2023年11月10日金曜日

乳糖水和物の形状と特徴 粉末と結晶のちがい

 散剤を調製するとき、1包あたりの量が少ない場合には、調剤しやすくするためや服用しやすくするために、それ自身薬理作用をもたない散剤(賦形剤)が加えられます。

調剤に使用される賦形剤は通常、乳糖(乳糖水和物)またはデンプン、あるいは乳糖とデンプンの混合物です。

乳糖は使用頻度の高い賦形剤です。

その性状は日本薬局方で「本品は白色の結晶、粉末又は造粒した粉末である。」と定められています。

散剤の形状には粉末、微細粒(VFG:Very Fine Granule)、細粒(FG:Fine Granule)、顆粒(G:Granule)、微結晶(EFC:Extra Fine Crystal)、結晶(CF:Crystal Form)など 粒子径の大きさ(粒度分布)が様々であるため散剤の粒度分布にできるだけ類似した乳糖を1種類または組み合わせて使用します。


乳糖水和物の粉末と結晶のちがい

乳糖では、粒子が粗いほど流動性をもたらし、粒子が細かくなると混和した主薬の分離防止効果をもたらします。
乳糖は各社、異なる形状のものを販売しています。「粉末」「末」「粒状」「結晶」「倍散用結晶」「細粒」様々あります。
大きな違いは、粒度分布です。粉末は小さい粒子が多く、粒状や結晶、細粒は大きい粒子が多くなります。
注意が必要なのは、「粉末」や「結晶」には明確な粒度分布の定義がありません。メーカーごとに「粉末」や「結晶」の粒度分布が異なります。

一般的な形状の特徴

  • 粉末
    ・・・ 飛び散りやすい。粒子が細かく取り扱いが少し大変(付着しやすい、ダマになる)。ロートエキス散のように飛散性と滑沢性のある散剤には適しています。
  • 結晶(大きめ)
    ・・・ 流動性が高い。器具などに付着しない、分包機の清掃用に適しています。
  • 結晶(小さめ)
    ・・・ 調剤しやすい。「結晶」と謳われている乳糖の殆どがコレ。
  • 倍散用結晶
    ・・・中心粒子径150~250μmと75μm以下のダブルピークの粒度分布をもっています。大小の粒子の両方の性質をもっているので、調剤の際に多くの主剤となじみやすく混ざりやすいです。

※日医工の乳糖水和物は2023年12月販売中止予定


2023年11月9日木曜日

タミフルドライシロップ3%が入手困難な場合の 脱力プセル対応について

タミフルドライシロップ3%が入手困難な場合

  • 5歳以上のインフルエンザ患者においては吸入できる吸入薬で対応します。
  • タミフルカプセル75を脱カプセルし、賦形剤を加えるなどの調剤上の工夫をおこなった上でタミフルドライシロップの用法用量したがって投与します。

タミフルカプセルを脱カプセルした場合、オセルタミビルはとても苦いので小さな子供に飲ませるには一工夫必要です。
乳糖や砂糖を加える、あるいはジュースにとかして飲ませるなどの説明を充分に保護者などにする必要があります。
ジュースなどへ用事懸濁させて飲ませることに関しては、オセルタミビルは、薬物の代謝酵素であるチトクロームP450(CYP)で代謝されず、またCYPの活性にも影響を与えないので可能です。
個人的には「おくすり飲めたね」のチョコレート味と混ぜるのが飲みやすかったです。

脱カプセル調整例

タミフルドライシロップ3%は1g中にオセルタミビルとして30mg含有する散剤です。

30mg/gの散剤10gを予製する場合(15kgの幼児[3~4歳]の5日分に相当)
タミフルカプセル75、4カプセルを脱カプセルします。
カプセル中身に全量が10gとなるよう乳糖で賦形します。
この散剤を1gづつ分包します。

インフルエンザ治療における用法用量
オセルタミビルとして以下の1回用量を1日2回、5日間、用時懸濁して経口投与する。
ただし、1回最高用量はオセルタミビルとして75mgとする。

