2016年10月11日火曜日

向精神薬の投薬期間の上限について

※2016年10月13日更新しました。(赤字部分)

向精神薬の投与上限について

基本は、14日分です。

例外的に30日分、または90日分が認められることになります。


デパス(エチゾラム)やアモバン(ゾピクロン)は向精神薬に指定されただけでは、その投与上限は14日分です。

近々、「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」が改定され30日分の処方が可能になるようですが、その時期等は不明です。

一部報道では11月1日を予定されているようです。

10月14日から10月31日までの取扱は不明です。

その、取扱について2016年10月13日「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等の一部を改正する件」として官報に告示されました。
http://kanpou.npb.go.jp/20161013/20161013h06877/pdf/20161013h068770003.pdf


あわせて、厚生労働省保険局医療課長通知が発出されました。
保医発1013第1号
平成28年10月13日


1 改正の概要について
(1) エチゾラム及びゾピクロンは、麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令の一部を改正する政令(平成28年政令第306号)により、平成28年10月14日から麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)第2条第6号に規定する向精神薬に指定されたが、掲示事項等告示を改正し、平成28年10月14日以降、掲示事項等告示第10第2号(1)ロに規定する向精神薬からは除外することとし、向精神薬に係る投薬期間の上限(投薬量又は投与量が14日分を限度とされる。)の例外として定めたものであること。

(2) エチゾラム及びゾピクロンについて、平成28年11月1日より、掲示事項等告示第10第2号(2)イに規定する投薬量が30日分を限度とされる内服薬として定めたものであること。


2 その他
エチゾラム及びゾピクロンの投薬量の制限(30日分を限度とする。)については、平成28年11月1日より適用されるものであるが、同年10月14日から同月31日までの間であっても、その投薬については、「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」(平成18年3月13日付け保医発0313003)の記の第10の4の(4)の規定を踏まえ、適切に行うこと。

例えば、10月31日処方のデパス90日分を11月に取りに来た場合どうなるのでしょうか?

薬剤師会が通知を出しています。

療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等の一部改正について(日薬業発第253号2016.10.13.)
【一部抜粋】
エチゾラム及びゾピクロンの保険診療(調剤)の取り扱いについて、投薬量が30日分を限度とされる内服薬として定められることになりました。
今回の一部改正は平成28年11月1日より適用されますが、これに伴う保険薬局における処方せんの取り扱いは以下のとおりです。
① 平成28 年10 月31 日までに交付された処方せんについては、同11 月1日以降に受け付けた場合であっても、投薬量の制限(1 回の投薬量が30日分内)は適用されない。
② ただし、向精神薬加算(調剤料)については、同10 月14 日調剤分より算定できる。



投与制限について

厚労省に問い合わせた有志がいらっしゃいます。
勝手に掲載スミマセン






関連:
デパスとアモバンが向精神薬に指定されるようです(2016年10月14日から)
https://yakuza-14.blogspot.jp/2016/08/201610.html

●投薬期間に上限が設けられている医薬品 関連規則等(2016年10月14日改訂)

投薬期間の上限について

【「保険医療機関及び保険医療養担当規則」より該当箇所一部抜粋】
(診療の具体的方針)
第 20 条 2 投薬
ヘ 投薬量は、予見することができる必要期間に従ったものでなければならないこととし、厚生労働大臣が定める 内服薬及び外用薬については当該厚生労働大臣が定める内服薬及び外用薬ごとに1回14 日分、30日分又は 90日分を限度とする。

ト 注射薬は、患者に療養上必要な事項について適切な注意及び指導を行い、厚生労働大臣の定める注射薬に限り 投与することができることとし、その投与量は、症状の経過に応じたものでなければならず、厚生労働大臣が定 めるものについては当該厚生労働大臣が定めるものごとに 1 回 14 日分、30 日分又は 90 日分を限度とする。

●投薬期間に上限が設けられている医薬品(内服薬・外用薬・注射薬)について

【「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」より該当箇所一部抜粋】
第 10 厚生労働大臣が定める注射薬等
2 投薬期間に上限が設けられている医薬品
(1) 療担規則第 20 条第 2 号ヘ及びト並びに第 21 条第 2 号ヘ並びに療担基準第 20 条第 3 号ヘ及びト並びに第 21 条 第 3 号ヘの厚生労働大臣が定める投薬量又は投与量が 14 日分を限度とされる内服薬及び外用薬並びに注射薬
イ 麻薬及び向精神薬取締法(昭和 28 年法律第 14 号)第 2 条第 1 号に規定する麻薬((2)に掲げるものを除く。) 
ロ 麻薬及び向精神薬取締法第 2 条第 6 号に規定する向精神薬((2)及び(3)に掲げるもの並びエチゾラムおよびゾピクロンを除く。) エチゾラム、ゾピクロンは10月14日追記。その後11月1日削除。
ハ 新医薬品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和 35 年法律第 145 号)第 14 条の 4 第 1 項第 1 号に規定する新医薬品をいう。)であって、使用薬剤の薬価(薬価基準)への収載の日の属する月の翌月の初日から起算して 1 年(厚生労働大臣が指定するものにあっては、厚生労働大臣が指定する期間)を経過していないもの(次に掲げるものを除く。)
略

(2) 療担規則第 20 条第 2 号ヘ及びト並びに第 21 条第 2 号ヘ並びに療担基準第 20 条第 3 号ヘ及びト並びに第 21 条 第 3 号ヘの厚生労働大臣が定める投薬量又は投与量が 30 日分を限度とされる内服薬及び外用薬並びに注射薬
イ 内服薬
アルプラゾラム、エスタゾラム、エチゾラム、オキシコドン塩酸塩、オキシコドン塩酸塩水和物、オキサゾラム、クアゼパム、クロキサゾラム、クロチアゼパム、クロルジアゼポキシド、コデインリン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩、ゾピクロン、ゾルピデム酒石酸塩、トリアゾラム、ニメタゼパム、ハロキサゾラム、プラゼパム、フルジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム塩酸塩、ブロチゾラム、ブロマゼパム、ペモリン、メダゼパム、メチルフェニデート塩酸塩、モダフィニル、モルヒネ塩酸塩、モルヒネ硫酸塩、ロフラゼプ酸エチル、ロラゼパム又はロルメタゼパムを含有する内服薬並びにクロルプロマジン・プロメタジン配合剤、メペンゾラート臭化物・フェノバルビタール配合剤及びプロキシフィリン・エフェドリン配合剤
エチゾラム、ゾピクロンは11月1日追記。 
ロ 外用薬
フェンタニル、フェンタニルクエン酸塩又はモルヒネ塩酸塩を含有する外用薬
ハ 注射薬
フェンタニルクエン酸塩、ブプレノルフィン塩酸塩又はモルヒネ塩酸塩を含有する注射薬

(3) 療担規則第 20 条第 2 号ヘ及びト並びに第 21 条第 2 号ヘ並びに療担基準第 20 条第 3 号ヘ及びト並びに第21 条第 3 号ヘの厚生労働大臣が定める投薬量が 90 日分を限度とされる内服薬
ジアゼパム、ニトラゼパム、フェノバルビタール、クロナゼパム又はクロバザムを含有する内服薬及びフェニトイン・フェノバルビタール配合剤 

●投薬期間に上限が設けられている医薬品を処方する際の留意事項について

【「「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣 が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について」より該当箇所一部抜粋】
第 10 厚生労働大臣が定める注射薬等(掲示事項等告示第 10 関係)
1~3 略
4 投薬期間に上限が設けられている医薬品
(1) 投薬量又は投与量が 14 日分を限度とされる内服薬及び外用薬並びに注射薬として、麻薬及び向精神薬取締法(昭和28 年法律第 14 号)第 2 条第 1 号に規定する麻薬等を定めたものである。
(2) 投薬量又は投与量が 30 日分を限度とされる内服薬及び外用薬並びに注射薬として、アルプラゾラム等を定めたものである。
(3) 投薬量が 90 日分を限度とされる内服薬として、ジアゼパム等を定めたものである。
(4) 投与期間に上限が設けられている麻薬又は向精神薬の処方は、薬物依存症候群の有無等、患者の病状や疾患の兆候に十分注意した上で、病状が安定し、その変化が予見できる患者に限って行うものとする。
そのほか、当該医薬品の処方に当たっては、当該患者に既に処方した医薬品の残量及び他の医療機関における同一医薬品の重複処方の有無について患者に確認し、診療録に記載するものとする。

2016年10月4日火曜日

エピサネートG配合顆粒 販売中止と代替品



エピサネートG配合顆粒が販売中止となるようです。


胃・十二指腸潰瘍、胃炎治療剤『エピサネート G 配合顆粒』販売中止のご案内(武田テバファーマ)
https://www.med.takeda-teva.com/di-net/kaitei/EPITHANATE_G_hanbaichushi20161003.pdf

