2020年9月30日水曜日

ロタウイルスワクチンは2020年10⽉1⽇から定期接種

  • ロタウイルスワクチンは2020年10⽉1⽇から定期接種化
  • 接種対象は2020年8⽉1⽇以降に⽣まれた赤ちゃん
  • ロタリックス、ロタテックともに使⽤が可能
  • 投与期間はロタリックス,ロタテックで違うけれど,どちらも基本的に初回接種は⽣後14週6⽇までには完了させること


ロタウイルスとワクチンの歴史

赤ちゃんの重症下痢の原因として最も多いのはロタウイルス感染によるものです。ほとんどのこどもが5歳までに感染します。感染機会は⽣後6カ⽉から2歳までが最も多いといわれています。⼀度感染しても再度感染することもありますが、通常は初めての感染が最も重症です。

ロタウイルスの感染⼒は⾮常に強く、衛⽣⽔準の向上だけでは感染は予防できません。発展途上国だけではなく先進国でも感染が起きるため、“democratic virus”と⾔われています。胃腸炎症状は1週間程度で⾃然に治ってくるのですが、痙攣、脳炎などの数々の合併症を引き起こし、死亡することもあります。

ロタウイルスは、1973年にオーストラリアのBishopにより発⾒されました。
1981年には日本の研究者である佐藤邦彦先生が初めてヒトロタウイルスの培養法を報告しています。その後、ワクチンの開発が試みられました。1998年にサル-ヒトロタウイルスのリアソータントワクチン(製品名:RotaShield)が開発され、アメリカで承認されました。1年間で100万ドース以上が投与されたのですが、投与後に副作用の腸重積症の発⽣が問題となってしまい使⽤が中⽌されました。

Murphy TV, et al:N Engl J Med. 2001;344(8):564-72.[PMID: 11207352]

同じ個体に2種類以上の異なるウイルスが同時に感染したとき、ウイルス同士の遺伝子の一部が入れ替わる場合があります。これをリアソートメント(Reassortment:遺伝子再集合)といいます。その結果生まれた新たなウイルスをリアソータントといいます。


世界標準のワクチン

2006年にNew England Journal of Medicineに1価経⼝弱毒⽣ヒトロタウイルスワクチン(製品名:ロタリックス)と5価経⼝弱毒⽣ロタウイルスワクチン(製品名:ロタテック)の臨床試験の成績が掲載されました。

Ruiz-Palacios GM, et al:N Engl J Med. 2006;354(1):11-22.[PMID:16394298]
Vesikari T, et al:N Engl J Med. 2006;354(1):23-33.


現在、世界中で主にこの2つのワクチンが接種されています。それらよって、有効性やワクチン開始後のロタウイルス感染症の減少が確認されています。2013年に世界保健機関(World Health Organization:WHO)はロタウイルスワクチンに関するポジションペーパーに「世界中のすべての国の予防接種プログラムに導⼊されるべきである」と記載しています。

日本では2011年にロタリックス、2012年にロタテックが発売されました。2017年の出荷数から推定される接種率は、任意接種にもかかわらず約70%とされています。お母さん達の子供を感染症から守ろうとする意識の高さをが伺えます。しかし、地域差があるようで、50%未満の⾃治体ある反⾯、80%を上回る⾃治体もあるようです。


ロタウイルスワクチン定期接種化

2012年5⽉の予防接種部会で,定期接種化に向けたロタウイルスワクチンの評価の必要性が確認されました。

定期接種化にあたっては、最終的に、

①腸重積症のベースラインデータの整理
②リスクベネフィット分析
③費⽤対効果の推計

が課題となり、議論がなされました。

これらの検討を受け、2019年9⽉の予防接種基本⽅針部会で、有効性、安全性が総合的に判断され、定期接種化を進めることとなりました。

2020年10⽉1⽇から開始されるロタウイルスワクチンの定期接種は、2020年8⽉以降に⽣まれた赤ちゃんが対象です。ロタリックスもロタテックも定期接種で使用可能です。

ロタリックスは⽣後6週から24週までに4週以上あけて2回投与します。

ロタテックは⽣後6週から32週までに4週あけて3回投与します。

どちらのワクチンも、最初に使用したワクチンで決められた接種回数を終了する。

初回投与は⽣後14週6⽇までに⾏うことが推奨されていますが、副反応として危惧されている腸重積症の合併を減らすためにもなるべく早い投与が推奨されています。





【参考】

厚⽣科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本⽅針部会ワクチン評価に関する⼩委員会:ロタウイルスワクチンの技術的な課題に関する議論のとりまとめ. 2019. 

2020年9月29日火曜日

異なるワクチンを接種する場合の接種間隔 [2020年10月改訂]

  •  2020年10⽉1⽇から「注射の⽣ワクチン同⼠の接種間隔を27⽇以上あける」以外のワクチンの接種間隔規定が撤廃されることになりました。
  • 『注射の⽣ワクチン』同⼠以外は、いかなる間隔で接種してもワクチンの効果に影響はありません。
  • 同一ワクチンの接種間隔に関して変更はありません。


2020年10月より前までは、予防接種実施要項により、異なるワクチンの接種間隔として『⽣ワクチン』接種後は27⽇以上、『不活化ワクチン・トキソイド』接種後は6⽇以上あけるように定められていました。

しかし、2020年10⽉1⽇以降、「注射⽣ワクチン同⼠の接種間隔を27⽇以上あける」こと以外のワクチンの接種間隔規定は撤廃されることになりました。



接種間隔の変更の理由

不活化ワクチンは、異なる種類の不活化ワクチンや⽣ワクチンと免疫反応が⼲渉することはありません。

つまり不活化ワクチンは、異なる種類の不活化ワクチンや⽣ワクチンとの同時接種も含め、どのような接種間隔でも接種することができるのです。


⼀⽅、異なる⽣ワクチンを短い間隔で投与した場合には、後から投与したワクチンの免疫反応が抑制されてしまいます。

これは、最初に投与した⽣ワクチンのウイルスによって産⽣されたインターフェロンが後から投与された⽣ワクチンのウイルスの複製を抑制するためと考えられています。

⽶国、WHOなど海外では、『注射の⽣ワクチン』の接種間隔は、同時接種しない場合には規定されていますが、不活化ワクチン、経⼝⽣ワクチン接種後には規定がありません。

そこで、日本においても、不活化ワクチン・経口生ワクチンについて、他のワクチンと干渉する可能性は低いことから、諸外国と同様に、他のワクチンとの接種間隔に対する制限は見直すよう小児科学会などから要望されていました。



ワクチンの種類と接種間隔

異なる種類のワクチンとの接種間隔について図にまとめてみました。

現在日本で承認されている注射の生ワクチンには麻しん、風しん、麻しん・風しん混合ワクチン、BCG、水痘・帯状疱疹ワクチン、おたふくかぜワクチンがあります。
これら注射の生ワクチン同士の接種は、過去に干渉の報告があること等から、引き続き27日以上間をおいて接種します。




【参考】

厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知.「異なるワクチンの接種間隔に係る添付文書の「使用上の注意」の改訂について」.薬生安発0228第5号、2020.02.28.

第15回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料. 2019.10.2. 

第36回厚⽣科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本⽅針部会:予防接種の接種間隔に関する検討. 2019.

第37回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会資料. 2020.1.27.

厚生労働省|ワクチンの接種間隔の規定変更に関するお知らせ

2020年6月20日土曜日

アクリノール 販売中止と代替品

(2020年6月更新)
各社、アクリノール製剤を販売中止とするようです。


アクリノール液 0.1%「シオエ」
販売中止:2019年6月(予定)
経過措置:2022年3月31日(予定)

アクリノール消毒液0.1%「タイセイ」[2619700Q1214]
アクリノール消毒液0.2%「タイセイ」[2619700Q2130]
販売中止:未定
経過措置:未定

販売中止:未定(2020年12月頃)
経過措置:2023年3月31日

アクリノール消毒液0.1%「NP」(ニプロ)
販売中止:不明
経過措置:2020年3月31日

アクリノール消毒用液0.1%「マルイシ」
アクリノール水和物原末「マルイシ」
販売中止:2018年11月
経過措置:2020年3月31日

アクリノール「コザカイ・M」
販売中止:2018年12月
経過措置:未定(統一名収載品)

アクリノール「ホエイ」
販売中止:未定
経過措置:2020年3月31日

アクリノール0.5%液「ヨシダ」
アクリノール0.2%液「ヨシダ」
アクリノール0.1%液「ヨシダ」
販売中止:2019年3月(予定)
経過措置:2020年3月31日

0.1%アクリノール液「ヤクハン」
アクリノール液0.2%「ヤクハン」
販売中止:2019年4月(予定)
経過措置:2020年3月31日

アクリノール水和物「ケンエー」
ケンエーアクリノール液 0.1
ケンエーアクリノール液 0.1(滅菌済み)
ケンエーアクリノール液 0.2
販売中止:2018年12月~2019年10月(予定)
経過措置:2020年3月31日

アクリノール水和物原末「ニッコー」
販売中止:未定
経過措置:未定(統一名収載)

アクリノール消毒液0.1%「ニッコー」
販売中止:未定
経過措置:2020年3月31日

東海アクリノール液
アクリノール「東海」 [2619714X1105]
販売中止:未定
経過措置:2020年3月31日

アクリノール(山善)|アクリノール(乳酸エタクリジン)[2619714X1180]
アクリノール外用液0.2%「ヤマゼン」
販売中止:未定
経過措置:2020年3月31日

アクリノール消毒液0.1%「昭和」
販売中止:2018年12月
経過措置:2020年3月31日


販売中止時期がメーカーによって異なります。
販売中止理由は「諸般の事情」ということで詳細は不明です。


アクリジンから分離したアクリフラビンは第一次世界大戦時に局所消毒薬として開発されました。しかし毒性が強く、改良品としてアクリノールが1919年に開発されました。
アクリノールを製品化したのはドイツの製薬メーカーであるバイエル社です。1921年、リバノールの商品名で販売を開始しました。

