2014年9月30日火曜日

睫毛貧毛症治療薬 ビマトプロスト(グラッシュビスタ外用液剤 0.03% 5mL)

ビマトプロスト(グラッシュビスタ)は、
カラダに元から存在している生理活性物質、プロスタグランジン F2αに似た構造を持つ
プロスタマイド誘導体という物質です。

ビマトプロストは眼圧を下げる働きをもっています。
日本においてビマトプロストは「ルミガン点眼液 0.03%」として
2009年7月に「緑内障、高眼圧症」の治療薬として承認されていました。


ビマトプロストを用いた緑内障治療の臨床試験において、
被験者にある副作用(有害事象)が多く認められました。

それは、まつ毛(睫毛)が濃く、長く成長していたのです。

Gandolfi S, Simmons ST, Sturm R, et al.; Bimatoprost Study Group 3.(2001) Three-month comparison of bimatroprost and latanoprost in patients with glaucoma and ocular hypertension. Adv Ther.;18:110-121.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11571823

Parrish RK1, Palmberg P, Sheu WP; XLT Study Group.(2003)A comparison of latanoprost, bimatoprost, and travoprost in patients with elevated intraocular pressure: a 12-week, randomized, masked-evaluator multicenter study.Am J Ophthalmol.;135(5):688-703.
http://www.ajo.com/article/S0002-9394(03)00098-9/abstract


つまり、ビマトプロストが睫毛の成長を促進する作用を持っているかもしれないということが
わかったのです。


その後、海外においてまつ毛が少なくて悩んでいる睫毛貧毛症患者さんを対象とした
臨床試験が実施されました。


そして、その効果が認められ、ビマトプロスト 0.03%を含有する外用液剤が
2008年にアメリカで睫毛貧毛症の効能・効果で承認されたのです。

その後2013年10月時点、23の国と地域で使用されています。



睫毛貧毛症は睫毛が不足している又は不十分な状態のことを言います。

2014年時点で日本において睫毛貧毛症に対して承認されている薬剤はありませんでした。

しかしインターネット上には、睫毛の成長を促進する目的で
美容外科などの医療機関では「ルミガン点眼液 0.03%」を
使用する方法を紹介するホームページが多数存在していました。

本来、緑内障に使用されるべきお薬「ルミガン点眼液 0.03%」が
適応外使用されている現状がありました。


また、海外で承認されているビマプロスト製剤「LATISSE 0.03%」の
個人輸入を代行する者のホームページも多数存在しています。
恐らく、個人輸入によって使用されていると推測できます。


このような状況は、万が一副作用が起こったとしても、
副作用被害救済制度を活用することができず、また安全性の面でも好ましくありません。

一番良いのは、海外でも睫毛貧毛治療薬として実績のあるビマプロストを
日本においても正式に承認され、適正使用が促進されることが望ましいのです。



そして、ついに2014年3月に
ビマプロストは睫毛貧毛治療薬として承認され同年9月にアラガンジャパンより発売となりました。
http://www.allergan.jp/products/products04.htm

発売当初はアラガンジャパンからの直販のみの流通です。
2014年10月下旬より塩野義製薬からも発売されるようです。


グラッシュビスタとルミガン点眼液の違い
「グラッシュビスタ」と「ルミガン点眼液 0.03%」成分は全く同じものですが
添加剤(緩衝剤)の成分が異なっています。



グラッシュビスタの作用機序
ビマプロストを塗ることで何故、まつ毛が成長促進するのかについて、
詳細な仕組みは解明されていません。
考えられているのは、ビマプロストが毛のもとが入っている毛包内のプロスタマイド受容体を
刺激することで毛が太く、伸びる成長期を長くしているのではないかということです。

Tauchi M, et al.,(2010)Characterization of an in vivo model for the study of eyelash biology and trichomegaly: mouse eyelash morphology, development, growth cycle, and anagen prolongation by bimatoprost.Br J Dermatol.;162(6):1186-97.
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2133.2010.09685.x/full


マウスを使った動物実験ではマウスのまぶたにビマプロストを塗ることで、
まつ毛の本数が増加しました。さらに太さも増大することが確認されました。
しかし、すでに伸びきった比較的長いまつ毛の太さに対しては影響を及ぼしませんでした。

さらにビマプロストは毛の元となる毛幹を2本持つ毛包の割合を増加させました。
しかし総毛包数には大きな影響を及ぼしませんでした。



まつ毛だけでなく頭皮につけるとどうなるか?
単離ヒト頭皮毛包を用いた検討において、
ビマプロストは毛髪の成長を促進したという報告があります。
この作用は毛包内に発現しているプロスタマイド受容体を介していると考えられています。

しかしながら、頭髪に使用する場合かなりの量を必要とします。
仮に1本分を一度に塗布すると、この場合の投与量は、
陣痛促進剤に用いる用量に相当し、全身性の副作用が予測されます。
特に喘息の既往の患者さんでは気管支平滑筋の収縮により重症化する恐れがあります。


Karzan G. Khidhir et al.,(2013)The prostamide-related glaucoma therapy, bimatoprost, offers a novel approach for treating scalp alopecias.FASEB J.; 27(2): 557–567.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3545535/



副作用 色素沈着
ビマプロストはメラニン細胞のメラニン含量増加させる作用も持っています。
塗った部分が黒ずむことがあるので、よく考えて使用しましょう。
下まつ毛に塗るのは避けましょう。
くまのように目立ってしまうかもしれないからです。
また、万が一目に入ると、虹彩色素沈着という瞳の周りにメラニン色素がたまることがあります。

定期的に眼科を受診しましょう。



妊婦さんは使わないようにしましょう
妊婦さんを対象としたビマトプロスト点眼液投与に関しては、
適切かつ十分な比較対照群を設けた試験は実施されていません。
安全性が確認されていないのです。
また、高濃度のビマプロスト自体に、死亡胎児、周産期および出産後の新生児死亡の増加、
新生児体重の現象作用があることが動物実験で明らかになっています。



授乳中の患者さんは使用しないようにしましょう
動物試験ではビマトプロストが乳汁中に排泄されることが明らかになっています。
濃度は薄いとはいえ乳汁中への移項率は高いので慎重を期す必要があります。



コンタクトレンズと一緒には使用しないようにしましょう
万が一目に入ってしまうと、薬剤に含まれる防腐剤がコンタクトレンズに吸着してしまい
コンタクトレンズの表面で濃縮され、角膜に障害を起こしてしまうおそれがあります。



まつ毛美容液と一緒に使うときは注意しましょう
薬剤を塗布した後すぐにまつ毛美容液を用いた場合、
薬剤が薄まってしまう可能性があり効果も薄れてしまいます。
さらに、美容液を広げる際に薬剤をまつ毛の以外に塗り広げてしまう恐れがあります。
目尻や頬など誤って薬剤が付着した部分から毛が生えてくるかもしれません。



塗った後に顔を洗いたくなったら、何分後ならOK?
塗って15 分以上たっていれば、既に吸収していると考えられます。



用法・用量
片眼ごとに、1 滴を専用のアプリケータ(ハケ)に滴下し、
1 日 1 回就寝前に上まぶたの縁のまつ毛の根元に塗ります。






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