2017年8月末をもって販売を終了。経過措置終了期日は2018年3月末を予定しているようです。


販売中止の理由は、有効成分ピペタナート塩酸塩の調達が困難になり供給が難しくなったためだそうです。

ピペタナート塩酸塩を成分とする薬剤には『イリコロンM錠』という、過敏性腸症候群治療薬がありましたが、こちらも同様の理由で製造を中止しました(2016年3月末薬価削除)。


エピサネートG配合顆粒は、胃の粘膜を保護する「L-グルタミン」、胃酸を中和する制酸薬の「水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物」、胃の痛みをとる抗コリン薬の「ピペタナート」の3成分を配合した胃・十二指腸潰瘍、胃炎治療剤です。
1969年1月発売し、50年近く日本人の胃を治してきました。


アスピリン誘発性の胃粘膜障害を強く抑制することが知られており、H2ブロッカーとの併用で使われていた印象です。

近年はPPIがNSAIDs潰瘍予防として使用されるようになると、その処方が減ってきた感はありました。



エピサネートG配合顆粒の代替品


エピサネートG配合顆粒と同様に、胃粘膜保護剤と制酸剤と抗コリン剤を配合した医療用医薬品はありません。

他にエピサネートG配合顆粒の同効薬として、プログルミド製剤、ピペリドレート塩酸塩製剤があります。

プログルミド製剤

プロミド錠200mg(科研製薬)
【効能・効果】
急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変(糜爛、出血、発赤、浮腫)の改善、胃潰瘍
【用法・用量】
通常成人には、プログルミドとして、1日量1.2~1.6g(6~8錠)を3~4回に分けて経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

ピペリドレート塩酸塩製剤

ダクチル錠50mg(キッセイ)
【効能・効果】
下記疾患における痙攣性疼痛
胃・十二指腸潰瘍,胃炎,腸炎,胆石症,胆のう炎,
胆道ジスキネジー
切迫流・早産における諸症状の改善
【用法・用量】
ピペリドレート塩酸塩として,通常成人1日150~200mgを3~4回に分割経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。



一般用医薬品では、『キャベジン細粒』が似たような成分の配合となっています。

<キャベジン細粒の成分>

  • メチルメチオニンスルホニウムクロリド(胃粘膜保護修復)
  • 水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物(制酸剤)
  • 酸化マグネシウム(制酸剤)
  • ロートエキス(抗コリン薬)

ほか





2016年10月3日月曜日

キノコの成分からできた抗がん剤 クレスチン細粒販売中止


抗悪性腫瘍剤のクレスチン細粒が販売中止となるようです。

クレスチン細粒販売中止のご案内(第一三共)
https://www.medicallibrary-dsc.info/announce/other/pdf-data/2016/1610stop_psk.pdf

2017年9月末日販売を中止。2018年3月末日経過措置期間満了の予定のようです。


クレスチン細粒はキノコのサルノコシカケ科かわらたけCM-101株の菌糸体より抽出・精製したたん白多糖体を成分とする抗悪性腫瘍剤です。

呉羽化学が、1965年、“さるのこしかけ”の熱水抽出物を服用した胃癌患者が日常生活に復帰した実例に着目し、キノコ類の抗腫瘍作用に関して研究を開始しました。
そこで、様々な菌株で検討を重ねた結果、サルノコシカケ科かわらたけが抗腫瘍効果、継代安定性などから最適であること、さらにその培養菌糸体にも子実体と同様の抗腫瘍効果があることを発見し、製剤化に成功しました。


販売中止の理由


メーカー文書には「諸般の事情」との決まり文句が書かれています。

実際の理由は、原材料であるカワラタケの入手が困難になったことにあるようです。
無論、カワラタケ自体はamazonでも販売されているくらいです。しかし市場への供給はされていますが、医薬品として使用可能な品質のものが、今までの価格で調達が難しくなっているようです。


クレスチン細粒の代替品


クレスチンの抗悪性腫瘍剤としての大きな特徴は、担癌宿主の低下した免疫応答を改善・回復する免疫賦活作用だと言われています。
臨床上では、
他の化学療法剤との併用により、胃癌患者、結腸・直腸癌患者の術後補助療法、及び小細胞肺癌患者において有用性が確認されています。

胃癌患者、結腸・直腸癌患者の術後補助療法については、複数の探索的試験が行われエビデンスも揃ってきました。


胃癌術後補助化学療法

ACTS-GC試験によりS-1の有効性が示され,これがわが国における標準治療となった(推奨度1)

胃癌治療ガイドライン(日本胃癌学会編)
http://www.jgca.jp/guideline/fourth/category2-e.html#H1_E

大腸癌術後補助化学療法

大腸がんの術後補助化学療法に使用される抗がん剤としては、古くから用いられているフルオロウラシル(商品名:5-FUなど)、5-FU系の飲み薬であるテガフール・ウラシル配合剤(商品名:UFT)、カペシタビン(商品名:ゼローダ)などと、2009年に補助化学療法で使用できるようになったオキサリプラチン(商品名:エルプラット)が挙げられます。

大腸癌治療ガイドライン2014年版(大腸癌研究会)
http://www.jsccr.jp/guideline/2014/particular.html#no5


小細胞肺癌

進展型小細胞肺癌では以下のレジメンが使用されます。
PI療法
シスプラチン+イリノテカン

PE療法
シスプラチン+エトポシド

CE療法
カルボプラチン+エトポシド

肺がん診療ガイドライン(日本肺癌学会)
https://www.haigan.gr.jp/modules/guideline/index.php?content_id=3


免疫賦活剤

シイタケから抽出した『レンチナン』。
溶連菌という細菌の死菌製剤である『ピシバニール』
ベスタチンという、白血病に使えるキノコ製剤もあります。
これらは免疫賦活による延命効果を期待する「抗癌剤」として収載されています。





クレスチンの過去


このクレスチン「効かない薬」として避難された過去があります。

現在のがん治療の功罪~抗がん剤治療と免疫治療
http://umezawa.blog44.fc2.com/blog-entry-62.html

このクスリも、本当に効きません。
まったく効きません。
私はかつて相当数の患者さんに使ってきましたが、効きませんでした。
(中略)
腫瘍の縮小効果はまったく認められませんでしたが、増大抑制効果は確実に存在すると思われます。
副作用のない増大抑制効果は、その抑制されている期間だけは確実に延命できているものと考えられます。

クレスチン - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%B3

1977年の販売開始後、単独でかなり多く使われた時期があった。 しかし、現在では本剤単独では効果がないことが判明しており、他剤との併用で用いられる。

伝説の抗がん剤トップ製品クレスチン(Lymphocyte-bank Co.,Ltd)
http://ank-therapy.net/archives/590391.html

世界中で承認しているのは、日本だけである、というのも非難の理由の一つでした。 日本の英断で、素晴らしい薬を認めている、のであれば、堂々と誇りに思っていいのですが、なにせ、この薬、中身は、サルノコシカケの一種です。 キノコ、なのです。 
(中略)
まあ、所詮、キノコです。 それで、がんが治る、ということはないでしょう。 

がん補完代替医療としてのクレスチン


最近は、分子標的薬の登場など抗がん剤も進化しており、クレスチンの使用は減ってきました。
最近では、クレスチンは副作用がほとんどない点から、「副作用が軽微で、自宅で内服するだけで延命が得られる」非常に有効な、「良く効くクスリ」として、がん補完代替医療として利用されているようです。

しかし、乳がんにおける化学療法とクレスチンの併用療法に有効性は認められていません。

Yokoe T, et al,.Anticancer Res. 1997 Jul-Aug;17(4A):2815-8.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9252721
Iino Y,et al,.Anticancer Res. 1995 Nov-Dec;15(6B):2907-11.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8669887
Toi M,et al,.Cancer. 1992 Nov 15;70(10):2475-83
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1423177

食道がんにおいても生存期間に差はありません。

Ogoshi K,et al.,Am J Clin Oncol. 1995 Jun;18(3):216-22
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7747709

さらに成人急性非リンパ性白血病の維持化学療法へのクレスチン併用療法で寛解期間、生存期間ともに延長は認められていません。

Ohno R,et al.,Cancer Immunol Immunother. 1984;18(3):149-54.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6391658


このように、その効果に対するエビデンスは乏しいのが現状です。



2016年10月2日日曜日

日本初、降圧3成分を含有した配合剤 ミカトリオ配合錠



ミカトリオ配合錠は、テルミサルタン、アムロジピンベシル酸塩及びヒドロクロロチアジドという作用機序の異なる3種類の有効成分を含有している日本初の降圧薬です。


各成分の作用機序


テルミサルタン(ミカルディス)は、ドイツで合成されたアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)です。
テルミサルタンは、アンジオテンシンⅡタイプ 1(AT1)受容体に選択的に結合し、アンジオテンシンⅡの生成経路に影響を与えることなく AT1 受容体を介した血管収縮及びナトリウム貯留ホルモンであるアルドステロンの遊離を抑制し、降圧作用を発現します。

