2022年1月18日火曜日

アルコールを含まないエアゾール製剤(2022年1月更新)

喘息患者さんで、吸入薬のアルコール臭が気になると訴える患者さんがいらっしゃいます。



エアゾールタイプの吸入薬の多くには、薬剤を溶かす溶媒として無水エタノールが使用されています。


エタノール含有エアゾール製剤は薬剤の肺内到達率が高く、ドライパウダー製剤がうまく吸入できない人でも吸入できますし、吸入補助器が使用できるというメリットが有ります。

しかし、そのメリットも患者さんが吸入してくれなくては発揮されません。


アルコール臭が気になり、吸入時に咳き込むようなことがあれば、薬剤効果が期待できず症状が安定しないようなことも予想されます。

そのような場合には他の製剤に切り替えることも考慮しなくてはなりません。


以下にエタノール含有エアゾール製剤の一覧とエタノールを含まない製剤の一覧を示します。

エタノール含有エアゾール製剤


分類

商品名

添加物
ステロイド オルベスコ50μg
 インヘラー
オルベスコ100μg
 インヘラー
オルベスコ200μg
 インヘラー
無水エタノール
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA-134a)
ステロイド キュバール50
 エアゾール
キュバール100
 エアゾール
無水エタノール
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA-134a)
短時間作用型
抗コリン薬
アトロベント
 エロゾル20μg
無水クエン酸
無水エタノール
1,1,1,2-テトラフルオロエタン
短時間作用型
抗コリン薬
テルシガン
 エロゾル
(販売中止)
無水エタノール
無水クエン酸
1,1,1,2-テトラフルオロエタン
短時間作用性
β2刺激薬
アイロミール
(販売中止)
オレイン酸
無水エタノール
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA-134a)
短時間作用性
β2刺激薬
ベロテック
 エロゾル100
無水エタノール
無水クエン酸
1,1,1,2-テトラフルオロエタン
短時間作用性
β2刺激薬
メプチン
 エアー10μg
無水エタノール
オレイン酸
1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA-227)
短時間作用性
β2刺激薬
メプチンキッド
 エアー5μg
無水エタノール
オレイン酸
1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA-227)
長時間作用性
β2刺激薬

ステロイド
フルティフォーム50
 エアゾール
フルティフォーム125
 エアゾール
クロモグリク酸ナトリウム
無水エタノール
1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン
ニトログリセリン ミオコール
 スプレー0.3mg
エタノール
テトラフルオロエタン
ハッカ油



エタノールを含まないエアゾール製剤

分類 商品名 添加物
ステロイド フルタイド50μg
 エアゾール
フルタイド100μg
 エアゾール
1,1,1,2-テトラフルオロエタン
抗アレルギー剤 インタール
 エアロゾル
ポビドン
マクロゴール
1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA-227)
短時間作用性
β2刺激薬
サルタノール
 インヘラー100μg 
1,1,1,2-テトラフルオロエタン
長時間作用性
β2刺激薬

ステロイド
アドエア50
 エアゾール
アドエア125
 エアゾール
アドエア250
 エアゾール
1,1,1,2-テトラフルオロエタン
長時間作用性
抗コリン薬
+
長時間作用性
β2刺激薬
ビベスピ
 エアロスフィア28吸入
多孔性粒子(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン及び塩化カルシウム水和物から成る)
1,1,1,2-テトラフルオロエタン
長時間作用性
抗コリン薬
+
長時間作用性
β2刺激薬
+
ステロイド
ビレーズトリ
 エアロスフィア56吸入
多孔性粒子(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン及び塩化カルシウム水和物から成る)
1,1,1,2-テトラフルオロエタン
人工唾液 サリベート
 エアゾール
カルメロースナトリウム
D-ソルビトール
安息香酸ナトリウム
ソルビン酸
水酸化ナトリウム
二酸化炭素(噴射剤)


エタノール含有エアゾール製剤で考慮すること


  • アルコールが1滴も飲めない人にはエタノール含有エアゾール製剤は第二選択となります。
  • ジスルフィラム作用をもつ、嫌酒薬やセフェム系抗菌薬使用中のひとにはエタノール含有エアゾール製剤は第二選択となります。
  • 気道過敏性の特に高い喘息患者においてはエタノール吸入による気道刺激での咳嗽や喘息症状の発生に注意します。
  • アルコール臭に敏感な患者さんには第二選択となります。

すべての添加物を把握することは難しいですが、薬剤に含まれる具体的な添加物の成分を患者さんに伝えて、アレルギー歴の有無を確認することは、薬剤アレルギーの発現を回避する上で有効な手段です。

【参考】
公益財団法人 日本医療機能評価機構「薬局ヒヤリハット事例収集・分析事業」2019年No.6
http://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/sharing_case_2019_06.pdf