アクリノールは、黄色の色素で、一般細菌類の一部(連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの化膿のう菌)に対する殺菌消毒作用を示すのですが、真菌、結核菌、ウイルスに対しては効果がありません。
比較的刺激性が低いというか単純にしみにくいだけで、細胞障害は起こりえます。衣類等に付着すると黄色く着色し、脱色しにくくなることがあります。

口腔粘膜や耳鼻科領域の粘膜の消毒や化膿局所の消毒に使われていました。


前時代的な消毒薬アクリノール

「傷を消毒しない。傷はきれいな水流で洗浄し、必要であればデブリードマンを行う。」この考え方は、多くの方の市民権を得てきました。
一昔前までは、傷は乾かし消毒しまくるのが当たり前でした。
そんな、一昔前の医療での消毒薬がアクリノールです。
傷に消毒をしてはいけない理由は、感染に対しての防御機能をもつ白血球、マクロファージがアクリノールで障害を受けてしまうから。
また、組織の再生をになう繊維芽細胞、上皮細胞などがアクリノールで障害を受けてしまいまうからです。
さらに、アクリノールを塗っても殺菌作用は一時的なもので、接触性皮膚炎などの副作用によるデメリットのほうが大きいからです。
化膿傷の治療では外用消毒を行うより、抗菌薬を全身投与するほうがよいです。

以前よく見かけたのが、褥瘡周囲皮膚に発赤・落屑、びらん・潰瘍化がみられ拡大しているのにもかかわらずアクリノールを染み込ませたガーゼを詰め込む・湿布を行うという、傷に塩をすり込むようなものでした。アクリノールに感作されたときは、深い潰瘍を形成する場合があります。


アクリノールガーゼの湿布


傷口の消毒以外にも『アクリノールガーゼ(リバノール湿布)』という、謎の治療法があるようです。
点滴薬剤漏出の治療や蜂窩織炎の治療に使われているそうですが、アクリノール液自体に抗炎症作用はなくほとんど意味はありません。しかも、ふくなどにアクリノールがつかないように油紙で覆って使うことが殆どで、覆うことでアクリノールが気化せず気化熱を奪って冷却するという湿布本来の機能がはたらいていません。

薬剤漏出による組織傷害の程度をアクリノール湿布を貼用した群と貼用しない群で比較検討した結果、アクリノール湿布の効果を示す知見は得られなかったとの報告があります。

石田ら、(2004)「薬剤漏出による皮膚組織傷害に対するアクリノール湿布の効果に関する実験的研究」,『日本看護技術学会誌』「3(1)」P58-65

蜂窩織炎へのアクリノールガーゼに関する海外論文を検索しても、該当するもはありませんでした。


アクリノールの代替品


傷や褥瘡には、何か薬、軟膏を塗らなければ いけないと思い込んでいませんか?
何も使わないという発想、湿潤環境を整えれば、 自然治癒するという発想を持ちましょう。

本当に必要なのか見直す良い機会です。

消毒を要する場面には手術、生検、アンギオ前の皮膚、血液培養時、カテ挿入して留置するとき(IVH挿入、心嚢や胸腔ドレナージなど)、関節腔穿刺があります。

場面に応じて、オキシドール、複方ヨード・グリセリン、ポビドンヨード含嗽剤、ベンザルコニウム塩化物液、ヨードチンキ 等から選択します。

口腔粘膜にはポビドンヨードガーグル、咽頭等には複方ヨードグリセリン、他にヨードチンキ、オキシドール液がよいでしょう。
耳鼻科領域の粘膜には1.5~3%のオキシドール液が使用できます。


歯科領域では抜歯後の消毒や歯周ポケットの消毒などにアクリノールを使用する例があるようです。ポビドンヨードや塩化ベンゼトニウム(ネオステリングリーンうがい液)などが代替としてあげられますが、消毒の効果は少なく、さらに生理食塩水で洗浄と効果に差はないとの報告もあるようです。

上でも述べていますが、蜂窩織炎など皮膚が発赤腫脹しているところへアクリノール湿布を行うことは意味がありません。湿布をするとしても水道水で十分です。水道水では心もとないのであれば、冷たく湿らせたモイスキンパッドなどのドレッシング材を使うだけで不快感を軽減できます。


一般用医薬品
医療用医薬品のアクリノールは販売中止となりましたが、一般用医薬品(含む部外品)は販売されています。

化膿性疾患用薬

殺菌消毒薬

「後発医薬品がある先発医薬品」に変わるタイミング 2020年6月収載後発品関連

2020年6月9日に後発品の薬価収載がありました。
各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報が更新され、後発医薬品の数量シェア(置換え率)に影響があります。

「後発医薬品がない先発医薬品」が後発品の登場により「後発医薬品がある先発医薬品」に変わるタイミングは、品目によって違ってきます。
(基本的には発売月の翌月1日から)

切り替わるタイミングに関しては、厚生労働省ホームページの
「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報」
5.その他(各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報)の備考欄に記載されています。
https://www.mhlw.go.jp/topics/2020/04/tp20200401-01.html

2020年7月1日から「後発医薬品がある先発医薬品」に変更

セレコックス錠100mg
セレコックス錠200mg
メマリー錠5mg
メマリー錠10mg
メマリー錠20mg
メマリーOD錠5mg
メマリーOD錠10mg
メマリーOD錠20mg
レミニール錠4mg
レミニール錠8mg
レミニール錠12mg
レミニールOD錠4mg
レミニールOD錠8mg
レミニールOD錠12mg
ベガモックス点眼液0.5%
アマージ錠2.5mg
ゼチーア錠10mg
エリル点滴静注液30mg
アボルブカプセル0.5mg
ウリトス錠0.1mg
ステーブラ錠0.1mg
ウリトスOD錠0.1mg
ステーブラOD錠0.1mg
ザルティア錠2.5mg
ザルティア錠5mg
シュアポスト錠0.25mg
シュアポスト錠0.5mg
ピレスパ錠200mg
ザイザル錠5mg
ザイザルOD錠2.5mg
ザイザルOD錠5mg
ザイザルシロップ0.05%

2020年10月1日から「後発医薬品がある先発医薬品」に変更

メマリードライシロップ2%
エディロールカプセル0.5μg
エディロールカプセル0.75μg
ジャドニュ顆粒分包90mg
ジャドニュ顆粒分包360mg
ビビアント錠20mg
ディレグラ配合錠
ファンガード点滴用25mg
マグネスコープ静注38%シリンジ10mL
マグネスコープ静注38%シリンジ15mL
マグネスコープ静注38%シリンジ20mL
マグネスコープ静注38%シリンジ11mL
マグネスコープ静注38%シリンジ13mL


2020年6月19日金曜日

2021年3月スタート予定 薬局等でのマイナンバーカードをつかった保険資格確認

令和元年5月に「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」が成立したことを受けて、2021年3月からマイナンバーカードまたは被保険者証により、医療機関等の窓口においてオンラインで加入者の資格を確認する仕組み【オンライン資格確認】が導入される予定です。

オンライン資格確認を円滑に導入するため、マイナンバーカードを読み取る機械(顔認証付きカードリーダー)は、なんと医療機関及び薬局に無償提供されます。素晴らしい税金の使い方です。
さらに、カードリーダーだけでは何もできませんから、レセコンの改修などが必要になりますが、初期導入経費(システム改修等)については、医療情報化支援基金による補助金を活用でるみたいです。薬局は32.1万円を上限に補助が受けられるようです。


いつ、カードリーダーが届くのでしょうか。
カードリーダーの無償提供を受けるには申込みが必要です。
支払基金が2020年7月頃に医療機関・薬局向け専用ポータルサイトを開設する予定です。そのポータルサイトで、顔認証付きカードリーダーの申込、オンライン資格確認等システムの利用申請及び医療情報化支援基金の補助申請の受付が行われます。顔認証付きカードリーダーの申込時期や詳細はポータルサイトのアカウント登録をしたメールに届くようなので、まずはポータルサイトのアカウントを作成しましょう。

なお、改修費用の補助金はシステム改修後、オンライン資格確認の導入準備が完了した後に、支払基金に補助申請を行うことになります。つまり事前申請ではなく、精算払いとなり医療機関・薬局における申請は導入作業後の11月以降です。


オンライン資格確認とは



そもそもオンライン資格確認とはどういったものなのでしょうか。
オンライン資格確認は「ICチップ内に格納された利用者証明用電子証明書付きのマイナンバーカード」又は「健康保険証の記号・番号等」で行います。
マイナンバーカードであれば「顔認証または暗証番号による本人確認」、健康保険証であれば「記号・番号等の入力」をすることで、オンライン資格確認等システムで患者の最新の資格情報を確認することが可能になります。



オンライン資格確認を導入することで得られるメリット

①資格情報の登録作業の削減
 患者の最新の資格情報を、医療機関システムへ取り込むことが可能になります。マイナンバーカードでは自動的に取得できますが、健康保険証では最小限の情報の入力が必要です。

<医療機関のメリット>
  1. 患者の資格情報の入力・再診時のチェック作業の軽減
  2. 正確な資格情報の取得(誤入力リスクの軽減) 

<患者のメリット>
  1. 医療機関等における受付時の待ち時間の短縮


②返戻レセプトの減少による事務負担の軽減
 患者の最新の資格情報が医療機関・薬局で確認可能となるため、資格喪失等によるレセプトの返戻が減少し、患者へ資格確認を行う業務が軽減されます。


また、審査支払機関において電子レセプトの資格情報を確認し、レセプトの請求先が変更となる場合は、電子レセプトの算定日情報等に基づき、請求先の振替又は請求先ごとにレセプトを分割して請求します。


<医療機関のメリット>
  1. 受付時に最新の資格情報が確認可能 ∴請求先誤りによる返戻レセプトが減少
  2. 保険者等からの請求先誤りに関する問い合わせが減少
  3. 保険者や患者等に対する資格情報の照会業務が軽減
  4. オンライン資格確認を未実施の医療機関等においても資格喪失等による返戻レセプトが減少