高血圧症患者に対してテルミサルタンの降圧効果は 24 時間以上持続することが国内外の臨床試験から確認されています。


アムロジピンベシル酸塩(ノルバスク、アムロジン)は、作用時間の持続を目的として開発されたジヒドロピリジン系カルシウム(Ca)拮抗薬です。
ジヒドロピリジン受容体と高い親和性を示します。
作用の発現は緩やかかつ持続的であり、1 日 1 回の投与により 24 時間にわたり降圧効果を示すことが明らかにされています。


ヒドロクロロチアジドは、チアジド系の利尿薬として1959年から販売されている歴史の長い薬です。
その作用機序は、腎でのナトリウムの再吸収を抑制し、体内のナトリウムと水
分の排泄を促進することです。
その結果、循環血液量が減少し、長期的には末梢血管抵抗が低下し、降圧作用を示すと考えられています。


ミカトリオ配合錠は患者アドヒアランスを向上させるのか


日本では、テルミサルタンを含有する配合剤として、ミコンビ配合錠(テルミサルタン/ヒドロクロロチアジド配合錠)とミカムロ配合錠(テルミサルタン/アムロジピンベシル酸塩配合錠)が発売されています。

降圧薬の併用療法について、高血圧治療ガイドライン 2014 では、2 剤の併用として ARB と Ca 拮抗薬又は利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)と Ca 拮抗薬又は利尿薬、あるいは Ca 拮抗薬と利尿薬を推奨しています。
また、2 剤で十分な降圧が得られない場合、ARB あるいは ACE 阻害薬と Ca拮抗薬、利尿薬の3種類の薬剤の併用を推奨しています。

併用療法が推奨されている一方で、服薬錠数が増えることで患者のアドヒアランスが低下し、血圧コントロール不良とともに心血管病の発生が増加することが報告されています。
この点が現在の高血圧症治療の問題点となっています。


そこで、3つの薬を1つにしてしまえば、患者さんもの服薬も楽になるのではと考えられ開発されたのが『ミカトリオ配合錠』です。


錠剤が大きいけれど


ミカルディス錠80mgも大きさが1cmくらいあって、でかくて飲みづらいイメージがありますが、3つの成分をまとめているだけあります。
更にでかくなっています。

直径:11mm
厚さ:約4.9mm
重さ:約0.49g


ただ、ミコンビBPと直径が同じ、ミカムロBPとは直径・厚さが同じです。
これらが服用できている人に切り替えて使うものですから、飲みにくいとは思いますが、問題ない範囲でしょう。


使いにくそう


ミカトリオ配合錠は2成分で十分な効果が得られていない場合の選択肢という位置付けですが、厚労省の新薬審議会で「3成分を配合する意義をもっと調べた方がよい」などとする意見が出て、一度承認が見送られたことがあります。

ガイドラインでは血圧コントロール不良の患者さんには3種類の薬剤の併用を推奨していますが、実臨床の治療では薬剤を増やすこともあれば、減らすこともあります。例えば、冬場は血圧が上がりやすいので3剤併用を行なうが、暖かくなってくると2剤併用に減らしていくといった、いわゆる、さじ加減でコントロールされているものです。3成分配合剤を飲み始めてしまうと、なかなか減らしにくくなってしまう懸念があります。

ともあれ、安易に切り替えるべき薬ではないようです。

【2016年12月追記】
平成28年12月26日厚生労働省保険局医療課長通知「ミカトリオ配合錠の保険適用に係る留意事項について」が発出されました。
概要は以下のとおりです。


  1. ミカトリオ配合錠については、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課において適正使用の指針が定められ、今般、別添のとおり連絡されているところであるので、使用に当たっては十分留意すること。
  2. 原則として、テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg及びヒドロクロロチアジド12.5mgを8週間以上、同一用法・用量で継続して併用し、安定した血圧コントロールが得られている場合に、本製剤への切り替えを検討すること。
  3. 本製剤への切り替えに当たっては、次の事項を切り替えた月の診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
    (1) テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg及びヒドロクロロチアジド12.5mgの併用療法として使用していた品名及び使用期間
    (2) テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg及びヒドロクロロチアジド12.5mgの併用療法における血圧コントロールの状況及び安定した血圧コントロールが得られていると判断した際に参照した血圧測定値及び当該血圧測定の実施年月日
  4. 本製剤の継続使用に当たっては、本製剤へ切り替えた月の翌月以降の診療報酬明細書の摘要欄に、本製剤へ切り替えた診療年月を記載すること。

以上は平成29年1月1日から適用されます。


ミカトリオ配合錠

[効能・効果]
高血圧症

過度な血圧低下のおそれ等があり、本剤を高血圧治療の第一選択薬としないこと。

[用法・用量]
成人には1日1回1錠(テルミサルタン/アムロジピン/ヒドロクロロチアジドとして80mg/5mg/12.5mg)を経口投与する。
本剤は高血圧治療の第一選択薬として用いない。

原則として、テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg及びヒドロクロロチアジド12.5mgを一定の期間、同一用法・用量で継続して併用し、安定した血圧コントロールが得られている場合に、本剤への切り替えを検討すること。

事務連絡
平成28年11月25日
厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課

ミカトリオ配合錠の適正な使用について

【はじめに】
ミカトリオ配合錠は、テルミサルタン 80mg、アムロジピン 5mg 及びヒドロクロロチアジド 12.5mg の配合剤であり、本邦で初めて承認された 3剤配合降圧薬である。
降圧目標を達成するためには、多くの場合 2、3 剤の降圧薬併用が必要となる。異なる機序の降圧薬の併用は、お互いの降圧効果を増強しあうことにより降圧効果が大きくなり、降圧目標を達成するために有用である。さらに、配合剤に期待される利点は、服用錠数の減少による服薬アドヒアランスの改善と維持である。服薬アドヒアランスは血圧コントロールの良否とともに心血管病の発
症・予後に関係することが報告されており、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン 2014 においても、その重要性が示されている。
その一方で、配合剤は用量が固定されており、初期投与により過剰な血圧低下の恐れがある、投薬の調整をすることが難しい、副作用が生じた際に原因となる薬剤の特定が困難である等の懸念点がある。そこで、本剤が臨床現場で安全に適正に使用されることを目的とし、本邦における適正使用の指針として本ガイドラインを策定した。
なお、本ガイドラインは、厚生労働省の依頼により、一般社団法人日本循環器学会及び特定非営利活動法人日本高血圧学会(50 音順)の協力のもとに策定された。

【目的】
本ガイドラインは、医師(特に、一般臨床医)、薬剤師などの医療従事者に対し、3 剤配合降圧薬であるミカトリオ配合錠に関する情報提供を行うとともに、本剤の適正で効果的な使用を促すことを目的とする。

【ミカトリオ配合錠について】
ミカトリオ配合錠は、テルミサルタン 80mg、アムロジピン 5mg 及びヒドロクロロチアジド 12.5mg の配合剤である。本剤の配合成分であるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、カルシウム拮抗薬(Ca 拮抗薬)および利尿薬の組み合わせは、2 剤併用で降圧目標が達成されない、コントロール不良高血圧患者に用いられる併用成分として国内外のガイドラインで推奨されている組み合わせの一つである。
本剤の配合成分の特徴として、テルミサルタンは、アンジオテンシンⅡタイプ 1(AT1)受容体に選択的に結合し、アンジオテンシンⅡの生成経路に影響を与えることなく AT1 受容体を介した血管収縮及びナトリウム貯留ホルモンであるアルドステロンの分泌を抑制し、降圧作用を発現する。アムロジピンは、作用時間の持続を目的として開発された Ca 拮抗薬で、ジヒドロピリジン受容体と高い親和性を示し,細胞内へのカルシウムの流入を減少させることにより,末梢血管の平滑筋を弛緩させることで降圧作用を発現する。ヒドロクロロチアジドは、腎でのナトリウムの再吸収を抑制し、体内のナトリウムと水分の排泄を促進することで循環血漿量を減少させ、長期的には末梢血管抵抗が低下し、降圧作用を示すと考えられている。


【適正な使用について】
-添付文書より抜粋-
【効能・効果】
高血圧症
<効能・効果に関連する使用上の注意>
過度な血圧低下のおそれ等があり、本剤を高血圧治療の第一選択薬としないこ
と。
【用法・用量】
成人には1日1回1錠(テルミサルタン/アムロジピン/ヒドロクロロチアジドとして 80mg/5mg/12.5mg)を経口投与する。本剤は高血圧治療の第一選択薬として用いない。