幼小児の場合:2mg/kg
新生児、乳児の場合:3mg/kg



脱カプセルの保険算定について


2009年の新型インフルエンザ流行時にタミフルドライシロップが入手困難だったときには、厚生労働省がタミフルカプセルを脱カプセルしタミフルドライシロップの用法用量に従って投与した場合に限り薬剤料も算定可能という事務連絡を出していました。

また、タミフルカプセル75mgを脱カプセルし、賦形剤を加えて調剤した上で交付した場合、タミフルドライシロップ3%が入手困難な場合であれば、保険薬局は自家製剤加算を算定できるという事務連絡も出されていました。

2023年においてもインフルエンザが流行している状況下で、オセルタミビルリン酸塩の
ドライシロップ製剤の供給が限定されているため、やむを得ず脱カプセルを行い賦形剤を加えるなどの対応をした場合自家製剤加算を算定できる旨の疑義解釈が示されました。このような場合には、レセプトの摘要欄に「オセルタミビルリン酸塩ドライシロップ製剤の不足のため」等のやむを得ない事情を記載することが必要です。




・「疑義解釈資料の送付について(その 60)」厚生労働省保険局医療課事務連絡(2023年11月8日)
https://ajhc.or.jp/siryo/20231108-60.pdf

・「新型インフルエンザに関連する診療報酬の取扱いについて」厚生労働省保険局医療課 事務連絡(2009年5月26日)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/05/dl/info0527-01.pdf

・「新型インフルエンザに係るタミフル等に関するQ&Aについて」厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部(2009年11月6日)
https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/11/dl/info1106-02.pdf

・「限定出荷に関するご案内 タミフルドライシロップ3%」中外製薬(2023年11月8日)
https://chugai-pharm.jp/content/dam/chugai/product/notice/2023/20231108_01.pdf


・「オセルタミビルリン酸塩ドライシロップの在庫逼迫に伴う協力依頼」厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課 (2023年11月8日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001165070.pdf

2023年11月6日月曜日

メンタックス外⽤液1% メンタックススプレー1% 販売中止と代替品

メンタックス外⽤液1%とスプレー1%が販売中止となるようです。

https://www.kaken.co.jp/wp/wp-content/uploads/medical_products3/2022/09/mentax_202310.pdf

抗⽩癬菌剤 ⽇本薬局⽅ ブテナフィン塩酸塩液 メンタックス外⽤液1%につきましては1992 年発売、抗⽩癬菌剤 ⽇本薬局⽅ ブテナフィン塩酸塩スプレー メンタックススプレー1%につきましては、2004 年発売以来皆様のご愛顧をいただいてまいりましたが、この度諸般の事情により在庫終了をもちまして販売を中⽌することにいたしました。

2025年3⽉末薬価基準削除(予定)です。


メンタックスは科研製薬において合成されたベンジルアミン誘導体、ブテナフィン塩酸塩を有効成分とする外用抗真菌剤です。

1990年代、表在性皮膚真菌症の治療薬はビホナゾール、ミコナゾール、クロトリマゾール等のイミダゾール系抗真菌剤が主流でした。この当時、国内外で強い抗菌活性を有するアリルアミン系化合物(テルビナフィン、ナフチフィン)が発売・開発され注目されていました。

ブテナフィン塩酸塩は骨格的にはアリルアミン系に類似した新しい骨格のベンジルアミン系化合物で、強い抗真菌活性を有し、イミダゾール系に代わるものとして開発され、1994年に承認されました。科研製薬からは「メンタックス」、久光製薬からは「ボレー」というブランド名で発売されました。

また、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤、液剤よりも簡単に塗ることができて、手を汚すことがないため使用感がよく、容器を患部に直接付けることがなく衛生的に投与できると考えられるスプレー剤が2008年2月に承認され発売されていました。


メンタックス外⽤液1%の代替品

併売品のボレー外用液が代替品となります。
最小発育阻止濃度の観点で白癬に効果が高いと考えられているのはルリコナゾール、ラノコナゾール、アモロルフィン、テルビナフィン、リラナフタートがあります。
このなかで、液剤が販売されているのは以下のとおりです。

