2026年4月22日水曜日

令和8年度診療報酬改定 地域支援・医薬品供給対応体制加算「薬事未承認の研究用試薬又は検査サービスを提供していないこと」とは

2026年度(令和8年度)調剤報酬改定で新設・再編された地域支援・医薬品供給対応体制加算(最大67点)
その施設基準のひとつに、「薬事未承認の研究用試薬又は検査サービスを提供していないこと」が明記されました(特掲施設基準通知 第92 2(3)コ(ト))。

この規定に違反すると、加算全体が算定不可となります。
薬局経営に直結する重要な新ルールについて、厚生労働省の公式見解に基づき、定義・判断基準・算定上の注意点を詳しく解説します。

1. 「薬事未承認の研究用試薬又は検査サービス」とは?(公式定義)

厚生労働省の疑義解釈(令和8年4月20日)において、以下のとおり明確に規定されています。

公衆衛生の向上及び増進の観点から、

  • 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)等に抵触するおそれのある、疾病の診断や罹患リスクの判定を行うことができると標榜する研究用試薬又は検査用試薬
  • 医師法等に抵触するおそれのある、疾患の罹患可能性の提示や診断等の医学的判断を行う検査サービス

を指す。

つまり、「研究用」と表示していても、実態として一般消費者が診断目的で使用すると誤認されるものはすべて対象となります。

2. 「体外診断用医薬品」とみなされる判断基準

令和8年3月31日付のガイドラインによれば、単に「研究用」「研究目的」「非診断用」と表示していても、以下のいずれかに該当すれば「体外診断用医薬品」とみなされ、無承認無許可医薬品として販売・提供が禁止されます。

① 診断目的とみなされる標榜内容

  • 特定の疾患名・病原体名(新型コロナ、インフルエンザ、性感染症、がんなど)を挙げ、「罹患の有無」「リスク判定」と明記
  • 「陽性なら医療機関を受診してください」などの受診勧奨
  • スクリーニング目的(PCR等への橋渡し)や「健康状態の確認(陰性確認)」
  • ※疾患に罹患していないことを確認する目的も診断行為とみなされます。

② 誤認を与える表現・性能説明

  • 海外承認の強調(FDA、CEマークなど)
  • 承認済みPCR・抗原検査との比較
  • 感度・特異度などの性能説明、有症状者を対象とする記載
  • 人からの検体採取を前提とした説明(スワブ・ランセット同梱など)

③ 一般消費者向けの販売・広告

  • 「安心」「安全」「不安解消」などの心理的訴求
  • 自宅使用を想定した図解・説明
  • 外出前・日常使いを勧める表現
  • 医薬品や感染症対策商品と混在した陳列

【ガイドラインの核心】
表示だけでなく、包装・広告・販売方法・消費者への受け止め方を総合的に判断されます。

3. なぜ禁止されるのか?(規制の背景)

薬機法の承認を受けていない検査キットは、検査性能が不確かである可能性があります。消費者がこれを使用することで生じる以下のリスクを防ぐことが目的です(ガイドライン前文より)。

  • 偽陰性・偽陽性により適切な受診機会を逃し、重症化すること
  • 結果に対する誤認による感染症の拡大

4. 算定上の注意点(薬局が今すぐ確認すべきこと)

  • 対象範囲: 保険薬局本体 + 併設する店舗販売業(第25条第1号許可の店舗を含む)
  • 違反した場合: 施設基準を満たさないとみなされ、地域支援・医薬品供給対応体制加算(全区分)が算定不可となります。
  • 許容されるもの: 薬機法・医師法等に抵触するおそれのない研究用試薬・検査サービス(例:純粋な研究機関向けであり、疾病診断・医学的判断を一切伴わないもの)は販売・提供可能です(疑義解釈問3)。

✅ 実務チェックポイント

  • 現在取り扱っている「研究用」検査キット・郵送検査サービスをすべて洗い出す。
  • 自局のウェブサイト・店頭POP・パッケージの表現を再度確認する。
  • 「特定の疾患との関連性やリスクをどの程度具体的に提示」していないか、および「医学的判断」を、サービスの仕様書やパンフレットで確認する。

5. まとめ

この規定は、薬局が「地域における医薬品安定供給の拠点」として信頼性を担保するためのものです。
「研究用」と表示されていても、消費者向けに診断を想起させる商品は一切扱わないという明確なラインが引かれました。令和8年6月からの算定開始に向け、今すぐ在庫および販売体制の見直しをおすすめします。


薬事未承認試薬・検査サービス判定チェックリスト

本チェックリストは、厚生労働省「研究用と称する検査キット等の体外診断用医薬品の範囲に関するガイドライン」(令和8年3月31日)および疑義解釈(令和8年4月20日)を基に作成した実務向け簡易ツールです。新規仕入れ時や定期点検にご活用ください。(実際は行政の個別判断によるところが大きいため厳し目の判定になっています)

禁止対象の簡易定義

「研究用」と表示していても、以下のいずれかに該当するものは禁止となります。

  • 疾病の診断・罹患リスク判定を標榜する未承認試薬
  • 医学的判断を行う検査サービス

判定チェックリスト

判定区分A:標榜事項・広告表現(最も重要)

チェック項目 該当したら
「陽性の場合は受診を」など結果に基づく対応を促す記載禁止
新型コロナ・インフルエンザ・がん等、具体的な疾患名・病原体名の明記禁止
「スクリーニング目的」「感染可能性の判定」の標榜禁止
「健康状態の確認」「未感染を確認」などの陰性確認表現禁止
FDA・CEマーク・海外承認の強調注意(他項目と併せて)
承認済み検査(PCR・抗原検査等)との同等性を示唆する比較禁止

判定区分B:性能・使用方法の暗示

チェック項目 該当したら
感度・特異度や「PCR陽性検体に対する精度」などの性能説明禁止
有症状者対象・発症後〇日目などの記載禁止
特定の変異株への反応性主張禁止
人検体(鼻腔ぬぐい液・唾液・血液等)の使用明示禁止
スワブ・ランセット等の採取用具同梱禁止

判定区分C:一般消費者向け販売の実態

チェック項目 該当したら
「安心」「不安解消」などの情緒的表現要注意
「自宅で」「外出前に」などの日常生活介入表現要注意
医薬品・感染症対策商品との混在陳列要注意
診断目的を示唆する口コミ・レビューの掲載禁止

総合判定ルール:上記A・B・Cのいずれかに該当する項目が1つでもあれば原則として禁止対象です(ガイドラインに基づく総合判断)。

除外対象(販売が認められる場合)

以下のすべてを満たす場合のみ取り扱い可能です。

  1. 販売先が大学・研究所等の研究機関に明確に限定されている
  2. 個人の診断ではなく疫学調査等の研究目的であると明記されている
  3. 薬機法・医師法に抵触しないことが客観的に確認できる

薬局での実務対応フロー(推奨)

  1. 新規仕入れ時:卸から提案された製品を本チェックリストで即判定(B区分該当時は即却下)
  2. 定期点検:毎月1回、店頭在庫・POP・ウェブサイト・SNSを薬剤師が確認
  3. 証跡保存:判定記録を最低2年間保管(個別指導・行政調査対策)

※本チェックリストは参考資料です。最終判断は厚生労働省公式通知・ガイドラインをご確認の上、必要に応じて管轄の厚生局・都道府県薬務課にご相談ください。