<用法・用量に関連する使用上の注意>
原則として、テルミサルタン 80mg、アムロジピン 5mg 及びヒドロクロロチアジド 12.5mg を一定の期間、同一用法・用量で継続して併用し、安定した血圧コントロールが得られている場合に、本剤への切り替えを検討すること。

原則として、以下の併用療法を「8 週間以上」継続して有効性と安全性の観点から継続が妥当と主治医が判断した場合に、本剤への切り替えを検討する:
①テルミサルタン 80mg、アムロジピン 5mg 及びヒドロクロロチアジド 12.5mg の単剤併用、
②テルミサルタン 80mg/アムロジピン 5mg 配合剤とヒドロクロロチアジド 12.5mg の併用、
③テルミサルタン 80mg/ヒドロクロロチアジド 12.5mg配合剤とアムロジピン 5mg の併用。
高血圧治療において、配合剤は第一選択薬とはならない。まずは単剤、2剤の併用から治療を開始し、原則として、本配合剤の同一用法・用量(降圧薬単剤の併用や 2 剤配合剤の併用)の組み合わせにより安定した血圧コントロールが得られている場合に本剤へ切り替える。

本剤に変更後に、副作用の出現や過降圧等が見られた場合には速やかに中止して、変更前の治療薬に戻したり、その際に一部の成分を減量したり、他の薬剤による降圧療法に変更したりするなど、適切な高血圧管理を行うこと。
本剤の使用時には、降圧効果の判定や過降圧の早期発見などに朝夕の家庭血圧による評価が有用である。また、過降圧に関連して、過度の発汗、嘔吐、下痢などによる脱水がみられた場合等の注意点(血圧測定、服薬中止、速やかな医療機関の受診)を十分に情報提供することが重要である。

<補足:適切な高血圧管理>
高血圧治療における降圧目標は 140/90mmHg 未満とする。ただし、糖尿病や蛋白尿陽性の慢性腎臓病では降圧目標は 130/ 80mmHg 未満とする。後期高齢者は 150/90mmHg 未満を降圧目標とし、忍容性があれば140/90mmHg 未満を目指す。

降圧薬治療は、Ca 拮抗薬、ARB/ACE 阻害薬、少量利尿薬、β 遮断薬を主要降圧薬とし、積極的な適応や禁忌もしくは慎重使用となる病態や合併症の有無に応じて適切な降圧薬を選択する。積極的な適応がない場合の高血圧に対しては、最初に投与する降圧薬は第一選択薬となる Ca 拮抗薬、ARB、ACE 阻害薬、利尿薬の中から選択する。異なる種類の降圧薬の併用は、降圧効果が大きく降圧目標を達成するために有用である。

血圧の日内変動や季節変動の異常、仮面高血圧、血圧の不安定性(動揺性)には降圧薬の薬効や作用時間、生活習慣、精神的ストレス、高度の動脈硬化など様々な原因がある。その詳細と対策は日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン 2014 を参照にされたい。

本剤のような Ca 拮抗薬、ARB/ACE 阻害薬および利尿薬の 3 成分(配合剤、併用療法を問わない)により降圧目標に達しない治療抵抗性の高血圧患者の管理においては、高血圧患者の診療に必要な総合的な知識と技量を有する医師への紹介が推奨される。

アモキシシリン1回2000mgも投与する理由


とある基幹病院の循環器内科からの処方

アモキシシリンカプセル250mg 8カプセル
(歯科治療1時間前に服用) 5回分


通常のアモキシシリンの使い方(ヘリコバクター・ピロリ感染症を除く感染症)は以下のとおりです。


成人:アモキシシリン水和物として、通常1回250mg(力価)を1日3~4回経口投与する。


上記の処方は、明らかに通常用量を超えた過量投与です。


では、これは処方ミスかというと、そうではありません。
この謎を解く鍵は『循環器内科からの処方』と『歯科治療1時間前に服用』です。



感染性心内膜炎という病気をご存知でしょうか。


感染性心内膜炎は、心臓の内側を覆う内膜(心内膜)に細菌の病巣ができて炎症を起こす敗血症のひとつで、早期診断と適切な治療が重要です。
本来、心内膜はなめらかでつるつるしていますが、心臓病のある人や心臓の手術後などでは、心臓内の異常な血液の流れによって、心内膜に細かい傷ができることがあります。そこに血小板などが付着し、たまたま血液に入り込んだ細菌が付着して増殖すると、いぼ状の感染巣―疣腫(ゆうしゅ)をつくります。
血液中に細菌が入り込む原因は、抜歯など歯科治療や虫歯から口腔内の常在菌が侵入する場合や、泌尿器科や産婦人科の手術の際に侵入する場合などが考えられます。通常は細菌が血液内に侵入しても、白血球が働いて退治してくれますが、一時的に心臓に入り込んだ菌が、心内膜に傷があるとそこに付着し増殖して心内膜炎が発症するのです。

日本心臓財団
http://www.jhf.or.jp/heartnews/vol47.html


先天性心疾患がある、人工弁置換をされている方やペースメーカーを埋め込んでいる、心内膜炎リスクが高い患者さんは菌血症を誘発しうる歯科の手技・
処置を実施する場合には,抗菌薬の予防投与が推奨されています。

米国のガイドラインではアモキシシリンが消化管からの吸収が良く、より高い血中濃度が達成され、より長く維持されることから、アモキシシリンの単回経口投与が標準的予防法として推奨されています。

成人用量はアモキシシリン2.0 g
(小児用量は50 mg/kgで成人用量を超えない用量)
を処置予定の一時間前に投与する。

López-Cedrún J L, Pijoan J I, Fernández S, Santamaria J, Hernandez G: Efficacy of amoxicillin treatment in preventing postoperative complications in patients undergoing third molar surgery: a prospective, randomized,double-blind controlled study. J Oral Maxillofac Surg 2011; 69: e5-14
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21470751

また、日本化学療法学会ガイドラインでは、アモキシシリン大量投与による下痢の可能性、およびアンピシリン2g点滴静注とアモキシシリン500 mg経口投与で抜歯後の血液培養陽性率がともに約20%程度で大差なかった、という論文を踏まえて、リスクの少ない患者に対しては、アモキシシリン500mg経口投与を提唱しています。

術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン
http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/jyutsugo_shiyou_jissen.pdf


ペニシリンアレルギーでアモキシシリンが使えない場合


ペニシリン(アモキシシリン、アンピシリン、ペニシリンなど)にアレルギーのある患者には別の経口抗菌薬を使用します。

クリンダマイシン
成人:600 mgを処置1時間前に経口投与
小児:20 mg/kgを処置1時間前に経口投与

セファレキシンあるいはセファドロキシル
成人:2.0 gを処置1時間前に経口投与
小児:50 mg/kgを処置1時間前に経口投与

アジスロマイシンあるいはクラリスロマイシン
成人:500 mgを処置1時間前に経口投与
小児:15 mg/kgを処置1時間前に経口投与



術前のアモキシシリン大量投与は感染性心内膜炎予防に効果があるのか?


イギリスでは2008年のガイドラインで、感染性心内膜炎の予防抗菌薬を完全に中止する勧告を出したことがあります。

その結果イギリスでは、この勧告以降、予防抗菌薬の投与は減少しました。しかし、感染性心内膜炎の発生率は、有意に増加していたことが、後ろ向き研究の結果で示されました。

因果関係は明確ではありませんが、感染性心内膜炎の発生率は、ハイリスクの患者さんでもローリスクの患者さんでも、有意に増加していました。

Dayer MJ, et al. Lancet. 2015 Mar 28;385(9974):1219-28.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21470751


術前のアモキシシリン大量投与は感染性心内膜炎予防は可能性の域は出ませんがある程度効果はあるのではないかと考えられます。

ただし、予防抗菌薬そのもののリスクも常に同時に考慮して適切に使用したいものです。


術前薬は病院でもらうものです。


手術や検査にかかわる薬剤は、院外処方せんによる供給にはなじみません。
それは、医療機関の請求において、「投薬」ではなく「手術」や「検査」の項目に記載されるものであり、処方料も調剤料も算定することはできないとされているからです。
従って、手術前・検査前の薬のみが記載された院外処方せんを発行した場合、医療機関では処方せん料を算定することはできません。
また、これを受けた薬局は、調剤基本料や薬剤服用歴管理指導料等を算定することは出来ず、薬剤料のみ請求せざるを得ません。

2016年9月30日金曜日

肝細胞がんマーカー  PIVKA-Ⅱに影響を及ぼす薬剤

PIVKA-Ⅱは肝臓がんの腫瘍マーカとして知られています。

肝臓では血液を固める素となる物質である血液凝固第Ⅱ因子というタンパク質を作り出しています。
血液凝固第Ⅱ因子の生成にはビタミンKが大きく関与しています。

PIVKA-Ⅱは、血液凝固第Ⅱ因子(プロトロンビン)の肝における生合成不全に由来する異常蛋白です。
ビタミンK不足やビタミンK機能不全によって創りだされる「できそこない凝固第二因子」といえます。