③限度額適用認定証等の連携
 患者から情報閲覧の同意が得られた場合は限度額適用認定証等の情報が取得可能となり、患者から保険者への申請がなくても、患者は限度額以上の医療費を窓口で支払う必要が
なくなります。 
限度額適用認定証および限度額適用・標準負担額減額認定証の情報はマイナンバーカードもしくは健康保険証で、特定疾病療養受療証の情報はマイナンバーカードにより本人確認を行った後、本人が同意した場合に資格情報を閲覧・取得することができます。

<医療機関のメリット>
  1. 加入者(患者)へのサービスの向上

<患者のメリット>
  1. 保険者へ限度額適用認定証等の申請手続きが不要
  2. 医療機関等の窓口に、限度額適用認定証の提示が不要
  3. 医療費が高額となった場合、申請手続きを行わなくても限度額以上の医療費の支払いが不要


④薬剤情報・特定健診情報の閲覧
 医師、歯科医師、薬剤師等の有資格者は、マイナンバーカードで患者の同意を確認した上で、「薬剤情報」や「特定健診情報」を閲覧することができます。ただし、薬剤師は薬剤情報の閲覧に限ります。
※薬剤情報の閲覧は2021年3年10月から開始されます。

<医療機関のメリット>
  1. お薬手帳の提示がなくても、患者の服薬履歴を確認でき、多剤投与や重複投与を防止可能
  2. 服薬履歴や健診結果を活用した診療や服薬指導等の実現

<患者のメリット>
  1. 服薬履歴や特定健診の結果を踏まえた診療を受けることが可能
  2. マイナポータルを活用して、医療機関等が処方した医薬品、特定健診の結果、医療費情報を確認し、自己の健康管理等に活用可能
  3. マイナポータルを通じて、医療費情報を取得し、医療費控除の手続きが可能

⑤災害時における薬剤情報・特定健診情報の閲覧
 災害時は特別措置として、マイナンバーカードによる本人確認ができない場合でも薬剤情報・特定健診情報の閲覧ができるよう、厚生労働省で検討されています。

<医療機関のメリット>
  1. 災害の混乱時であっても、患者の服用薬や健診結果を確認した診療が可能
<患者のメリット>
  1. 主治医以外の医師に、普段服用している医薬品等の処方を受けることが可能


2020年6月11日木曜日

処方箋や調剤録は5年間保存したほうがいい

薬局において、通常、処方箋や調剤録は3年間保存しなければならないと法律に明記されています。しかし、令和2年4月1日以降の処方箋や調剤録は5年間保存しておいたほうがよいかもしれません

保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則 
(処方せん等の保存)
第六条 保険薬局は、患者に対する療養の給付に関する処方せん及び調剤録をその完結の日から三年間保存しなければならない。


薬剤師法
(処方せんの保存)
第二十七条 薬局開設者は、当該薬局で調剤済みとなつた処方せんを、調剤済みとなつた日から三年間、保存しなければならない。

(調剤録)
第二十八条 
第3項 薬局開設者は、第一項の調剤録を、最終の記入の日から三年間、保存しなければならない。

令和2年4月1日より改正民法が施行されました。
それにともない、健康保険法等の調剤報酬請求権の消滅までの期間が3年から5年に延長されました。
また、保険者からの返還請求権等についても同様に3年から5年に延長されました。

参考:民法の一部を改正する法律等の施行について
(令和2年5月8日 保保発0508第1号 保国発0508第1号 保高発0508第1号)
https://www.jshp.or.jp/cont/20/0512-1.pdf

第3 改正民法及び改正健康保険法等の施行に伴う留意点について
1 診療報酬請求権等の時効期間について
第1の1の改正において、「医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権」に係る3年間の短期消滅時効が廃止されたため、保険医療機関等の診療報酬債権等についても、権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年間、権利を行使することができる時(客観的起算点)から 10 年間で消滅時効が完成することとなる。

保険医療機関等による診療報酬請求権の消滅時効については、債権者たる保険医療機関等が当該請求権を行使することができることを知っていることが通常であると考えられることから、当該保険医療機関等が診療報酬請求権を行使できることを知らなかった
と考えられる特段の事情がない限り、原則として診療月の翌月1日(国民健康保険の場合は翌々々月の1日)から起算して5年間で消滅時効が完成すると解して差し支えない。

なお、第1の4の経過措置により、上記取扱いは、改正民法の施行日(令和2年4月1日)以降の診療により発生した診療報酬請求権から適用される。

診療報酬の過払いにかかる保険者の不当利得返還請求権の消滅時効については、原則として保険者による診療報酬の支払いが行われた日の翌日から起算して10年間の消滅時効が適用されることとなるが、保険者が当該請求権を行使することができることを知ったと考えられる特段の事情がある場合には、当該事情に照らし、その事情が認められる時(当該請求権を行使することができることを知った時)から5年間で消滅時効が完成することとなる。

詳細については、「保険医療機関等に係る返還金の回収状況の把握について」(平成30年保保発0427第1号・保国発0427第1号・保高発0427第1号)も参照されたい。

保険者の申出による再審査査定により保険医療機関等に対する診療報酬の支払いが請求額よりも減額されて行われた場合における、保険医療機関等が保険者に対して有する診療報酬増額に係る請求権については、原則として当該減額後の診療報酬の支払いが行われた日の翌日から起算して10年間の消滅時効が適用されることとなるが、当該保険医療機関等が当該請求権を行使することができることを知ったと考えられる特段の事情がある場合には、当該事情に照らし、その事情が認められる時(当該請求権を行使することができることを知った時)から5年間で消滅時効が完成することとなる。

このため、請求の根拠となる文書である処方箋や調剤録などについては、薬剤師法等により保管期間が3年間とされてはいますが、請求検討の消滅時効満了までの5年間保管しておくのが良いでしょう。

なお、法律は不遡及原則があるので、この請求権5年に該当するのは令和2年4月1日以降に調剤を実施したものからとなります。




必ず、5年間保管しておかなければならないものもあります。

5年間調剤録を保管しなくてはならない場合とは、
  • 生活保護受給者
  • 障害者
  • 結核患者
  • 指定小児慢性特定疾病
  • 指定難病患者
の処方箋・調剤録です。

根拠は以下のとおり

生活保護法に基づく指定医療機関医療担当規程
第九条 指定医療機関は、診療及び診療報酬の請求に関する帳簿及び書類を完結の日から五年間保存しなければならない。

第十二条 指定医療機関である薬局にあつては、第五条の規定は適用せず、第八条中「診療録」とあるのは「調剤録」と読み替え適用するものとする。

指定自立支援医療機関(精神通院医療)療養担当規程
第六条 指定自立支援医療機関は、診療及び診療報酬の請求に関する帳簿及びその他の物件をその完結の日から五年間保存しなければならない。

第九条 指定自立支援医療機関である薬局にあっては、第五条中「診療録」とあるのは「調剤録」と読み替えて適用する。

指定自立支援医療機関(育成医療・更正医療)療養担当規程
第八条 指定自立支援医療機関は、診療及び診療報酬の請求に関する帳簿及びその他の物件をその完結の日から5年間保存しなければならない。

第十一条 指定自立支援医療機関である薬局にあっては、第三条第2項及び第五条の規定は適用せず、第七条中「診療録」とあるのは「調剤録」と読み替えて適用する。

感染症指定医療機関医療担当規程
第十一条 感染症指定医療機関は、診療及び診療報酬の請求に関する帳簿及び書類をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、診療録にあっては、その完結の日から五年間とする。

第十三条 結核指定医療機関である薬局にあっては、第二条の三及び第五条の二の規定は適用せず、第十条中「診療録」とあるのは「調剤録」と読み替えて適用するものとする。

指定小児慢性特定疾病医療機関療養担当規程
第八条 指定小児慢性特定疾病医療機関は、診療及び診療報酬の請求に関する帳簿及びその他の物件をその完結の日から5年間保存しなければならない。

第十一条 指定小児慢性特定疾病医療機関である薬局にあっては、第五条の規定は適用せず、第七条中「診療録」とあるのは「調剤録」と読み替えて適用する。

難病の患者に対する医療等に関する法律に基づく指定医療機関療養担当規程
第六条 指定医療機関は、診療及び診療報酬の請求に関する帳簿及びその他の物件をその完結の日から五年間保存しなければならない。

第九条 指定医療機関である薬局にあっては、第五条中「診療録」とあるのは「調剤録」と読み替えて適用する。


なお、病院や診療所などの医療機関の診療録(カルテ)の保存期間は5年間です。

保険医療機関及び保険医療養担当規則
(帳簿等の保存)
第九条 保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあつては、その完結の日から五年間とする。


2020年6月2日火曜日

コンサータやビバンセ 卸からの納品には時間がかかる

コンサータ(メチルフェニデート塩酸塩)の流通管理について、「コンサータ錠登録管理システム」において管理されていましたが、2019年12月2日から「ADHD適正流通管理システム」という新しいシステムが稼働し、こちらで管理されることになりました。

これは、2019年9月4日に厚生労働省がコンサータの流通管理を大幅に変更する旨を通知したことによるものです。
患者情報の登録が新たに義務付けられ、また医師の登録要件が厳格化されました。

2020年6月30日までが新システムへの移行期間です。
2020年7月1日以降もコンサータ錠の処方及び調剤を継続するためには、2020年6月30日までにADHD適正流通管理システム(https://www.adhd-vcdcs.jp/)へ新規に登録しなおさくてはなりません。
2020年6月30日までに登録されない場合、2020年7月1日以降は未登録となり、コンサータ錠の卸からの納入及び調剤を継続することができません。

