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2025年9月19日金曜日

医療用|温感タイプの消炎鎮痛貼付剤【2025年最新版】





温感タイプの消炎鎮痛貼付剤とは?

消炎鎮痛貼付剤は、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などの有効成分を皮膚から浸透させ、プロスタグランジン合成を阻害することで炎症と疼痛を抑制する局所製剤です。温感タイプはこれに加え、トウガラシエキス(カプサイシン)やdl-カンフルといった刺激成分を含有しています。これらの成分は血流を促進し、温感刺激を付与することで、特に慢性的な筋緊張や関節のこわばりに対する鎮痛効果を高めます。


温感 vs 冷感:使い分けのポイント

  • 温感タイプのメリット:血行促進作用による筋緊張の緩和。慢性的な疼痛やこわばり、リハビリテーション前のウォーミングアップに適しています。
  • 温感タイプの注意点:刺激性が強く、敏感肌の患者様には発赤やかぶれのリスクがあります。また、入浴前後30分以内の貼付は避けるよう指導が必要です。
  • 冷感タイプとの違い:冷感タイプはメントールなどの冷却成分で、急性期の炎症や腫脹(打撲直後など)の緩和に用いられます。成分が同じであれば鎮痛効果自体に大きな差はありませんが、病態に応じた温冷の使い分けが重要です。


主要成分と製品一覧:パップ剤・テープ剤別比較

温感タイプで主に用いられる有効成分は、インドメタシン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンです。以下に、製品ごとの特徴をまとめました。


【パップ剤】:柔軟性と広範囲への貼付に適した製品

パップ剤は水分を含有し、肌への刺激が比較的少ない製品です。

成分 製品名 特徴・効能 注意点
インドメタシン ラクティオンパップ プロスタグランジン合成阻害作用。肩関節周囲炎や腱鞘炎に有効。 長期使用時のモニタリングを推奨。
サリチル酸メチル / dl-カンフル / トウガラシエキス MS温シップ「タイホウ」 マイルドな温感刺激で、筋肉痛・腰痛に。 初回は小面積でのテストを推奨。
MS温シップ「タカミツ」 コストパフォーマンスに優れる。 同上。入浴後の使用を避ける。
ラクール温シップ トウガラシエキスを高配合し、即効性の温感刺激が特徴。 粘膜付近や眼・口周囲には使用しないこと。


【テープ剤】:密着性が高く、可動部への貼付に適した製品

テープ剤は薄く、関節部や動きの多い部位にしっかりフィットします。一部の成分は光線過敏症に注意が必要です。

成分 製品名 特徴・効能 注意点
ケトプロフェン ケトプロフェン「ラクール」 関節リウマチの局所鎮痛に優れる。浸透性が高い。 光線過敏症のリスクが非常に高い。貼付部位は、剥離後もしばらく日光に当てないよう指導が必要です。
ロキソプロフェン ロキソプロフェンナトリウム「タイホウ」 急性腰痛症などへの即効性。 2025年9月販売中止
ロキソプロフェンNa「三友」 筋膜性腰痛への有効性が期待されます。 NSAIDsアレルギー既往の確認を。


温感タイプの消炎鎮痛貼付剤は、血行促進効果を活かし、慢性的な疼痛管理に欠かせないツールです。各製品の成分や特徴を正しく理解し、患者様の病態やニーズに合わせて柔軟に選択することが、より質の高いケアに繋がります。


2025年9月17日水曜日

地域フォーミュラリを推進する16地域




地域フォーミュラリは、医療の質を保ちつつ医薬品の有効性・安全性・経済性を最適化する取り組みとして、日本各地で広がっています。2025年9月現在、16地域で推進されています。

政府の「経済財政運営と改革の基本方針2025」では、地域フォーミュラリの普及推進が明記されており、KPI設定を通じたさらなる拡大が期待されます。

地域フォーミュラリとは?