肝臓がんや肝機能障害ではうまく凝固第二因子を作り出せず、PIVKA-Ⅱがたくさん作られます。


ワーファリンはPIVKA-Ⅱを上昇させる


PIVKA-Ⅱに影響を及ぼす薬剤としてワーファリンが知られています。
ワーファリンはプロトロンビンの生成に必要なビタミンKの働きを阻害することによって抗凝血作用を現します。

この、ビタミンKの働きが阻害されることで、PIVKA-Ⅱが増加してしまいます。もちろんこれは肝がんの存在を意味する訳ではありません。


ワーファリンを服用している方は、検査前に服用している旨を伝えるようにしましょう。


NOACとPIVKA-Ⅱの影響


では、ワーファリンと同様に血液抗凝固薬として知られるNOACはPIVKA-Ⅱに影響を及ぼすのでしょうか。

こたえは、NOACの影響は報告されていません。

これはビタミンKの産生・代謝に影響を及ぼさないので、当然といえば当然です。


PIVKA-Ⅱに影響を及ぼす薬剤


では、他にPIVKA-Ⅱに影響を及ぼす薬剤はあるのでしょうか。

プロトロンビンの合成に必要なビタミンKの低下を引き起こす薬剤がPIVKA-Ⅱの値を増やす可能性があります。

ビタミンK低下を起こす可能性のある代表例は以下のとおりです。

セフェム系抗菌薬
ある種の腸内細菌は小腸内でビタミンKを産生しています。その産生されたビタミンKをヒトは利用しています。
しかし、抗菌薬を投与すると腸内細菌が減少してしまいビタミンKが低下してしまいます。

イソニアジド
イソニアジドは、ビタミンKエポキシド還元酵素を阻害することでビタミンKの再利用が障害されビタミンKが低下すると考えられています。


その他薬剤として添付文書の副作用欄にPIVKA-Ⅱ上昇の記載があるものは以下のとおりです。

  • リバビリン
  • ペグイントロン皮下注



ネシーナとメトホルミンの配合剤 イニシンク配合錠

イニシンク配合錠は、DPP-4阻害薬であるアログリプチン(ネシーナ錠25mg)とビグアナイド系薬剤であるメトホルミン塩酸塩500mgとの配合剤です。

DPP-4阻害薬とメトホルミンの配合剤の中では、エクメット配合錠に次いで2番めの登場です。

1日1回タイプでは日本初です。


ネシーナは、グルコースなどの栄養素の摂取に伴い消化管から血中に分泌されるインクレチンの分解酵素であるDPP-4 を阻害することにより、内因性イングレチンの濃度を高めることで血糖依存性にインスリン分泌を促進させ血糖降下作用を示します。

さらに、グルカゴンの分泌を抑制し血糖降下作用を示します。

一方、メトホルミン塩酸塩は、肝の糖産生及び消化管からの糖吸収を抑制し、末梢組織のインスリン感受性及びグルコース消費を増加させインスリン抵抗性を改善することによって血糖降下作用を示します。


このように、イニシンク配合剤は異なる作用機序を有する成分を含んでいます。

イニシンク配合剤を用いることでインスリン分泌不全とインスリン抵抗性の両要因を改善することが可能となります。


また、ネシーナとメトホルミン塩酸塩併用時には両剤が相加的に血中 GLP-1 濃度を上げる作用があると考えられ、これらの薬剤での併用療法は各薬剤の単独療法を上回る血糖降下作用が期待できます。

ネシーナの GLP-1 を介したインスリン分泌促進作用は血糖依存性であることと、メトホルミン塩酸塩の血糖改善効果はインスリン分泌促進を介さないことから、これら薬剤の併用は低血糖の発現リスクが低い組合せと考えられます。

なお、アメリカでは「KAZANO」という名称で2013年から販売されています。



配合剤による患者さんのメリット


2型糖尿病患者の薬物療法では、アドヒアランスの向上が血糖コントロール改善の要因の一つとなることが報告されています。
Schernthaner G,Fixed-dose combination therapies in the management of hyperglycaemia in Type 2 diabetes: an opportunity to improve adherence and patient care. Diabet Med, 2010; 27(7): 739-43
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20636953

Guillausseau PJ,Influence of oral antidiabetic drugs compliance on metabolic control in type 2 diabetes. A survey in general practice. Diabetes Metab, 2003; 29(1): 79-81
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12629452

アドヒアランスを低下させる要因としては、単独療法から併用療法に移行する際の薬剤の種類と錠数の増加及び投与回数の増加が挙げられます。
Thayer S, et al.,Adherence to a fixed-dose combination of rosiglitazone/glimepiride in subjects switching from monotherapy or dual therapy with a thiazolidinedione and/or a sulfonylurea. Ann Pharmacother, 2010; 44(5): 791-9
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20371759

Dailey G, et al.,Patient compliance and persistence with antihyperglycemic drug regimens: evaluation of a medicaid patient population with type 2 diabetes mellitus. Clin Ther, 2001; 23(8): 1311-20
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11558867

Hutchins V, et al.,A systematic review of adherence, treatment satisfaction and costs, in fixed-dose combination regimens in type 2 diabetes. Curr Med Res Opin,2011; 27(6): 1157-68
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21466277


イニシンク配合剤の使用により、薬剤の種類及び錠数の増加を回避することができます。


治療効果とアドヒアランスを併用療法と配合剤との間で比較したメタアナリシスでは、併用療法の患者よりも配合剤治療の患者で HbA1c は低く、また、前治療の内容(単独療法又は併用療法)に関わらず併用療法の患者よりも配合剤治療の患者でアドヒアランスは有意に高かったという結果でした。
Han S, et al.,Glycemic effectiveness and medication adherence with fixed-dose combination or coadministered dual therapy of antihyperglycemic regimens: a meta-analysis. Curr Med Res Opin, 2012; 28(6): 969-77
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22494018

また、DPP-4阻害薬とメトホルミンの配合剤治療を受けている患者の方が、それぞれの単剤で併用療法を受けている患者よりも血糖コントロールが良好で、治療満足度が高いという調査報告もあります。
Benford M, et al.,Fixed-dose combination antidiabetic therapy: real-world factors associated with prescribing choices and relationship with patient satisfaction and compliance. Adv Ther, 2012; 29(1): 26-40
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22246944



オルメテックとイニシンク配合錠の一包化

オルメテックとメトホルミンを一包化すると変色することが知られています。

イニシンク配合錠とオルメサルタン メドキソミル製剤等との一包化においても、一包化して高温高湿度条件下にて保存した場合、変色することがあるそうです。

(同じDPP4阻害薬とメトホルミンの配合剤であるエクメット配合錠とオルメテックは一包化しても色調変化はみられません)


参考:
メトホルミンを変色させるのはオルメサルタンだけではなかった
https://yakuza-14.blogspot.jp/2016/09/blog-post_12.html



イニシンク配合錠

[効能・効果]
2 型糖尿病
ただし、アログリプチン安息香酸塩及びメトホルミン塩酸塩の併用による治療が適切と判断される場合に限る。

[用法・用量]
通常、成人には 1 日 1 回 1 錠(アログリプチン/メトホルミン塩酸塩として25㎎/500㎎)を食直前又は食後に経口投与する。

2016年9月28日水曜日

ミケランLA2%とキサラタンの配合剤 ミケルナ配合点眼液


ミケルナ配合点眼液は、緑内障・高眼圧症治療薬のβ遮断薬カルテオロール(ミケランLA)とプロスタグランジン関連薬ラタノプロスト(キサラタン)の配合点眼液です。

緑内障・高眼圧症治療の新配合点眼液
「ミケルナ®配合点眼液」の国内製造販売承認を取得(2016年9月28日)
http://www.otsuka.co.jp/company/release/detail.php?id=3159&date=2016-09-28


複数の有効成分を配合した点眼剤として緑内障・高眼圧治療薬の領域では、ザラカム(チモロール/ラタノプロスト)、タプコム(チモロール/タフルプロスト)、デュオトラバ(チモロール/トラボプロスト)コソプト(チモロール/ドルゾラミド)、アゾルガ(チモロール/ブリンゾラミド)次ぐ6番手。

β遮断薬とプロスタグランジン関連薬の組み合わせでは4番手です。

他の配合剤はβ遮断薬がチモロール(チモプトール)なのに対しミケルナはカルテオロールを配合しているのが特徴です。


緑内障の治療

緑内障は視神経乳頭と視野に特徴的変化を有し、通常眼圧を十分に下降させることにより視神経障害の改善あるいは進行を阻止し得る、眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患と定義されます。

厚生労働省研究班の調査によると、緑内障は日本における失明原因の第1位を占めていて、2000~2002年に行われた日本緑内障学会の疫学調査(多治見スタディ)では、40歳以上の日本人における緑内障有病率は、5.0%でした。