メチルフェニデート塩酸塩製剤(コンサータ錠 18mg、同錠 27mg 及び同錠 36mg)の使用にあたっての留意事項について
(令和元年9月4日付け薬生総発 0904 第1号、薬生薬審発 0904 第3号、薬生安発0904 第1号、薬生監麻発 0904 第1号厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長、医薬品審査管理課長、医薬安全対策課長及び監視指導・麻薬対策課長連名通知)

※今般、新型コロナウイルス感染症の影響により、留意事項通知に規定する医師の登録
の事務手続き等に遅延が生じていることから、承認条件の経過措置期間を延長が9月30日まで延長されています。

新型コロナウイルス感染症の影響に伴うメチルフェニデート塩酸塩製剤(コンサータ錠 18mg、同錠 27mg 及び同錠 36mg)の経過措置期間の延長について
(令和2年5月27日付薬生総発 0527 第1号薬生薬審発 0527 第5号、薬生安発 0527 第1号、薬生監麻発 0527 第1号)



今回の変更されたシステムについては日経DIで詳しくまとめられていますので、そちらをご覧ください。
・日経DI「大きく変わるコンサータの流通管理システム

日経DIでは触れられていなかったところでは、今回のシステム変更によって卸の流通管理についても大きな変更があったとの情報を入手したので、そちらを説明したいと思います。

受注元の施設登録の確認を注文の都度行うようになった


以前までのシステムでは卸は新規にコンサータの注文を受けた施設についてのみ、「コンサータ適正流通委員会」に施設登録の有無の照会を行っていたそうです。
それが、新システムでは新規納品施設、継続納品施設にかかわらず受注の都度、施設登録の有無の照会が必要となったようです。
また、受注日と受注量を都度、施設照会時に報告するようになったそうです。

そのため、継続納品については以前であれば他の薬と同じタイミングで納品されていたのですが、照会の時間分納品が遅れてしまうようです。

以前よりは余裕を持って注文するようにしています。
(卸には17:00までの注文であれば翌日朝には納品してもらうよう確約取りました)


なぜ、厳しい流通管理が行われるか

ADHDでもない患者さんをADHDだと診断し、コンサータを交付して、それを処方した医師に戻させて、医師本人が乱用していたという事例がありました。
この事件を起こした医師の適格性の問題もありますが、患者の登録なく処方できたことも問題視されて厳格なルールのもとで流通が管理されることになりました。
2019年2月21日 厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会議事録








2020年5月16日土曜日

ガストロゼピン錠25mg 販売中止(経過措置期限2020年3月31日)

胃炎・消化性潰瘍治療剤のガストロゼピン錠25mgは販売中止されており、経過措置期間も2020年3月31日に終了したようです。
http://www.bij-kusuri.jp/information/attach/pdf/ga_t_info_202002.pdf

ガストロゼピン細粒10%も以前は販売されていましたがすでに販売中止しています(経過措置期間:2011年3月31日終了)

ガストロゼピンの成分であるピレンゼピン塩酸塩水和物は、ドイツのDr.カール・トーメ社(現ベーリンガー・インゲルハイム)で開発された胃炎・消化性潰瘍治療剤です。

ピレンゼピンは、はじめから潰瘍治療薬として開発されたものではありませんでした。
もともとは新規の向精神薬を開発する目的で候補化合物※を合成していたところ、それらの中に、優れた抗潰瘍作用を示すものがあるということがわかり、詳細な薬理試験、臨床試験などが実施された結果、ピレンゼピンが潰瘍治療薬として見出されました。
※5,11-dihydro-6H-pyrido[2,3-b][1,4]benzodiazepin-6-one

日本においては胃十二指腸潰瘍治療剤ガストロゼピン錠として、1981年6月2月に承認を受け、1981年9月に発売されました。
発売から40年近く日本人の胃を守ってきたお薬です。


ガストロゼピンは、酸分泌に関連していると思われる副交感神経節のムスカリン受容体(M1)に対して、選択的に拮抗しAchの分泌を抑えて、攻撃因子を抑制する薬です。さらに胃粘膜微小循環改善、胃粘液産生亢進などにより防御因子を増強するとされています。
効果はH2受容体拮抗薬と同程度かそれより弱く、抗コリン作用による安全性の懸念から現在は、ほとんど使われなくなっていたようです。


ガストロゼピンの代替品


後発品があります。
・ピレンゼピン塩酸塩錠25mg「サワイ」
・ピレンゼピン塩酸塩錠25mg「日医工」

需要も少なく薬価も安いのでいつまでメーカーが製造してくれるかわかりません。

ピレンゼピンの他に潰瘍治療に使われるムスカリンM1受容体拮抗薬はありません。
攻撃因子を抑制する薬としてはPPIやH2受容体拮抗薬が候補となります。
PPIやH2受容体拮抗薬を使う程度ではないのでガストロゼピンが使われていたような場合では、使わない(中止する)というのも選択肢になりえるでしょう。

OTCにはピレンゼピンを配合した胃薬があります。
ガストール細粒
ガストール錠剤

速効性制酸剤(炭酸水素ナトリウム)と持続性制酸剤(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)が出過ぎる胃酸を効果的に中和し、M1ブロッカー(ピレンゼピン塩酸塩水和物)が出過ぎる胃酸分泌を元からおさえることで、胸やけや胃痛をおさえるとともに、荒れた胃粘膜を保護します。さらに消化酵素が働き食後の胃の負担を軽くしてくれます。

パンシロンキュアSP
パンシロンキュアSP錠
「パンシロンキュアSP」は胃酸をコントロールし,胃酸から胃を守りながら痛み・胸やけを和らげる胃腸薬です。






2020年4月28日火曜日

アビガンは薬局やドラッグストアにはありません

(2020年4月28日更新)
新型コロナウイルス感染症の治療に関する知見は現時点では限られているため、厚生労働科学研究費補助金等による研究班において、既存の抗ウイルス薬のCOVID-19に対する効果を検証しているところです。「アビガン錠」(一般名:ファビピラビル)は、研究班による観察研究に参加している医療機関に供給されています。


新型コロナウイルスに対して効果が期待されている抗ウイルス薬の「アビガン錠」(一般名:ファビピラビル)ですが、2020年4月時点では薬局やドラッグストアなどで一般の方が入手することはできません。

アビガンは薬として承認されるための条件として以下を満たす必要があるとされています。

2.本剤の使用実態下における有効性及び安全性について十分な検討が必要であることから、適切な製造販売後調査等を実施すること
4.製造販売する際には、通常のインフルエンザウイルス感染症に使用されることのないよう厳格な流通管理及び十分な安全対策を実施すること。
(添付文書より抜粋)


また、新型インフルエンザ等対策ガイドラインには
・発生後速やかに、安全性及び有効性の知見・情報を集積する体制(臨床試験等)を整備
・国が備蓄・管理したアビガンに関しては、国の指示に基づき指定された医療機関へ放出する
との記載がされています。

アビガンの流通に関してはすべて国が管理しているため、薬局が医薬品を仕入れる問屋にも在庫がなく、薬局は取り寄せることすらできませ


アビガンの流通体制

アビガンの流通について規定されているものは、平成30年に出された通知「新型インフルエンザ発生時の国が備蓄しているファビピラビルの放出方法について」(平成30年3月1日、健感発0313第1号、薬生薬審発0313第1号、薬生安発0313第1号)があります。

新型コロナウイルスにではなく新型インフルエンザ発生を想定して決められたものですが、2020年4月時点ではこれに従うものと考えられます。(今後変更される可能性はあります)

アビガンについては、胎児における催奇形性が懸念される薬剤であることから、厳格な流通管理がとられています。
さらに必要時には迅速に供給できるよう、国が備蓄・管理を行うとともに、速やかに、感染力、病原性、耐性・感受性に関する疫学情報、ウイルス学的情報、臨床医学的情報を収集し、総合的なリスク分析に努め、新型コロナウイルス感染症発生に対してアビガンを使用するか否か判断する必要があります。
国が備蓄・管理したアビガンに関しては、国の指示に基づき指定された医療機関へ放出することとし、詳細は別途定められる予定です。


参考までに、新型インフルエンザ発生時の流通体制について記載しておきます。

●アビガンは「安全性及び有効性の知見が限られていることを踏まえて、新型インフルエンザ発生初期は、感染症指定医療機関に入院した患者に限定する」とされていることから、国が備蓄・管理したアビガンは特定及び第1種感染症指定医療機関(※)に放出することとする。
安全性及び有効性の知見が得られ、患者の発生状況に応じて使用できる医療機関を拡大する。

●厳格に流通管理し、安全性、有効性の知見・情報を集積するため、アビガン使用に当たっては、厚生労働省が感染症指定医療機関からに供給依頼を受け、保管業者、富山化学に出庫、配送指示を出す。

●流通管理を厳格かつ迅速に行うため、アビガンの流通を行う医薬品等販売業者は都道府県幹事卸とし、富山化学は都道府県幹事卸に十分な情報提供を行う。



アビガンと新型コロナウイルス

アビガンは、国内では抗新型インフルエンザウイルス薬として製造販売承認を取得している薬剤です。ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を防ぐというメカニズムを有しています。インフルエンザウイルスと同種のRNAウイルスである新型コロナウイルスに対しても同様に効果があるかもしれないと期待されている薬剤です。

現在その有効性に関しては臨床試験中であり、通常の診療下では処方することはできません。

ただ、その使用方法について日本感染症学会の
に記載があります。

投与方法(用法用量):
1日目 3600 mg (1800 mg 1日2回)
2日目以降 1600 mg (800 mg 1日2回)
最長14日間投与。

1.ファビピラビルの有効性に関し、適切な重症度や投与開始のタイミングに関しては不明である。

2. 併用注意
1) ピラジナミド
2) レパグリニド
3) テオフィリン
4) ファムシクロビル
5) スリンダク

3. 簡易懸濁法による経鼻投与も可能。
被験者に経鼻胃管を挿入し,経鼻胃管が胃の中に入っていることを胸部 X 線検査で確認した後, ピストンを用いて懸濁液をゆっくりと注入する。
その後,5mLの水で経鼻胃管を洗浄する。