<ルリコナゾール>
・ルリコン液

<ラノコナゾール>
・アスタット液

<テルビナフィン>
・ラミシール液 ほか後発品

<リラナフタート>
・ゼフナート液


メンタックススプレー1%の代替品

スプレー剤は比較的広範囲な部位に対してクリーム剤、ゲル剤、軟膏剤、液剤よりも簡単に塗ることができ、手を汚すことがないため使用感がよく、容器を患部に直接付けることがなく衛生的に投与できると考えられます。治療上のコンプライアンスの向上が期待できる製剤として選択されます。
ただ、スプレー剤(噴霧剤)が設定されている抗真菌薬はケトコナゾール、ブテナフィン塩酸塩の2つしかありません。
※テルビナフィン(ラミシール)のスプレーが存在していましたが2022年に販売中止となっています。

まず代替は併売品のボレースプレー(ブテナフィン塩酸塩)が挙げられます。
ほかは、以下のとおりです。
<ケトコナゾール>
・ケトコナゾール外用ポンプスプレー2%「日本臓器」
・ケトコナゾール外用ポンプスプレー2%「NR」




2023年10月27日金曜日

フェルビナクパップ70mg「タイホウ」 販売中止と代替品

フェルビナクパップ70mg「タイホウ」が販売中止となるようです。

フェルビナクパップ70mg「タイホウ」販売中止のご案内

経過措置期間は未定です。


フェルビナクパップ 70mg「タイホウ」は他のフェルビナク貼付剤の膏体をさらに少なくし貼付時の使用感に優れた薄型タイプのパップ剤として知られていました。フェルビナク貼付剤の中で唯一の温感タイプです。
フェルビナクパップ 70mg「タイホウ」は有効成分であるフェルビナクの放出性、持続的吸収性等に優れた経皮吸収型鎮痛消炎剤として開発され、2005年1月26 日に『フェルナビオン』として承認されました。また、2019年6月17日にフェルビナクパップ70mg「タイホウ」に販売名変更されました。



フェルビナクパップ 70mg「タイホウ」の代替品

フェルビナクパップ 70mg「タイホウ」は香料に、トウガラシエキスを添加剤として採用しています。トウガラシエキスは人によっては温かく感じる場合があり、フェルビナクパップ 70mg「タイホウ」は温感タイプのパップ剤として知られています。(ただ、カイロのように温度が上がるわけではなく、あくまでも温かく感じる気がするだけです)
温感成分としてトウガラシエキスの他にノニル酸ワニリルアミドが添加されている製剤も存在します。

代替品として、他の温感タイプの消炎鎮痛貼付剤をまとめてみました。

【パップ】
インドメタシン
・ラクティオンパップ

サリチル酸メチル/dl-カンフル/トウガラシエキス
・MS温シップ「タイホウ」
・MS温シップ「タカミツ」
・ラクール温シップ

【テープ】
ケトプロフェン
・ケトプロフェン「ラクール」

ロキソプロフェン
・ロキソプロフェンナトリウム「タイホウ」
・ロキソプロフェンNa「三友」

フルルビプロフェン
・フルルバンパップ(販売中止:2023年)



フルルバンパップ 40mg 販売中止と代替品

フルルバンパップ40mgが販売中止となるようです。

販売中止のお知らせ(科研製薬)
https://www.kaken.co.jp/wp/wp-content/uploads/medical_products3/2022/03/fulruban_202310.pdf

経過措置期間は2025年3月末満了(予定)です。

販売中止の理由は諸般の事情です。


フルルバンパップの有効成分フルルビプロフェンは、強力なプロスタグランジン生合成阻害作用を有する非ステロイド性鎮痛・消炎剤です。経口剤として各種炎症性疼痛疾患に幅広く使用されています。その有効性および安全性は高く評価されています。
貼付剤については、炎症局所への直接効果、非ステロイド性鎮痛・消炎剤特有の副作用の軽減化、さらに投薬管理の簡便化が検討され、臨床的にも有用性の高いことが認められています。