現在、緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧を下降することです。
健常者においても加齢に伴って視神経の細胞は減少することが知られていますが、緑内障患者では、眼圧を下降させることで細胞の減少を健常者に、より近いレベルに抑えて、視野障害の進行を抑制して生涯にわたって視機能を維持することが治療の目的となります。

眼圧は房水の産生と流失のバランスにより決定されます。房水は毛様体で産生され眼内を循環した後、眼外に排出されます。
房水流出には2つの経路があることが知られています。
1つは主経路(経線維柱帯経路)で線維柱帯からシュレム管、集合管を通って上強膜静脈へ排出される経路です。
もう一方は、副経路(経ぶどう膜強膜経路)と呼ばれ、虹彩根部から毛様体筋・毛様体上腔へと至る経路です。

緑内障治療薬は基本眼圧を低下させる薬剤であり、
主経路からの房水流出を促進
副経路からの房水流出を促進
房水産生を抑制させ、眼圧を下降させます。

1剤だけで長期間眼圧をコントロールすることには限界があり、しばしば2剤が併用されることがあります。
その際、2剤を続けて点眼すると涙嚢から薬液があふれ出してしまうため、点眼間隔を5分間以上空けるように指導するのが一般的です。
けれども、この5分間の待ち時間が原因で2剤目の点眼を忘れてしまい、コンプライアンス低下を招く場合がありました。


ミケルナ配合点眼液の特徴

世界で初めて1日1回製剤同士を配合した点眼液で、1日1回点眼で優れた眼圧下降効果を示します

眼圧下降効果は、ミケランLA点眼液2%単剤及びラタノプロスト点眼液単剤に対する優越性が検証されています。

眼圧下降効果は、ミケランLA点眼液2%及びラタノプロスト点眼液の併用と同程度でした。


房水産生抑制と房水流出促進の2つの作用を有しています。また、眼底血流増加作用も示すのが特徴です

β受容体を遮断することにより、房水の産生が抑制されます。なお、房水の産生は交感神経が活発な日中に増加する傾向があります。また、カルテオロールについては他のβ遮断薬とは異なり薬効に眼底血流増加作用をもっています。

生体内で、房水排出を促進する作用を持つプロスタグランジン(PG)F2と類似する作用を持ち、経ぶどう膜強膜房水流出の増加を促します。1回の点眼で24時間持続する眼圧下降が得られ、強力な眼圧下降点眼薬です。第一選択薬としてよく用いられます。




保存剤のベンザルコニウム塩化物を含まず、室温保存が可能です

防腐剤にはベンザルコニウム塩化物(BAK)ではなくホウ酸を使用しています。
緑内障患者は、眼表面の問題が多いといわれています。その要因の1つに長期にわたる点眼薬に含まれるBAKの影響が考えられています。

長期保存試験において25℃ 40%RH未開封で18ヶ月安定であったというデータがあります。
ちなみに、キサラタンは冷所(2~8℃)保存です。


副作用の概要

重大な副作用として喘息発作、失神、房室ブロック、洞不全症候群、洞停止等の徐脈性不整脈、うっ血性心不全、冠攣縮性狭心症、虹彩色素沈着の報告があります。


第一選択薬ではありません


原則として、単剤での治療を優先すること。
緑内障診療ガイドラインでは、配合点眼液の位置づけ及び意義について、それぞれ「薬物治療は眼圧下降点眼薬の単剤療法から開始し、有効性が確認されない場合には他剤に変更し、有効性が十分でない場合には多剤併用(配合点眼薬を含む)を行う。」及び「原則として配合点眼薬は多剤併用時のアドヒアランス向上が主目的であり、第一選択薬ではない。」と述べています。


1日にたくさん点眼しても効果はあがりません


ラタノプロストの海外の臨床試験において、1日2回点眼した場合、点眼日数の増加に伴って眼圧下降作用の減弱がみられたとの報告があります。
頻回投与により眼圧下降作用が減弱する可能性があるので、1日1回を超えて投与しないこと。


他の点眼剤を併用する場合には、10 分間の間隔をあけてミケルナは最後に点眼
ミケランLAと同じです。
眼表面でのカルテオロール塩酸塩の滞留性向上及び持続性発揮のためアルギン酸が添加されています。そのため、他の点眼剤との併用時には、他の点眼剤の吸収性に、あるいは他剤がミケルナの持続性に影響を及ぼす可能性があります。



ミケルナ配合点眼液

[効能・効果]
緑内障、高眼圧症

[用法・用量]
1 回 1 滴、1 日 1 回点眼する。


2016年9月20日火曜日

ご存知ですか?セルフメディケーション税制




セルフメディケーション税制
対象者:
特定健康診査、予防接種、定期健康診断、がん検診を受け、対象となるスイッチOTC医薬品を購入した人

対象額:
1年間(1月1日~12月31日)に購入した、対象となるスイッチOTC医薬品の合計金額が1万2000円を超えるとき、その超えた部分の金額
(上限額:8万8000円、生計を一にしている家族分も含む)

期間:
2017年1月1日~2021年12月31日

共通識別マーク:


所得税法等の一部を改正する法律が2016年3月31日に公布され、従来の医療費控除制度の特例としての「セルフメディケーション税制」が創設されました。


セルフメディケーション税制とは


『セルフメディケーション税制』は、医療費控除の特例のことです。
一定の要件を満たすと、スイッチOTC医薬品を購入した費用について所得控除が受けられる制度です。

必要な要件は、健康の維持増進と疾病予防に係る取り組みを行うことです。
具体的には特定健康診査・特定保健指導、健康診査、がん検診などを受けていることです。
そのうえで、本人または生計をともにする配偶者・親族が購入したスイッチOTC医薬品の総額が年間1万2000円を超えると、その超える分の金額が、その年の総所得金額等から控除されます。
上限額は8万8000円です。

対象となる購入の期間は、2017年1月1日から2021年12月31日までの間とされています。

『セルフメディケーション税制』の正式名称は「特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例」です。

この制度の趣旨は、健康増進や疾病予防、いわゆるセルフメディケーションに気を配っており、医療用医薬品と代替性の高い一般用医薬品を購入した人に税制面でメリットが得られるようにするものです。


対象となるOTC医薬品


対象は、要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用されてたスイッチOTC医薬品です。類似の医療用医薬品が医療保険給付の対象外となるものを除きます。

厚生労働省のホームページに内に「セルフメディケーション税制対象品目の公表について」というページがあります。
そこには、対象品目のリストが販売名で50音順に示されています。
また、成分名と製造販売業者もわかるようになっています。
リストは必要に応じ2ヶ月おきに更新される予定になっています。


セルフメディケーション税制対象品目の公表について(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html


セルフメディケーション税制対象製品のパッケージには共通識別マークが表示されるようになります。

http://www.jfsmi.jp/pdf/20160617_1.pdf



どのくらい減税効果があるのか?


実際の減税効果は図のとおりです。
それほど、得をするものではありません。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000124845.pdf

注)1万2000円を超えたものすべての金額が戻ってくるのではありません。
課税所得から控除されます。


従来の医療費控除とのちがい


従来の医療費控除の適用を受けると、セルフメディケーション税制の適用は受けることができません。
どちらかを選択する仕組みとなっています。
従来からの医療費控除は、スイッチOTC医薬品の購入費用のみならず医療機関での支払いも対象になっています。それらの合計負担金額が年間10万円を超えないと控除は適用になりません。


従来の医療費控除とセルフメディケーション税制の比較


レシート等において記載すべき事項について

平成28年10月4日、レシート等において記載すべき事項について厚生労働省から事務連絡が出されました。

事務連絡
平成 28 年 10 月4日
各 位
厚生労働省医政局経済課

セルフメディケーション税制の適用を受ける際に必要となる
証明書類(レシート等)の記載事項について

平成 29 年1月1日よりセルフメディケーション税制の運用が始まることに伴い、スイッチOTC医薬品を取り扱う各店舗におかれましては、確定申告の際、本税制の適用に係る証明書類であるレシート等について、購入品目が本税制対象品目であることがわかるよう、下記の点について御留意いただく必要があります。
貴会におかれましては、傘下企業様等あて周知いただくとともに、本税制の円滑な運用に向けて今後とも御理解、御協力いただきますようお願い申し上げます。

記

1.証明書類には、
①商品名、
②金額、
③当該商品がセルフメディケーション税制対象商品である旨、
④販売店名、
⑤購入日が
明記されていることが必要です。

2.1の③当該商品がセルフメディケーション税制対象商品である旨の明記について、キャッシュレジスターが発行するレシートで対応する場合は、ア又はイのとおりとすることが必要です。

