温感タイプの消炎鎮痛貼付剤とは?
消炎鎮痛貼付剤は、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などの有効成分を皮膚から浸透させ、プロスタグランジン合成を阻害することで炎症と疼痛を抑制する局所製剤です。温感タイプはこれに加え、トウガラシエキス(カプサイシン)やdl-カンフルといった刺激成分を含有しています。これらの成分は血流を促進し、温感刺激を付与することで、特に慢性的な筋緊張や関節のこわばりに対する鎮痛効果を高めます。
温感 vs 冷感:使い分けのポイント
- 温感タイプのメリット:血行促進作用による筋緊張の緩和。慢性的な疼痛やこわばり、リハビリテーション前のウォーミングアップに適しています。
- 温感タイプの注意点:刺激性が強く、敏感肌の患者様には発赤やかぶれのリスクがあります。また、入浴前後30分以内の貼付は避けるよう指導が必要です。
- 冷感タイプとの違い:冷感タイプはメントールなどの冷却成分で、急性期の炎症や腫脹(打撲直後など)の緩和に用いられます。成分が同じであれば鎮痛効果自体に大きな差はありませんが、病態に応じた温冷の使い分けが重要です。
主要成分と製品一覧:パップ剤・テープ剤別比較
温感タイプで主に用いられる有効成分は、インドメタシン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンです。以下に、製品ごとの特徴をまとめました。
【パップ剤】:柔軟性と広範囲への貼付に適した製品
パップ剤は水分を含有し、肌への刺激が比較的少ない製品です。
成分 | 製品名 | 特徴・効能 | 注意点 |
---|---|---|---|
インドメタシン | ラクティオンパップ | プロスタグランジン合成阻害作用。肩関節周囲炎や腱鞘炎に有効。 | 長期使用時のモニタリングを推奨。 |
サリチル酸メチル / dl-カンフル / トウガラシエキス | MS温シップ「タイホウ」 | マイルドな温感刺激で、筋肉痛・腰痛に。 | 初回は小面積でのテストを推奨。 |
MS温シップ「タカミツ」 | コストパフォーマンスに優れる。 | 同上。入浴後の使用を避ける。 | |
ラクール温シップ | トウガラシエキスを高配合し、即効性の温感刺激が特徴。 | 粘膜付近や眼・口周囲には使用しないこと。 |
【テープ剤】:密着性が高く、可動部への貼付に適した製品
テープ剤は薄く、関節部や動きの多い部位にしっかりフィットします。一部の成分は光線過敏症に注意が必要です。
成分 | 製品名 | 特徴・効能 | 注意点 |
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ケトプロフェン | ケトプロフェン「ラクール」 | 関節リウマチの局所鎮痛に優れる。浸透性が高い。 | 光線過敏症のリスクが非常に高い。貼付部位は、剥離後もしばらく日光に当てないよう指導が必要です。 |
ロキソプロフェン | ロキソプロフェンナトリウム「タイホウ」 | 急性腰痛症などへの即効性。 | 2025年9月販売中止 |
ロキソプロフェンNa「三友」 | 筋膜性腰痛への有効性が期待されます。 | NSAIDsアレルギー既往の確認を。 |
温感タイプの消炎鎮痛貼付剤は、血行促進効果を活かし、慢性的な疼痛管理に欠かせないツールです。各製品の成分や特徴を正しく理解し、患者様の病態やニーズに合わせて柔軟に選択することが、より質の高いケアに繋がります。