4.動物実験において、本剤は初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。

5. 妊娠する可能性のある婦人に投与する場合は、投与開始前に妊娠検査を行い、陰性 であることを確認した上で、投与を開始すること。
また、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中及び投与終了後7日間はパートナーと共に極めて有効な避妊法の実施を徹底するよう指導すること。
なお、本剤の投与期間中に妊娠が疑われる場合には、直ちに投与を中止し、医師等に連絡するよう患者を指導すること。

6. 本剤は精液中へ移行することから、男性患者に投与する際は、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中及び投与終了後7日間まで、性交渉を行う場合 は極めて有効な避妊法の実施を徹底(男性は必ずコンドームを着用)するよう指導すること。また、この期間中は妊婦との性交渉を行わせないこと。

7. 治療開始に先立ち、患者又はその家族等に有効性及び危険性(胎児への曝露の危険性を含む)を十分に文書にて説明し、文書で同意を得てから投与を開始すること。

8. 本剤の投与にあたっては、本剤の必要性を慎重に検討すること。


アビガンはどこで投与されているのか

アビガンは新型コロナウイルスに関する有効性安全性を明らかにするため治験が行われています。
また、特定臨床研究や観察研究も行われています。

これら研究実施施設では入院されたコロナウイルス陽性患者さんを対象にアビガンが投与されることもあるようです。


コロナウイルス感染症に対するアビガンの使用については、医療機関が研究班による観察研究(※)に参加し、患者本人の同意があり、医師の判断によって使用が必要となった場合に限り可能となっています。
アビガンを利用するためには、この研究班に参加している必要があります。

※ 観察研究とは、医療機関内の倫理委員会等の手続を経て患者の同意を得た上で、本来の適応とは異なる投与等を行った治療について、治療結果等を集積し、分析する研究です。

研究班に参加するための要件
(1)患者の要件
患者の同意を取得した上で、医療機関の医師の医学的判断に基づき、アビガンを使用できます。
ただし、妊娠可能な女性、妊娠させる可能性のある男性への投与は、慎重な検討が必要となっています。
(参考) 一般社団法人日本感染症学会「COVID-19 に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第1版」   
  1. 概ね 50 歳以上の患者で、低酸素血症を呈し酸素投与が必要となった例 
  2. 糖尿病・心血管疾患・慢性肺疾患、喫煙による慢性閉塞性肺疾患、免疫抑制状態等のある患者で低酸素血症を呈し酸素投与が必要となった例 
  3. 年齢にかかわらず、酸素投与と対症療法だけでは呼吸不全が悪化傾向にある例

(2)医療機関の要件
  • アビガン投与をご希望される施設については、医師の管理下で、確実な服薬管理・残薬管理ができること。
  • 患者さんご本人の同意を取得した上で、実際に使用頂くこと。
  • 観察研究について、倫理審査委員会の承認を受けること。
  • 薬剤を適応外で使用することについて、医療機関として通常必要な手続きを実施すること。
  • アビガンの投与に至った症例について、必要な情報を、情報をとりまとめている窓口(藤田医科大学及び国立国際医療センター)に提供可能であること。

アビガン観察研究の問い合わせ先
投与の希望が生じた場合には、必要なアビガンが速やかに納入できるよう、富士フイルム富山化学株式会社、厚生労働省等関係者により、必要な体制が整備されています。
  • 研究に関すること
    藤田医科大研究事務局 
     covid-19(at) fujita-hu.ac.jp
    NCGM レジストリ研究事務局
     registry.covid(at) hosp.ncgm.go.jp
  • 副作用等の薬剤の情報に関すること 富士フイルム富山化学株式会社
     fftc-avigan(at) fujifilm.com
  • その他、薬剤の提供等に関すること 厚生労働省医政局研究開発振興課治験推進室
     chikensuishin(at) mhlw.go.jp
※ (at) は @ に置き換えて下さい.

アビガン(ファビピラビル)観察研究に関する Q&A
「コロナウイルス感染症に対するアビガン(一般名:ファビピラビル)に係る観察研究の概要及び同研究に使用するための医薬品の提供について」(令和2年4月27日 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部)より抜粋
https://www.mhlw.go.jp/content/000625757.pdf

(問1) 観察研究への参加を審議するための倫理審査委員会が、医療機関にない場合はどのようにしたらよいですか。
観察研究を行う代表研究機関の倫理審査委員会による中央審査を採用してください。
詳細は、代表研究機関の国立国際医療研究センター、藤田医科大学にご相談ください。 
藤田医科大研究事務局
 covid-19(at)fujita-hu.ac.jp
NCGMレジストリ研究事務局
  egistry.covid(at)hosp.ncgm.go.jp
(問2) アビガンを投与する前に、実施しなければならない医療機関内の手続きを教えてください。
各医療機関において医療安全の観点から求められている、医薬品の適用外使用に係る手続き(通常実施しているもの)を実施してください。 
〔参考〕 医療法においては、未承認新規医薬品等を用いた医療の提供の実施の適否を確認する部門の設置等の措置を講ずることが定められています(特定機能病院及 び臨床研究中核病院については義務、それ以外の病院については努力義務。医療法施行規則第9条の20の2第1項第8号等)
(問3) アビガンの供給に関する希望を窓口に依頼する際、伝達しなければならない事項を教えてください。
患者への投与前までに、問2で示した医療機関内手続きが終了する見込みがあること、また、患者への同意が確実に得られる見込みがあることについて明記してください。 このほか、投与を予定する患者数についても、併せて伝達ください。
(問4) アビガンには、どのような副作用がありますか。
動物実験において、初期胚の致死及び催奇形性が確認されていますので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないようお願いします。 また、精液中に移行することも確認されており、妊娠させる可能性のある男性への投与についても慎重な検討が必要です。あわせて、医師の管理下で、確実な服薬管理・残薬管理をお願いします。
(なお、妊娠する可能性のある女性、妊娠させる可能性のある男性へ投与する際には、催奇形性に関する危険性について十分に説明した上で、投与期間中及び投与終了後7日間はパートナーとともに、極めて有効な避妊法の実施を徹底するよう指導してください。) 
また、これまでの観察研究において、アビガン投与と因果関係が疑われる有害事象は、肝機能障害、高尿酸血症、腎機能障害、嘔気、皮疹、発熱、高ビリルビン血症が報告されています。
(問5)アビガン使用に関する患者同意文書はどうすれば良いですか。
代表研究機関である国立国際医療研究センターの国際感染症センターのホームページでひな形を公開しています
 http://dcc.ncgm.go.jp/information/index.html
(問6) アビガン以外で、どのような薬剤で観察研究が行われていますか?
現在、アビガン以外には、主に、オルベスコ(一般名:シクレソニド)、フサン(一般名:ナファモスタット)の観察研究が行われています。 
オルベスコ: 吸入ステロイド薬で、抗炎症作用があり、気管支喘息が適応となっています。 基礎研究において、コロナウイルスに対する抗ウイルス活性が確認されています。 
フサン :プロテアーゼ阻害薬であり、急性膵炎等が適応となっています。 基礎研究において、ウイルスが細胞に接着する分子との結合を阻害し、ウイル スの増殖抑制効果が期待される可能性があるとの報告があります。
(問7) アビガン以外の観察研究に参加したいのですがどのようにしたらよいですか?
参加を希望される医療機関は、藤田医科大研究事務局 ( covid-19(at)fujitahu.ac.jp)へ連絡してください。
患者同意の取得や、使用にあたっての医療機関内手続き等については、基本的にアビガンの場合と同様です。
(問8) オルベスコ(一般名:シクレソニド)は、添付文書上、「有効な抗菌剤が存在し ない感染症」が禁忌となっていますが、使用してもよいのでしょうか。
オルベスコは、基礎研究において、コロナウイルス感染症に対する抗ウイルス作用が示唆された薬です。
一方で、ステロイドであるため、「有効な抗菌剤が存在しない感染症」が禁忌となっていますので、観察研究にあたっては、主治医が、期待される 効果と副作用とを勘案し、患者の同意を得て、慎重に投与すべきかを検討してください。
(問9) 介護老人保健施設(老健)、重症心身障害児施設、精神科単科の病院において(転院が困難な)患者さんに対してアビガンによる治療を行いたいのですがどのようにしたらよいですか。
転院が困難な症例は、医師の経過観察下で、各施設でのアビガン投与をお願いしております。患者要件は感染症学会ガイドラインを目安にしてください。 http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_antiviral_drug_200227.pdf 
また他の医療機関と同様にアビガン観察研究への参加をお願いしております。
 アビガン投与、観察研究に関する手続きは(問1)から(問5)を参照してください。
(問10) アビガンの投与を希望する場合、どこに問い合わせればよいですか。
■研究に関すること
 藤田医科大研究事務局
 covid-19(at)fujita-hu.ac.jp

 NCGMレジストリ研究事務局
registry.covid(at)hosp.ncgm.go.jp 
■副作用等の薬剤の情報に関すること
 富士フイルム富山化学株式会社
 fftc-avigan(at)fujifilm.com 
■その他、薬剤の提供等に関すること
 厚生労働省医政局研究開発振興課治験推進室
 chikensuishin(at)mhlw.go.jp

参考:
・抗インフルエンザウイルス備蓄薬の流通について
・【通知】新型インフルエンザ発生時の国が備蓄しているファビピラビルの放出方法について
(平成30年3月1日、健感発0313第1号、薬生薬審発0313第1号、薬生安発0313第1号)
・新型コロナウイルス感染症に対する厚生労働科学研究班への協力依頼について
・新型コロナウイルス感染症に対するファビピラビルに係る観察研究の概要及び同研究に使用するための医薬品の提供に関する周知依頼について
(令和2年4月27日 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部)
https://www.mhlw.go.jp/content/000625756.pdf

2020年4月23日木曜日

大うつ病治療薬 ボルチオキセチン

ボルチオキセチン(vortioxetin)はアメリカのLundbeck社が創製した大うつ病治療薬です。

大うつ病性障害治療薬として米国をはじめ77カ国で承認、60カ国以上で販売されています。
アメリカにおいてBrintellixという商品名で武田薬品が世界で初めて販売を開始しました。
Brintellix製品情報ページ(米国)http://us.brintellix.com/

日本ではトリンテリクスという商品名で2019年11月に発売されました。

ボルチオキセチンの特徴


ボルチオキセチンは神経伝達物質セロトニン(5-HT)の再取り込み阻害作用をもち、また、5-HT1A受容体刺激作用、5-HT1B受容体の部分的刺激作用をもちます。

ボルチオキセチンは5-HT3、5-HT7、5HT1-D受容体拮抗作用をもちます。

アメリカで承認された用量は1日5~20mgです。

Vortioxetine, a new serotonergic agent, has shown superiority over placebo in treating major depressive disorder in both adult and geriatric patients.