ア.商品名の前にマーク(例えば「★」)を付すとともに、当該マークが付いている商品がセルフメディケーション税制対象商品である旨(例えば「★印はセルフメディケーション税制対象商品」)をレシートに記載
イ.対象商品のみの合計額を分けて記載

3.1の①~⑤の事項が明記されているのであれば、キャッシュレジスターが発行するレシートであるか、手書きの領収書であるか等を問いません。



平成28年11月2日、厚生労働省のホームページにQ&Aが掲載されました。


【セルフメディケーション税制について】

Q1 セルフメディケーション税制とはどんな制度ですか。
適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、健康の維持増進および疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、平成29年1月 1日~平成33年12月31日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る特定成分を含んだ OTC 医薬品(いわゆるスイッチ OTC 医薬品)の購入の対価を支払った場合において、その年中に支払った対価額の合計額が1万2千円を超えるときは、その超える部分の金額(上限:8万8千円)について、その年分の総所得金額等から控除する新税制です。

Q2 創設の目的はなんですか。
国民のセルフメディケーションの推進を目的としています。セルフメディケーションは WHO において「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当すること」と定義されています。セルフメディケーションを推進していくことは、国民の自発的な健康管理や疾病予防の取組を促進することはもちろん、医療費の適正化にもつながります。

Q3 従来の医療費控除との関係はどのようになっていますか。
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)による所得控除と、従来の医療費控除を同時に利用することはできません。購入した対象医薬品の代金に係る医療費控除制度については、従来の医療費控除制度とセルフメディケーション税制のどちらの適用とするか、対象者ご自身で選択することになります。


【申告方法について】

Q4 確定申告はいつ行えばいいですか。
確定申告をする必要がある方は2月中旬から3月中旬の定められた期間に確定申告を行う必要があります。(確定申告の具体的な手続きについては、お近くの税務署や国税庁のホームページ等でご確認下さい。)


【対象の医薬品について】

Q5 対象の医薬品はどんなものですか。
医師によって処方される医療用医薬品から、ドラッグストアで購入できる OTC医薬品に転用された医薬品(いわゆるスイッチ OTC 医薬品)です。
本税制の対象となる OTC 医薬品(約 1,500 品目)は厚生労働省の HP で掲載しているほか、一部の製品については関係団体による自主的な取組により、対象医薬品のパッケージにこの税制の対象である旨を示す識別マークが掲載されています。
※ なお、薬局製造医薬品(薬局製剤)においても、対象成分を含有する品目がありますが、こちらは本税制の対象外となります。


【その他】

Q6 対象の医薬品を通信販売等で購入する際、支払い日が平成 29 年 1 月 1 日以降の場合、この制度の対象になるのでしょうか。
支払い日が施行日以降である場合は対象となります。

Q7 控除の対象となる額は税込みか税抜きかどちらでしょうか。
実際に支払った税込み後の価格が控除の対象となります。

Q8 ドラッグストアで一律○%引きのセールが開催されている場合、控除額はどのような取扱いになるのでしょうか。
割引後の価格が控除額となります。

Q9 購入した証明書類をなくしてしまった場合はどうすればいいですか。
セルフメディケーション税制を活用される場合は、必要事項を記載した領収書が必要ですので、購入した薬局等でレシートの再発行をしていただく必要があります。
また、証明書類に対象医薬品の目印が付けられていない場合も同様です。

Q10 平成 29 年1月1日以降に新たにリストに追加された品目については、平成 29 年1月1日以降の購入であれば、リスト掲載前の購入であっても税制の対象になるのでしょうか。
対象となります。


<製造販売業者の方向け>
Q11 新規登録・変更時の届出書は、毎回全品目記載が必要ですか。
毎回、全品目を記載する必要はありません。変更になった品目のみ、変更内容が分かるように記載してください。

Q12 控除の申告は5年を遡って行うことが可能ですが、発売中止となった対象品目はいつリストから削除されますか。
削除した項目を対象品目リストと別の表で掲載しておりますので、5年後も確認は可能です。

Q13 製造販売承認の承継により、製造販売元が変更となった場合、届出は必要ですか。
承継により新たな製造販売元となった製造販売業者は、当該品目を追加する旨を記した変更届を提出してください。また、承継により製造販売を中止する製造販売元は、削除の方法に従い、変更届を提出してください。

<小売り業者の方向け>
Q14 レシート等には、どのような情報の記載が必要ですか。
①商品名、②金額、③当該商品がセルフメディケーション税制対象商品である旨、④販売店名、⑤購入日の明記が必須となります。

Q15 1年分の購入リストとして、「商品名、金額、税制対象である旨、販売店名、購入日」を明記した書類を当社にて作成して提供し、そのリストを確定申告に使用していただくことはできますか。
販売した業者が必要事項を記入して作成した書類であれば申告時に使用していただけます。




2016年9月18日日曜日

基礎的医薬品とは


収載から時間がかなり経過し、薬価も下がりすぎて採算が取れず市場撤退が考えられるもので、薬価を維持することで下支えされている医薬品群です。
基礎的医薬品として薬価が維持されている間は継続的な安定供給がメーカーには求められることとなります。

平成28年度の診療報酬改訂において基礎的医薬品は、
「診療報酬における加算等の算定対象となる後発医薬品」等から除外されました。
そのため、広義の後発医薬品であり基礎的医薬品に該当するものへの変更調剤への是非が不明でしたが、疑義解釈通知でその取扱が明らかになっています。


【後発医薬品への変更調剤】
(問)処方せんにおいて変更不可とされていない処方薬については、後発医薬品への変更調剤は認められているが、基礎的医薬品への変更調剤は行うことができるか。



(答)基礎的医薬品であって、平成28年3月31日まで変更調剤が認められていたもの (「診療報酬における加算等の算定対象となる後発医薬品」等)については、従来と同様に変更調剤を行うことができる。 なお、その際にも「処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更につい て」(平成24年3月5日付け保医発0305第12号)に引き続き留意すること。


基礎的薬品制定の経緯


「経済財政運営と改革の基本方針2015」(2015年6月30日閣議決定)において、臨床上の必要性が高く将来にわたり継続的に製造販売されることが求められる基礎的な医薬品の安定供給に向けた必要な措置を検討するように示されました。

これを受け、2016年度薬価制度改革においては試行的取組みとして、現行の不採算品再算定、最低薬価になる前の薬価の下支えする制度と位置づけ、基礎的医薬品に該当する医薬品の薬価を最も販売額が大きい銘柄に価格を集約してその薬価を維持するルールが導入されました。

この基礎的医薬品は、
①薬価収載から25年以上経過し、かつ成分全体及び銘柄の乖離率が全ての既収載品の平均乖離率以下、
②一般的なガイドラインに記載され、広く医療機関で使用されている等、汎用性のあるもの、
③過去の不採算品再算定品目、並びに古くから医療の基盤となっている病原生物に対する医薬品及び医療用麻薬の要件の全てを満たす医薬品
を対象としています。

なお、基礎的医薬品の制度によらず十分な収益性が見込まれる品目は対象外とされています。


2016年度薬価制度改革における基礎的医薬品対象品一覧

厚生労働省ホームページ 「平成28年度診療報酬改定について」の中で掲載


2016年度薬価基準改定における「基礎的医薬品」の薬価算定の基準について
薬価算定の基準について(保発0210第1号、2016年2月10日)
第4節 低薬価品等の特例
2 薬価上の措置が必要な既収載品の特例
(1)基礎的医薬品
 薬価改定の際、次の全ての要件に該当する既収載品(十分な収益性が見込まれるものを除く。)については、薬価改定前の薬価(当該既収載品と組成、剤形区分及び規格が同一である類似薬がある場合には、薬価改定前の薬価を基に計算した年間販売額が最も大きい銘柄の薬価改定前の薬価)を当該既収載品の薬価とする。
 ただし、当該既収載品と組成、剤形区分が同一である類似薬があり、汎用規格の当該類似薬がニの要件を満たさない場合については、別表9に定める算式により算定される額を当該類似薬の薬価とする。この場合において、別表9中「低薬価品群、準低薬価品群又はその他の後発品群」とあるのは、「基礎的医薬品と組成、剤形区分及び規格が同一である基礎的医薬品に該当しない類似薬群」と読み替えるものとする。
イ 医療上の位置付けが確立し、広く臨床現場で使用されていることが明らかであること
ロ 当該既収載品並びに組成及び剤形区分が同一である全ての類似薬のうち、薬価収載の日から25年を経過しているものがあること
ハ 当該既収載品と組成及び剤形区分が同一である類似薬がある場合には、当該既収載品を含む類似薬の平均乖離率が、全ての既収載品の平均乖離率を超えないこと
ニ 当該既収載品の市場実勢価格の薬価に対する乖離率が、全ての既収載品の平均乖離率を超えないこと


参考:
バクシダール錠やケフラールカプセルから後発医薬品へ変更調剤できなくなった?(平成28年診療報酬改定)

