静注投与時の留意事項
  1. 症例選択を慎重に行い、本剤の使用が適切と判断される患者さんについてのみ投与を行ってください。 
  2. 患者さんやその家族に対し、投与前に必ず治療法や本剤の有効性・危険性について十分に説明し、同意を得てから投与を開始してください。また、異常が発現した場 合は、直ちに医療機関あるいは主治医に連絡するよう、十分説明を行ってください。 
  3. 本剤の投与中は、間質性肺疾患やInfusion reaction、甲状腺機能障害等の副作用の発現に注意し、臨床症状の観察や、定期的に臨床検査又は画像検査を行うなど、安全性への配慮をしてください。 
  4. 副作用発現時には、必要に応じて専門医と連携し、適切な処置を行ってください。 
  5. 本剤を使用できる施設として、施設要件医師要件が設定されています。


施設要件 (1)~(5)の要件を全て満たす施設。
(1)次に示す1~3のいずれかの要件を満たす施設

  1. 日本皮膚科学会の皮膚悪性腫瘍指導専門医が当該診療科に在籍している施設 
  2. 日本臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医が当該診療科に在籍している施設 
  3. がん診療連携拠点病院又は特定機能病院における皮膚悪性腫瘍を取り扱う診療科(皮膚科、形成外科等)であり、当該施設に所属する日本臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医の協力が得られる施設
(2)がん化学療法の十分な経験があり、
  皮膚悪性腫瘍の診断に十分な知識・経験を有する医師が当該診療科に在籍している施設
(3)間質性肺疾患等の呼吸器疾患に対応できる診療科と常に連携が取れ、
  CT画像検査を直ちに実施できる施設
(4)緊急時に十分な対応ができる施設
  (入院設備が完備している又は24 時間の診療が可能な施設)
(5)全例調査(使用成績調査)に協力・契約が可能な施設


医師要件 (1)~(4)の要件を全て満たす常勤医師。
(1)次に示す1~3のいずれかに該当する医師
  1. 日本皮膚科学会の皮膚悪性腫瘍指導専門医
  2. 日本臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医
  3. 5年以上のがん化学療法の経験があり、皮膚悪性腫瘍の診断・治療に十分な知識・経験を有する医師
(2)間質性肺疾患等の副作用発現に対して他科と連携して適切な処置が可能な医師
(3)全例調査に理解が得られ、事前患者登録に協力可能な医師
(4)医薬情報担当者が定期的に訪問可能な医師


オプジーボ®点滴静注20mg・100mg 適正使用の御願い