The multimodal pharmacologic activity of vortioxetine may convey benefit in cognitive function.

Vortioxetine’s safety profile is similar to that of other selective serotonin reuptake inhibitors.

Vortioxetine’s favorable tolerability profile may have meaningful advantages with regard to weight gain and low sexual dysfunction that may benefit patients.


作用機序は完全に解明されていませんが、うつ病に対する新しい治療薬として、神経伝達物質セロトニン(5-HT)の再取り込みを阻害し、また、5-HT1A受容体作動作用、5-HT1B受容体の部分的作動作用、5-HT3、5-HT1D、5-HT7の各受容体拮抗作用など複数のセロトニン受容体に作用すると考えられています。


SSRIの副作用に性機能障害があります。
ボルチオキセチンに切り替えることによってSSRIによって起こる性機能障害が改善したというデータが示されています。
最も有効性と忍容性の高い抗うつ薬としてしられるエスシタロプラムと比べても性機能改善は優位を示しています。
Jacobsen PL, Mahableshwarkar AR, Chen Y, Chrones L, Clayton AH. J Sex Med. 2015;12(10):2036-2048. (PMID:26331383)


◉適応

うつ病,うつ状態。

◉禁忌

本薬剤の成分に対する過敏症の既往歴、MAO-I投与中あるいは中止2週間以内。



◉相互作用

ボルチオキセチンは主に肝代謝酵素CYP2D6、CYP3A4/5、CYP2C19、CYP2C9、CYP2A6、CYP2C8及びCYP2B6で代謝されます。
CYP2D6の阻害作用を有する薬剤を投与中の患者又は遺伝的にCYP2D6の活性が欠損している(Poor Metabolizer)ことが判明している患者では、本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、10mgを上限とすることが望ましいとされています。
また、強力なCYP誘導剤の併用投与では増量するなどの用量調整が必要だと考えられます。



◉見逃してはいけない副作用

国内臨床試験においては,主な副作用は悪心(19.0%)、傾眠(6.0%)及び頭痛(5.7%)でした。
海外の臨床試験において悪心の頻度は用量に依存していました。悪心の強度は軽度から中等度で無処置で消失しています。
悪心の起きる時期は治療の最初の週がほとんどで、投与の1〜2日後に患者の15%〜20%が吐き気を経験しました。

悪心や吐き気は導入の際にうまくいかない副作用の1つです。モサプリドなどの併用を考慮するなどの対応が必要です。2週間程度は様子を見ておくのが良いでしょう。




ペルサンチン-Lカプセル150mg 販売中止

(2020年6月更新)
ペルサンチン-Lカプセル150mgが販売中止(2020年9月予定)となるようです。

http://www.bij-kusuri.jp/information/attach/pdf/pe_lcap_info_202006.pdf

経過措置期間は2021年3月末予定です。
※ペルサンチン錠は販売継続です。

中止理由は、製造していたドイツの工場が閉鎖されたためです。
日本への技術移管も努力していたようですが、国内製造の目処が立たず、やむなく販売中止となったようです。


ペルサンチンの成分はジピリダモールです。

ジピリダモールは 1951年に F. G. Fischer 及び J. Roch によって開発されたピリミド-ピリミジン誘導体で、冠状動脈疾患治療薬として1959年にベーリンガーインゲルハイムの前身であるドイツのDr.カール・トーメ社により発売されました。
1965 年に P. R. Emmons らによって抗血小板作用を有することが報告されて以来、ドイツ、イギリス、日本を含め各国で抗血小板作用に基づく心臓弁置換術後の血栓・塞栓の抑制あるいは,糸球体腎炎,ネフローゼ症候群等の治療薬として今日広く使用されています。
日本では、冠状動脈疾患治療薬剤としてペルサンチン錠12.5が1960年に発売されました。

ペルサンチン-Lカプセルは、長期にわたる治療が必要な抗血小板療法において、服用回数を減らし、有効血中濃度を長時間持続させる徐放性製剤の開発が求められたことから開発が行われ、1994年に承認されました。


ペルサンチン-Lカプセル150mgの代替品


ペルサンチン錠が代替品となります。
徐放製剤ではないので用法用量が異なるので注意です。
規格によっては適応も異なります。

ペルサンチンカプセルがよく使われている病態に、糖尿病性腎症によるネフローゼやIgA腎症があります。
これら病態ではジピリダモールの他にジラゼプ塩酸塩(コメリアン)が使用されることがあります。







ペルサンチン静注10mg 販売中止(経過措置期限2020年3月末)

ペルサンチン静注10mgは販売中止されており、経過措置期間も2020年3月31日に終了したようです。

※ペルサンチン錠は販売継続中です。


ペルサンチンの成分はジピリダモールです。

ジピリダモールは 1951年に F. G. Fischer 及び J. Roch によって開発されたピリミド-ピリミジン誘導体で、冠状動脈疾患治療薬として1959年にベーリンガーインゲルハイムの前身であるドイツのDr.カール・トーメ社により発売されました。
1965 年に P. R. Emmons らによって抗血小板作用を有することが報告されて以来、ドイツ、イギリス、日本を含め各国で抗血小板作用に基づく心臓弁置換術後の血栓・塞栓の抑制あるいは,糸球体腎炎,ネフローゼ症候群等の治療薬として今日広く使用されていました。
日本では、冠状動脈疾患治療薬剤として 1960年に発売されました。


ジピリダモール負荷試験


ペルサンチン静注の効能効果は狭心症、心筋梗塞、その他の虚血性心疾患、うっ血性心不全でした。
そのほか、心機能評価のための薬剤負荷試験でも使用されていました。

ジピリダモールを投与すると、正常心筋部の血流が増加するのに対して病変部は増加しないので、血流不均衡が生じ、心機能を評価する検査の一つの心筋血流シンチグラフィでは、血流を評価できる201Tlや99mTc標識放射性医薬品を投与すると負荷時の病変部の低下として描画されます。
ジピリダモール負荷は運動負荷と同等の虚血の診断成績が得られるので、高齢者や下肢動脈の閉塞など運動負荷が難しい患者にも有効として汎用されていました。


ペルサンチン静注10mgの代替品


後発品が存在します。(2020年4月時点)

・ジピリダモール静注液10mg「日医工」

心筋負荷用の薬剤としては、アデノシンが代替として使用可能です。
ただし、作用の持続時間がジピリダモールでは静注後2~4分でピークに達し約30分間持続するのに対し、アデノシンでは静注後約10秒から約2分間と比較的短時間であることに注意が必要です。

・アデノシン負荷用静注60mgシリンジ「FRI」



参考:
川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)

2020年4月21日火曜日

「0410事務連絡」薬局の対応は・・・ 新型コロナウイルス感染防止におけるオンライン診療

(2020年4月25日Q&A更新)

2020年4月10日の厚生労働省の事務連絡、いわゆる「0410事務連絡」をうけて、新型コロナウイルス感染拡大防止措置として初診からの電話や情報通信機器を用いた診療の実施が可能になりました。



新型コロナウイルス感染防止におけるオンライン診療について、まとめてみました。


【薬局】電話や情報通信機器(ビデオ通話など)を用いた服薬指導について


全ての薬局において、薬剤師が患者・服薬状況等に関する情報を得た上で、電話や情報通信機器を用いて服薬指導等を適切に行うことが可能と判断した場合にオンライン服薬指導を行うことができます。

「患者・服薬状況等に関する情報」 とは、どのようなことなのでしょうか。
以下の6つが考えられます。
(1)患者のかかりつけ薬剤師・薬局として有している情報
(2)当該薬局で過去に服薬指導等を行った際の情報
(3)患者が保有するお薬手帳に基づく情報
(4)患者の同意の下で、患者が利用した他の薬局から情報提供を受けて得られる情報
(5)処方箋を発行した医師の診療情報
(6)患者から電話等を通じて聴取した情報

処方箋の取り扱いについては、医療機関から備考欄に「0410 対応」と記載した処方箋がFAX等で送られてくるので、それをもとに調剤を行い、処方箋原本については可能な時期に入手し、FAX等で送付された処方箋情報と共に保管することが求められています。

薬局が守る必要のある条件

新型コロナウイルス感染拡大防止措置におけるオンライン服薬指導での薬局における実施要件としては、薬剤の配送に関わる事項を含む生じうる不利益等・配送及び服薬状況の把握等の手順について薬剤師から患者に対して十分な情報を説明し、説明を行ったことを記録することが求められています。
さらに、患者に初めて調剤した薬剤については、患者の状態等を踏まえ、「患者の服薬アドヒアランスの低下などを回避のための対応」をすることとされています。

「患者の服薬アドヒアランスの低下などを回避のための対応」
必要に応じ、事前に薬剤情報提供文書等を患者にファクシミリ等により送付してから服薬指導等を実施する
必要に応じ、薬剤の交付時に(配送した場合は薬剤が患者の手元に到着後、速やかに)、電話等による方法も含め、再度服薬指導等を行う
薬剤交付後の服用期間中に、電話等を用いて服薬状況の把握や副作用の確認などを実施する
上記で得られた患者の服薬状況等の必要な情報を処方した医師にフィードバックする