地域フォーミュラリは、医師会・薬剤師会・病院が連携し、科学的根拠に基づいた推奨医薬品リストを作成・運用する仕組みです。地域の医療資源を効率化し、患者の負担軽減や医療費抑制を目指します。

推進地域とフォーミュラリーリストの公開状況

地域ごとのフォーミュラリー取り組み
地域 概要 リスト公開状況 参考リンク
山形県 - 酒田地区(庄内地域) 国内初の地域フォーミュラリ事例(2018年開始)。薬局の在庫最適化や医療費抑制に成功。 非公開(医療従事者向け運用) 日本海総合病院フォーミュラリ資料
山形県 - 北庄内地区 酒田地区の成功を受け、近隣で展開。日本海ヘルスケアネットがカバー。 非公開 日本フォーミュラリ学会ガイドライン
大阪府 - 八尾市地区 地域医療連携によるフォーミュラリ推進。2020年委員会形成、2021年運用開始。 非公開(セミナーで議論あり) 広島県薬剤師会セミナー資料
茨城県 - つくば地区 研究都市ならではの医療連携で推進。2022年開始、2023年更新。 非公開 日本フォーミュラリ学会ガイドライン
北海道 - 札幌市手稲区(ていね地区) 地域医療の標準化を目指す。「ていね地域フォーミュラリ」として2023年完成。 非公開 日本フォーミュラリ学会
北海道 - 上川北部地区 広域エリアでの取り組み。上川北部医療連携推進機構が主導。 非公開 日本フォーミュラリ学会ガイドライン
広島県 - 三次市・庄原市(備北地区) 備北メディカルネットワークが中心となり推進。2023年からモデル事業。 非公開(モデル事業の振り返り資料あり) 広島県薬剤師会セミナー, 備北メディカルネットワーク
秋田県 - 潟上市・三種町地区 地域連携による医薬品適正使用。AFSSがカバー。 非公開 厚生労働省科学研究報告
宮城県 - 仙台市宮城野区 都市部でのフォーミュラリ実践。 非公開 日本フォーミュラリ学会ガイドライン
茨城県 - 古河市地区 地域医療の効率化を目的。 非公開 日本フォーミュラリ学会ガイドライン
沖縄県 - 中南地区 沖縄県全体の取り組みの一環。 非公開 沖縄県医療関連ページ
埼玉県 - 朝霞市地区 薬剤師会が主導。 非公開 日本フォーミュラリ学会ガイドライン
長野県 - 飯田市・下伊那地区 南信州地域での連携。(注: ガイドラインに明示されていないが、関連事例から補完) 非公開 飯田市HP
徳島県 - 県内複数地域(マニュアル推進基盤) 県全体でマニュアルを整備し、リスト作成を支援。災害時対応も考慮。 非公開だが、リスト作成テンプレートあり 徳島県フォーミュラリマニュアル
広島県 - 県内広域(研修推進) 県全体での研修を通じた推進。 非公開 広島県ジェネリック医薬品推進
沖縄県 - やんばる地区(北部地区) 北部地区薬剤師会が積極的に推進。スタチン系や鎮痛剤のリストを公開。 部分公開(特定領域のリストあり)。例: HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)、歯科用鎮痛剤、インフルエンザ治療薬。 北部地区薬剤師会フォーミュラリページ, スタチンリスト, 鎮痛剤リスト, インフルエンザリスト


フォーミュラリーリスト公開の現状と課題

院内フォーミュラリーの場合、多くの病院が地域の薬局向けに推奨薬リストをホームページ上で公開しているところは珍しくなくなってきました。しかし、ほとんどの地域でフォーミュラリーリストは地域の関係者のみに限定的に公開されており、公衆向けの完全公開は稀です。沖縄県やんばる地区のように、一部リストや啓発資材を公開する地域もありますが、全体としては内部運用が主流です。これは、リストが地域の医療ニーズや地域医師会へ忖度しているためと考えられます。

日本フォーミュラリ学会のモデルリスト(会員向け)が多くの地域で参考にされており、標準的なリスト作成の基盤となっています。徳島県のように、マニュアルを公開する動きは、他の地域への普及に役立つはずです。


今後の展望

地域フォーミュラリは、2025年現在も拡大中です。厚生労働省や学会の支援により、新たな地域での導入が進む可能性があります。最新情報は、各都府県の薬剤師会や公式HP、日本フォーミュラリ学会のガイドラインで確認することをおすすめします。