平成28年度診療報酬改定説明会(平成28年3月4日開催)資料等について 平成28年度診療報酬改定説明(薬価)

経済財政運営と改革の基本方針2015 ~経済再生なくして財政健全化なし~(2015年6月30日)

基礎的医薬品について[中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第110回) 議事次第(2015年11月4日)]

2016年9月12日月曜日

メトホルミンを変色させるのはオルメサルタンだけではなかった


メトホルミン塩酸塩製剤とオルメサルタンメドキソミル製剤(オルメテック)を夏場の高温多湿時に一包化して保存した際に、メトホルミンが淡紅色に変色してしまうというのはよく知られている配合変化だと思います。


メトホルミン製剤と DMDO 基を有する製剤との一包化による変色


メトホルミン塩酸塩製剤とオルメサルタンメドキソミル製剤の一包化による配合変化について(トーアエイヨー)
http://med.toaeiyo.co.jp/products/medet/pdf/haigou-med.pdf



この現象は、フォーゲス・プロスカウエル反応(Voges−Proskauer(VP)反応)として知られています。

VP反応は、オルメサルタンメドキソミル含有錠剤中のオルメサルタンメドキソミルから遊離した(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチル基(DMDO基)が加水分解され、ジアセチル、アセトインへと変化し、これらがメトホルミン塩酸塩製剤中のメトホルミンのグアニジノ基と反応することにより起こると考えられています。



DMDO基の構造を持つ医薬品


DMDO基を持つ医薬品は以下のとおりです。
赤円がDMDO基。

オルメサルタンメドキソミル

(オルメテック)



プルリフロキサシン

(スオード)



レナンピシリン塩酸塩

(バラシリン:2010年3月31日販売終了)



2016年9月8日木曜日

トリクロサンを含む医薬部外品

本年9月2日、米国食品医薬品局(FDA)が、トリクロサン等19成分(注)を含有する抗菌石けんを米国において1年以内に販売を停止する措置を発表しました。
米国での措置を踏まえ、日本化粧品工業連合会及び日本石鹸洗剤工業会は、これらの成分を含有する薬用石けんに関し、これらの成分を含有しない製品への切替えに取り組むよう会員会社に要請しました。

これを受けて、厚生労働省としても、この切替えの取組みを促すため、製造販売業者に対して、流通する製品の把握と、製品を1年以内に代替製品に切替えるための承認申請を求めるとともに、その際の承認審査を迅速に行うことを通知しました。

トリクロサン等を含む薬用石けんの切替えを促します(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000138223.html



【2016.09.30追記】


アメリカの厚労省にあたる食品医薬品局(FDA)は2016年9月2日、抗菌作用のあるトリクロサンなど19種類の殺菌剤を含む抗菌せっけんやボディーソープなどを販売禁止にすると発表しました。




薬用石鹸ミューズやビオレU泡ハンドソープにトリクロサンが含まれるということで少し話題になっています。


日本でも同様の成分を含む製品を調査中し、厚労省の審議会で措置について今後検討を行うようです。

官房長官記者会見9月7日午後(首相官邸):2分50秒過ぎ
http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201609/7_p.html



FDAは2013年にトリクロサンを含む抗菌石鹸の効果と安全性に警鐘をならし、普通の石鹸よりも勝ることを実証するようメーカー各社に求めていました。

そして2016年通常のせっけんより殺菌効果があるという根拠がなく、長期使用の安全性も検証されていないことから、販売禁止となりました。


19種類の殺菌剤については、FDAのサマリーに公表されています。
https://s3.amazonaws.com/public-inspection.federalregister.gov/2016-21337.pdf


 Cloflucarban
 Fluorosalan
 Hexachlorophene
 Hexylresorcinol
 Iodophors (Iodine-containing ingredients)
○Iodine complex (ammonium ether sulfate and polyoxyethylene sorbitan monolaurate)
○Iodine complex (phosphate ester of alkylaryloxy polyethylene glycol)
○Nonylphenoxypoly (ethyleneoxy) ethanoliodine
○Poloxamer--iodine complex
○Povidone-iodine 5 to 10 percent
○Undecoylium chloride iodine complex
 Methylbenzethonium chloride
 Phenol (greater than 1.5 percent)
 Phenol (less than 1.5 percent)
 Secondary amyltricresols
 Sodium oxychlorosene
 Tribromsalan
 Triclocarban
 Triclosan
 Triple dye

こちらのサイト様が翻訳されています。

今夜スタバでドヤ顔を:FDAにより禁止された薬用石鹸の成分リスト日本語版
http://doyagao.staba.jp/archives/2191



今回の規制対象に消毒液や医療機関向けの製品は含まれていないことは強調しておきます。

医療用医薬品にも上記19種類の成分を含有してるものがあります(ポビドン、塩化ベンゼトニウムなど)が、規制対象外です。


安全性について影響がないことを証明することは難しい物があります。そのため、実際に消費者の健康にどのような影響を与えるのかは今のところ定かではありません。しかし、他に有効かつ代替可能な手段があるなかで、殺菌剤の使用禁止が早計に過ぎるとも言えないと思われます。


表:トリクロサン、トリクロカルバンを含む医薬部外品
成分名 会社名 商品名

トリクロサン
(TCS)

乾商事

イルソープA

乾商事

イルソープピンク

乾商事

イルソープピンクR

丸石

グリンス

サラヤ

シャボネットDP-3

太平化学

タイサリート・プラス

健栄

ミニシック

第一三共
ヘルスケア

クリアレックスW

トリクロサン
(TCS)

トリクロカルバン
(TCC)

レキットベンキーザー・ジャパン

ミューズ

液体ミューズ

ミューズ 泡ハンドソープ

ミューズ ノータッチ泡ハンドソープ

セチルリン酸化ベンザルコニウム(BCP)

トリクロカルバン
(TCC)

吉田製薬

アエラセップEX    



2016年9月5日月曜日

ルアーチップ、スリップチップ、カテーテルチップの違い


シリンジのカタログを見ていると似たような言葉が並んでいます。
あなたは『ルアーチップ』、『スリップチップ』、『カテーテルチップ』の違いを知っていますか?


まず、言葉の意味を整理しましょう。

『チップ』というのは、カテーテルやチューブ等の端部、又は端部にある部品のことをいいます。
つまり、シリンジの先端のことです。

次に、
『ルアーテーパ』という用語があります。
ルアーテーパはISO 594に規定される形状で緩やかな傾斜を有する接続方法のひとつです。
オスルアー (male luer) と、メスルアー (female luer) の2種類があり、差し込むだけで簡単に気密性のよい接続ができます。



『ルアーチップ』と『スリップチップ』のちがい


実は、同じ意味です。
『ルアーチップ』も『スリップチップ』シリンジの先端形状のことを表しており、一般的な単純はめ込み式のシリンジ先端のことです。

医療機器メーカーによって表現が違うため、ややこしいことになっています。
テルモは『スリップチップ』
ニプロは『ルアーチップ』
です。

※ルアーチップのほうが標準的です。


シリンジの先端、チップには様々な種類があります。

引用:テルモ


まず、チップの付いている位置です。

中口

シリンジの中央についている、一般的なタイプです。

横口

口が中口より外側にずれているタイプです。そのため、採血の際に浅い角度で針を刺すことが可能です。また、シリンジ内の空気抜きをしやすいという利点もあります。


次に、チップの形状の違いです。

ノーマルタイプ

テーパ状になった先端で、一般的なチップ形状です。

ロックタイプ

ISO 594-2 で規定される固定方法。又は他の方法によって嵌合を補強する方式のことです。中口かつねじ込み式となっており、外れにくい仕様です。そのため 抗がん剤等のライン接続等に汎用されます。


カテーテルチップとは

あやい動物病院

この“カテーテルチップ”とはカテーテルの先端(チップ)を指すものではありません。
カテーテルの「めす」コネクタ等の、より太い径に合致するように作られた接続部のことです。

一般のシリンジとカテーテルチップ型シリンジのちがいはその先端の太さです。

経腸栄養ラインに投与されるべき薬剤が誤って輸液ラインに投与されることがないように、経腸栄養系の器具と輸液ラインとは物理的に接続が不可能な規格とする基準が定められています。

そのため、注射剤以外の液剤の採取、投与等に使用されるシリンジについて、筒先を注射筒のものより太くし、通常の注射筒が接続できる輸液ラインには物理的に接続できないようになっています。

(上図:上がカテーテルシリンジ、下が普通のシリンジ)


参考:
「医療事故を防止するための医療用具に関する基準の制定等について」(平成12年8月31日医薬発第888号)
https://www.pmda.go.jp/files/000144004.pdf

「MTJAPANにおける規格・基準関連用語のあり方―用語統一のためのガイドライン(第2版)」について
https://www.mtjapan.or.jp/jp/app/info/detail/id/325/