そして、対面による服薬指導等が必要と判断される場合は、速やかに切り替えます。
薬剤師は被保険者証で患者さん本人であることの確認、患者は薬剤師を顔写真付きの身分証明書で互いに確認し合います。


薬剤の配送等について

薬剤の品質の保持や確実な授与等がなされる方法(書留郵便等)で患者へ渡します。
薬剤が確実に患者に授与されたことを電話等により確認します。
インスリンなどの冷所品など品質の保持に特別の注意を要したり早急に授与する必要のある薬剤は、クール便を使うなどの適切な配送方法を利用する必要があります。薬局スタッフが届けたり、患者又はその家族等に来局を求めたりする等の工夫をしましょう。
患者が支払う配送料及び薬剤費等は、代金引換や銀行振込、クレジットカード決済、その他電子決済等の方法でも可能です。

送料は高いですがレターパックプラスは追跡機能もあり安心です。ヤマト運輸の宅急便コンパクトも少量であればコストが抑えられて良いと思います。


その他の留意点

患者の状況等によっては、対面での服薬指導等が適切な場合や、次回以降の調剤時に対面での服薬指導等を行う必要性が出てくることを考えると、オンライン服薬指導を行うのはかかりつけ薬剤師及び薬局や、患者の居住地域内にある薬局が望ましいとされています。

また、薬局内やホームページで事前に医療機関関係者や患者等に以下を周知することが求められます。

①服薬指導等で使用する機器(電話・情報通信機器等)
②処方箋の受付方法(FAX・メール・アプリ等)
③薬剤の配送方法
④支払方法(代金引換サービス・クレジットカード決済等)
⑤服薬期間中の服薬状況の把握に使用する機器(電話・情報通信機器等)

算定できる点数は

調剤技術料、薬剤料及び特定保険医療材料料を算定することができます。
また、要件を満たせば、薬剤服用歴管理指導料等を算定することができます。
ただし、薬剤服用歴管理指導料の加算を算定できるかどうかは明言されていません。
2020年9月開始の正規のオンライン服薬指導では薬剤服用歴管理指導料の加算は算定できないので、明確な通知が出るまではそれに準ずるのが良いかと思います。



【病院等】初診から電話や情報通信機器(ビデオ通話など)を用いた診療を実施する場合


医師の責任の下で、電話や情報通信機器を用いた診療による診断や処方が医学的に可能であると判断する範囲において、初診から電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方を行うことができます。

なお、診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、処方日数は7日間を上限とします。
また、診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、麻薬及び向精神薬に加え、診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤(いわゆるハイリスク薬)の処方することはできません。

主な要件

できる限り、過去の診療録・診療情報提供書・地域医療情報連携ネットワーク・健康診断の結果等で患者の基礎疾患の情報を把握・確認する必要があります。
生じるおそれのある不利益・急病急変時の対応方針等について、医師から説明した上でカルテに記載します。
対面による診療が必要と判断される場合は速やかに移行します。
患者は顔写真付きの身分証明書で医師であることを確認し、医師は被保険者証等で患者本人確認を互いに行います。
支払方法は、銀行振込・クレジットカード決済・その他電子決済等も可能です。


【病院等】定期受診を電話や情報通信機器(ビデオ通話など)を用いて実施する場合

既に対面で診断され治療中の疾患を抱える患者について、電話や情報通信機器を用いた診療により、当該患者に対して、これまでも処方されていた医薬品を処方することは事前に診療計画が作成されていない場合であっても行うことができます。

また、患者の疾患により発症が容易に予測される症状の変化に対して、これまで処方されていない医薬品を処方することもできます。

主な要件

①既に定期的なオンライン診療を行っている場合
発症が容易に予測される症状の変化を診療計画に追記し、診療計画の変更について患者の同意を得ておきます。

②これまで定期的なオンライン診療を行っていない場合
生じるおそれのある不利益・発症が容易に予測される症状の変化・処方する医薬品等について患者に説明して同意を得ておきます。
その説明内容をカルテに記載します。


処方箋の取扱いについて

患者が薬局での電話や情報通信機器による服薬指導を希望する場合は、処方箋の備考欄に「0410 対応」と記載し、患者の同意を得て、医療機関から患者が希望する薬局にFAX等で送付します。
カルテには薬局名を記録しておきます。
後日、FAX等で処方箋情報を送付した薬局に処方箋原本を送付します。

FAXが届いているか電話で確認するなどの配慮が必要です。

実施状況の報告について

医療機関から所定の様式で所在地の都道府県に毎月報告します。
各都道府県は管下の医療機関の実施状況を厚生労働省に毎月報告します。

薬剤の配送等について

院内調剤の場合には薬剤の品質の保持や確実な授与等がなされる方法(書留郵便等)で患者へ渡します。
薬剤が確実に患者に授与されたことを電話等により確認します。
患者が支払う配送料及び薬剤費等は、代金引換や銀行振込、クレジットカード決済、その他電子決済等の方法でも可能です。

診療報酬について

初診の場合、電話等を用いた初診料214点を特例的に算定できます。
再診の場合、電話等再診料73点を算定します。管理料については、従来から「オンライン診療料」の対象になる医学管理料(特定疾患療養管理料、在宅時医学総合管理料など)を算定していた慢性疾患患者に対して、電話等で医学管理を行った場合は、147点を算定可能です。
医薬品を処方した場合は、「処方料」や「処方箋料」も算定できます。



初診 再診
点数 院内処方 院外処方 院内処方 院外処方
基本診療料 初診料 214点 電話等再診料 73点
管理料 - 147点 (B000 2)
処方料 - -
処方箋料 - -
調剤料 - -
調剤基本料 - -
薬剤料 - -

新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その14)


参考通知



Q. 事務連絡の「1」にあるように、慢性疾患等を有する定期受診患者等について、医師が電話や情報通信機器を用いて診療し医薬品の処方を行い、ファクシミリ等で処方箋情報が送付される場合、保険医療機関は、電話等再診料、処方箋料を算定できるか。
A. 算定できる。
Q. 上記について、電話や情報通信機器を用いて診療を行った場合は、電話等再診料とオンライン診療料のいずれを算定するのか。
A. 上の場合については、電話等再診料を算定すること。
Q. ファクシミリ等により処方箋情報を受け付けた保険薬局において、当該処方箋情報に基づく調剤を行った場合、調剤技術料及び薬剤料は算定できるのか。
また、事務連絡の「3」にあるように、患者に薬剤を渡し、電話や情報通信機器を用いて服薬指導を行った場合、薬剤服用歴管理指導料等の薬剤師からの説明が要件となっている点数は算定できるのか。
A. 調剤技術料及び薬剤料は算定できる。薬剤服用歴管理指導料等は、電話や情報通信機器を用いて適切な指導を行っており、その他の要件を満たしていれば算定できる。




Q. 事務連絡の「1」にあるように、慢性疾患等を有する定期受診患者等について、医師が電話や情報通信機器を用いて診療し医薬品の処方を行った場合、保険医療機関は、電話等再診料、調剤料、処方料、調剤技術基本料を算定できるか。
A. 算定できる。
Q. 事務連絡の「1」の場合であって、過去3月以内に在宅療養指導管理料を算定した慢性疾患等を有する定期受診患者等について、医師が電話や情報通信機器を用いて診療し、患者又は患者の看護に当たる者(以下、「患者等」という。)に対して、療養上必要な事項について適正な注意及び指導を行い、併せて必要かつ十分な量の衛生材料又は保険医療材料を支給した場合に、在宅療養指導管理料及び在宅療養指導管理材料加算を算定できるか。
A. 衛生材料又は保険医療材料を支給した場合に限り、在宅療養指導管理料及び在宅療養指導管理材料加算を算定できる。 この場合、在宅療養の方法、注意点、緊急時の措置に関す る指導等の内容、患者等から聴取した療養の状況及び支給した衛生材料等の量等を診療録 に記載すること。また、衛生材料又は保険医療材料の支給に当たっては、患者等に直接支 給すること。ただし、患者の看護に当たる者がいない等の理由により患者等に直接支給できない場合には、当該理由を診療録に記載するとともに、衛生材料又は保険医療材料を患者に送付することとして差し支えない。この場合において、当該患者が受領したことを確認し、その旨を診療録に記載すること。


Q. オンライン診療料の留意事項では、「診療計画に基づかない他の傷病に対する診療は、 対面診療で行うことが原則」とされているが、令和2年3月19日事務連絡の「1(2) ①」にあるように、慢性疾患等を有する定期受診患者等に対する診療等について、既に当該患者に対して定期的なオンライン診療を行っている場合であって、発症が容易に予測される症状の変化に対する処方を行うとき、診療報酬の算定に当たっては、どのようにすればよいか。
A. 通常のオンライン診療料と同様の取扱いとして差し支えない。
Q. 令和2年3月19日事務連絡の「1(2)②」にあるように、慢性疾患等を有する定 期受診患者等に対する診療等について、これまで当該患者に対して定期的なオンライン診療を行っていない場合であって、発症が容易に予測される症状の変化に対する処方を行うとき、診療報酬の算定に当たっては、どのようにすればよいか。
A. 「新型コロナウイルス感染症患者の増加に際しての電話や情報通信機器を用いた診療や処方箋の取扱いについて」(令和2年2月28日厚生労働省医政局医事課、医薬・生活衛 生局総務課事務連絡。以下「令和2年2月 28 日事務連絡」という。)に関連する臨時的な診療報酬の取扱いと同様の取扱いとして差し支えない。
Q. 令和2年3月 19 日事務連絡の「1(2)」の場合について、ファクシミリ等により処 方箋情報を受け付けた保険薬局において、当該処方箋情報に基づく調剤を行った場合、調剤報酬の算定に当たっては、どのようにすればよいか。
A. 令和2年2月28日事務連絡に関連する臨時的な診療報酬の取扱いと同様の取扱いとして差し支えない。

