2020年10月2日金曜日

カリウム製剤等価換算の注意点


アスパラカリウムを見たら、一呼吸。
添付文書の用法用量をチェックしよう!




経口カリウム製剤には

  • 塩化カリウム 
  • グルコン酸カリウム 
  • Lアスパラギン酸カリウム 
の3種類があります。

それぞれ、換算する際にはカリウム含有量をあわせる必要があります。

塩化カリウム「日医工」    1g  あたり13.4 mEq

K.C.Lエリキシル         1mLあたり 1.34mEq

スローケー600mg        1錠あたり 8 mEq
※販売中止:経過措置2020 年 3 月末日予定 

塩化カリウム徐放錠600mg「St」 1錠あたり 8 mEq

グルコンサンK細粒4mEq/g 1g あたり 4 mEq

グルコンサンK錠2.5mEq   1錠あたり 2.5 mEq

グルコンサンK錠5mEq    1錠あたり 5 mEq

アスパラカリウム散50%     1g あたり 2.9 mEq

アスパラカリウム錠300mg  1錠あたり 1.8 mEq


よくあるミスは成分量(mg)を合わせてしまうことです。


そのようなミスをおこさないために

グルコンサンKの製品名はmEqが表示されています。


塩化カリウム徐放錠600mg「St」からグルコンサンKへ変更


塩化カリウム徐放錠600mg「St」を1日4錠服用している患者さんがいます。

錠剤が大きく飲みづらいので、グルコンサンK細粒4mEq/gに変更しようと思います。

グルコン酸K細粒4mEq/gにした場合、1日何g服用すれば良いのでしょうか?


塩化カリウム徐放錠600mg「St」1錠のカリウム含有量は8mEqです。

1日4錠服用しているので、1日量は8mEq×4錠=32mEq です。

「グルコンサンK細粒4mEq/g」 1gにはカリウムが4mEq含まれていますので、

32mEq÷4mEq/g=8g

です。


グルコンサンKの添付文書を見てみると、用法用量は「1回カリウム10mEq相当量を1日3~4回経口投与」となっています。

製剤として1回2.5gが常用量になっているようですので、2.5の倍数が都合がいいようです。

そのあたりは、患者さんの様子を考慮しながら適宜調節する必要があります。


塩化カリウム徐放錠600mg「St」からアスパラカリウムへ変更


塩化カリウム徐放錠600mg「St」を1日4錠服用している患者さんがいます。

錠剤が大きく飲みづらいので、アスパラカリウム散50%に変更しようと思います。

アスパラカリウム散にした場合、1日何g服用すれば良いのでしょうか?


塩化カリウム徐放錠600mg「St」1錠のカリウム含有量は8mEqです。

1日4錠服用しているので、1日量は8mEq×4錠=32mEq です。

アスパラカリウム散50% 1gにはカリウムが2.9mEq含まれていますので、

32mEq÷2.9mEq/g=11.0g 

・・・



これは、間違いです。



添付文書の用法用量をみてください。

アスパラカリウムの添付文書の用法用量には


1日 0.9 ~ 2.7g(錠 300mg:3 ~ 9錠,散 50%:1.8 ~ 5.4g)を 3 回に分割経口投与する。


と、記載があります。

1日の上限は5.4gです。11.0gでは過量投与です。



塩化カリウムとLアスパラギン酸カリウムは単純換算できません!

気をつけてください。


なぜ、できないのかというと


ウサギの赤血球を用いた実験で、赤血球内へのカリウム移行量は、
L-アスパラギン酸カリウムの方が塩化カリウムよりも多かった(in vitro、in vivo)。
(檜垣 鴻 他:薬学研究 1963;35(6):209-225)

カリウムの細胞内取り込みの指標として赤血球(ウサギ,ヒト)内への移行をみると、
L-アスパラギン酸カリウムは塩化カリウムより良好だった。
(高安久雄 他:泌尿器科領域アスパラギン酸塩研究会研究報告集 1965;23-25)

L-アスパラギン酸カリウムを K として 1mEq/kg/hr を 2 時間静脈内持続投与において、3 時間後の体内保有率は約 70%でした。一方、塩化カリウムは約30%でした。
(檜垣 鴻 他:臨床と研究 1970;47(10):2389-2396


という報告があるように、

塩化カリウムとLアスパラギン酸カリウムは吸収や細胞内移行が大きく異なるからです。



Lアスパラギン酸カリウムは塩化カリウムに比べ2倍以上組織移行、保持能力が良いとされているのでアスパラカリウムの常用量は塩化カリウム製剤の常用量に比べ少ないのです。


塩化カリウム徐放錠600mg「St」1日4錠からアスパラカリウム散50%へ切り替える際には、1日1.8 ~ 5.4gの中で、血中カリウム濃度を確認するなど患者さんの様子をみて加減する必要があります。


塩化カリウム徐放錠600mg「St」1日4錠からアスパラカリウム錠300mgへの切り替えのときも・・・

塩化カリウム徐放錠600mg「St」は1錠中にカリウムとして 8mEq、アスパラカリウムは1錠中にカリウムとして1.8 mEqだから、これを元に計算すると・・・

塩化カリウム徐放錠600mg「St」1錠はアスパラカリウム錠 約4.5錠と同じカリウムを含んでるわ。

塩化カリウム徐放錠600mg「St」1錠をアスパラカリウム錠4.5錠に切り替えるから、1日量は18錠ね。


なんてことはしないように!