Q. 令和2年3月 19 日事務連絡の「2(3)」の場合について、新型コロナウイルス感染 症の診断や治療が直接の対面診療により行われた患者に対して、在宅での安静・療養が必要な期間中に、在宅での経過観察結果を受けて、当該患者の診断を行った医師又は、かか りつけ医等からの紹介に基づき新型コロナウイルス感染症の診断や治療を行った医師から情報提供を受けた当該かかりつけ医が、患者の求めに応じて、電話や情報通信機器を用いて、それぞれの疾患について発症が容易に予測される症状の変化に対して必要な薬剤を 処方した場合に、診療報酬等の算定に当たっては、どのようにすればよいか。
A. 令和2年2月 28 日事務連絡に関連する臨時的な診療報酬の取扱いと同様の取扱いとして差し支えない。


Q. 事務連絡により、慢性疾患を有する定期受診患者に対して、電話や情報通信機器を用いた診療及び処方を行うことが可能とされた。この場合であって、当該患者に対し、電話 や情報通信機器を用いた診療を行う以前より、対面診療において診療計画等に基づき療養 上の管理を行っており、電話や情報通信機器を用いた診療においても当該計画等に基づく 管理を行った場合、どのような取扱いとなるか。
廃問(0410事務連絡に代える)
A. 電話や情報通信機器を用いた診療を行う以前より、対面診療において診療計画等に基づ き療養上の管理を行い、「情報通信機器を用いた場合」が注に規定されている管理料等を 算定していた患者に対して、電話や情報通信機器を用いた診療においても当該計画等に基 づく管理を行う場合は、当該管理料等の注に規定する「情報通信機器を用いた場合」の点 数を算定できる。 なお、当該管理を行う場合、対面診療の際の診療計画等については、必要な見直しを行うこと。
Q. 上の問における「管理料等」とは、何を指すのか。
廃問(0410事務連絡に代える)
A. 特定疾患療養管理料、小児科療養指導料、てんかん指導料、難病外来指導管理料、糖尿 病透析予防指導管理料、地域包括診療料、認知症地域包括診療料及び生活習慣病管理料を指す。
Q. 保険医療機関の所在地と患家の所在地との距離が 16 キロメートルを超える往診又は 訪問診療(以下、「往診等」という。)については、当該保険医療機関からの往診等を必 要とする絶対的な理由がある場合には認められることとされており(「診療報酬の算定方 法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和2年3月5日保医発 0305 第1 号))、具体的には、①患家の所在地から半径 16 キロメートル以内に患家の求める診療 に専門的に対応できる保険医療機関が存在しない場合、②患者の求める診療に専門的に対 応できる保険医療機関が存在していても当該保険医療機関が往診等を行っていない場合などが考えられる(「疑義解釈資料の送付について(その7)」(平成 19 年4月 20 日付 医療課事務連絡))とされている。例えば、自宅で療養する新型コロナウイルス感染症患 者に往診等が必要な場合であって、対応可能な医療機関が近隣に存在しない場合や対応可 能な医療機関が近隣に存在していても往診等を行っていない場合は、「16 キロメートル を超える往診等を必要とする絶対的な理由」に含まれるか。
A. ご指摘の事例は、「絶対的な理由」に含まれる。




Q. 新型コロナウイルスの感染が拡大している間、これまでオンライン診療料の届出を行 っていない医療機関において新規にオンライン診療料を算定する場合、オンライン診療料の施設基準に係る届出は必要か。
A. 必要。 ただし、新型コロナウイルスの感染が拡大している間、基本診療料の施設基準 等第三の八の二(1)ロに規定する施設基準のうち、1 月当たりの再診料等の算定回数の合計に占めるオンライン診療料の算定回数の割合が1割以下であることとする要件については、適用しないこととすること。
Q. 新型コロナウイルス感染が拡大している間、既にオンライン診療料の届出を行ってい る医療機関において、基本診療料の施設基準等第三の八の二(1)ロに規定する 1 月当たりの再診料等の算定回数の合計に占めるオンライン診療料の算定回数の割合が1割以下であることとする要件を満たさなくなった場合、オンライン診療料の変更の届出は必要か。
A. 不要。 ただし、当該要件以外の要件を満たさなくなった場合は、速やかに届出を取り下げること。



Q. 対面診療において、精神科を担当する医師が一定の治療計画のもとに精神療法を継続的に行い、通院・在宅精神療法を算定していた患者に対して、電話や情報通信機器を用いた診療においても、当該計画に基づく精神療法を行う場合は、どのような取扱いとな るか。
A. 新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、精神疾患を有する定期受診患者に対して、電話や情報通信機器を用いた診療及び処方を行う場合であって、電話や情報通信機器を用いた診療を行う以前より、対面診療において精神科を担当する医師が一定 の治療計画のもとに精神療法を継続的に行い、通院・在宅精神療法を算定していた患者に対して、電話や情報通信機器を用いた診療においても、当該計画に基づく精神療法を行う場合は、「診療報酬の算定方法」(平成 20 年厚生労働省告示第 59 号)B000 の2に規定する「許可病床数が 100 床未満の病院の場合」の 147 点を月1回に限り算定でき ることとする。

Q. 小児科外来診療料及び小児かかりつけ診療料の施設基準の届出を行っている保険医療機関において、6歳未満の乳幼児又は未就学児に対して、初診から電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方をする場合について、どのように考えればよいか。
A. 初診料の注2に規定する 214 点を算定すること。 なお、この場合において、診断や処方をする際は、「新型コロナウイルスの感染拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(令和2年4月10日厚生労働省医政局医事課、医薬・生活衛生局総務課事務連絡。)や別紙における留意点等を踏まえ、適切に診療を行うこと。また、その際、医薬品の処方を行い、又はファクシミリ等で処方箋情報を送付する場合は、調剤料、処方料、処方箋料、調剤技術基本料 、又は薬剤料を算定することができる。
Q. 保険医療機関において検査等を実施し、後日、電話や情報通信機器を用いて、検査結果等の説明に加えて、療養上必要な指導や、今後の診療方針の説明等を行った場合、電話等再診料を算定できるか。
A. 不要。 ただし、当該要件以外の要件を満たさなくなった場合は、速やかに届出を取り下げること。
Q. 新型コロナウイルスの感染症患者(新型コロナウイルス感染症であることが疑われる患者を含む。)に対して、往診等を実施する場合にも、必要な感染予防策を講じた上で当該患者の診療を行った場合には、院内トリアージ実施料を算定できるか。
A. 算定できる。 なお、必要な感染予防策については、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第1版」に従い、院内感染防止等に留意した対応を行うこと。特に、「5 院内感染防止」及び参考資料「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(国立感染症研究所)」の内容を参考とすること。
Q. 前月に「月2回以上訪問診療を行っている場合」の在宅時医学総合管理料又は施設入居時等医学総合管理料(以下「在医総管等」という。)を算定していた患者に対して、 当月も診療計画に基づいた定期的な訪問診療を予定していたが、新型コロナウイルスへの感染を懸念した患者等からの要望等により、訪問診療を1回実施し、加えて電話等を用いた診療を実施した場合について、どのように考えればよいか。
A. 当月に限り、患者等に十分に説明し同意を得た上で、診療計画に基づき「月2回以上訪問診療を行っている場合」の在医総管等を算定しても差し支えない。 なお、次月以降、訪問診療を月1回実施し、加えて電話等を用いた診療を実施する場合については、診療計画を変更し、「月1回訪問診療を行っている場合」の在医総管等を算定すること。ただし、電話等のみの場合は算定できない。 また、令和2年3月に「月1回訪問診療を行っている場合」を算定していた患者に対して、令和2年4月に電話等を用いた診療を複数回実施した場合は、「月1回訪問診療を行っている場合」を算定すること。 なお、令和2年4月については、緊急事態宣言が発令された等の状況に鑑み、患者等に十分に説明し同意を得た上で、訪問診療を行えず、電話等による診療のみの場合であっても、在医総管等を算定して差し支えない。
Q. 4月10日事務連絡により、電話や情報通信機器を用いた服薬指導等を実施した場合、その他の要件を満たせば薬剤服用歴管理指導料等を算定することが可能とされた。在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定していた患者に対して、薬学的管理指導計画に基づいた定期的な訪問薬剤管理指導を予定していたが、新型コロナウイルスへの感染を懸念した患者等からの要望等により、訪問の代わりに電話等により必要な薬学的管理指導を実施した場合について、どのように考えればよいのか。


A. 患者又はその家族等に十分に説明し同意を得た上で、薬剤服用歴管理指導料の「1」に掲げる点数を算定できることとする。 ただし、当月又はその前月に、当該患者に対し、在宅患者訪問薬剤管理指導料を1回以上算定している必要がある。 なお、この場合、「薬剤服用歴管理指導料」の点数については、在宅患者訪問薬剤管理指導料と合わせて月4回(末期の悪性腫瘍の患者及び中心静脈栄養法の対象患者にあっては、週2回かつ月8回)まで算定できることとする。


Q. 居宅療養管理指導費又は介護予防居宅療養管理指導費を算定している患者について、 当月において、新型コロナウイルスへの感染を懸念した患者等からの要望等により、患者又はその家族等に十分に説明し同意を得た上で、必要な薬学的管理指導を電話等により行った場合は薬剤服用歴管理指導料の点数を算定できるのか。


A. 同一月内において一度も居宅療養管理指導費又は介護予防居宅療養管理指導費を算定しなかった場合は、算定できる。
ただし、前月に、当該患者に対し、居宅療養管理指 導費又は介護予防居宅療養管理指導費を1回以上算定している必要がある。
なお、この場合、「薬剤服用歴管理指導料」の点数については、月4回(末期の悪 性腫瘍の患者及び中心静脈栄養法の対象患者にあっては、週2回かつ月8回)まで算定できることとする。