フルルビプロフェン 40mg 含有パップ剤アドフィードパップが1988年に承認・発売されました。フルルバンパップはその後、アドフィードパップと同様にフルルビプロフェン40mgを含有し、同一の効能効果を有するパップ剤として1992年に大協薬品工業が製造承認を取得し発売しました。
その後、途中から基材にノニル酸ワリニルアミドというカプサイシンに近いものを添加してフルルビプロフェンのパップ剤を売る三笠製薬、科研製薬、大正製薬の三社から再度発売されました。そして、大正製薬は2018年に三笠製薬は2019年に販売中止しました。


フルルバンパップ 40mgの代替品

フルルバンパップは安定性の向上を目的として、ノニル酸ワニリルアミドを添加剤として採用しています。ノニル酸ワニリルアミドは人によっては温かく感じる場合があり、フルルバンパップは温感タイプのパップ剤として知られています。(ただ、カイロのように温度が上がるわけではなく、あくまでも温かく感じる気がするだけです)
温感成分としてノニル酸ワニリルアミドの他にトウガラシエキスが添加されている製剤も存在します。

代替品として、他の温感タイプの消炎鎮痛貼付剤をまとめてみました。

【パップ】
インドメタシン
・ラクティオンパップ

サリチル酸メチル/dl-カンフル/トウガラシエキス
・MS温シップ「タイホウ」
・MS温シップ「タカミツ」
・ラクール温シップ

【テープ】
ケトプロフェン
・ケトプロフェン「ラクール」

ロキソプロフェン
・ロキソプロフェンナトリウム「タイホウ」
・ロキソプロフェンNa「三友」

フェルビナク
・フェルビナク「タイホウ」 (販売中止:2023年)



2023年10月26日木曜日

2024年3月末経過措置(予定) 消化酵素配合剤

消化酵素配合剤の多くが販売中止となり、2024年3月末に経過措置(予定)満了を迎えます。

少し、整理してみました。

販売中止の発表がなされ2024年3月末に経過措置期間満了となる消化酵素配合剤は以下のとおりです。

新薬の登場による消化器疾患の薬物治療の進展に伴い、消化酵素製剤としての本製品の臨床上の位置付けが変化し、販売数量は近年減少の一途を辿っております。また度重なる薬価改定により日本薬局方収載品の最低薬価(10.10円)をも下回る薬価(5.70円)まで下落し僅少な売上規模となっております。このような状況下では、品質確保のための老朽化した施設への設備投資、或いは新たな原薬+調達先・製造委託先の探索といった安定供給に向けた取り組みを行うことが非常に難しくなっております。今般あらゆる改善策を模索した結果、販売継続が困難と判断し、厚生労働省や関係学+術団体にご相談の上、本製品の販売を中止させていただくことになりました。

 

総合消化酵素製剤 ボルトミー配合錠につきまして、2021年12月に一時出荷停止の案内をさせていただいておりましたが、諸般の事情により販売を中止させて頂くことになりました。

 

諸般の事情により、甚だ勝手ではございますが、販売中止させて頂くことになりました。

成分の1つである医療用セルロシンA.P.の製造販売の終了に伴い、製造販売の継続が困難となって参りました。既に販売終了予定のご案内を実施いたしましたが、諸々の手続きが完了いたしましたので、在庫が無くなり次第販売を終了いたします。

残された消化酵素配合剤

販売を継続している消化酵素配合剤は4種類です。
  • ケイラーゼSA配合顆粒 
  • フェンラーゼ配合カプセル 
  • ベリチーム配合顆粒 
  • マックターゼ配合錠 


医療用消化酵素製剤の特徴やそれに応じた使い分けについてはこちらのレヴューがよくまとまっています。

2023年10月25日水曜日

ジフルカン静注液 販売中止と代替品

 

ジフルカン静注液が販売中止となるようです。

https://www.pfizermedicalinformation.jp/ja-jp/system/files/attachments/dsy27n001b.pdf?pmidf

販売中止時期は2024年7月を予定されています。


ジフルカンの成分であるフルコナゾールは、1978年にファイザー社(英国、サンドイッチ研究所)で開発されたトリアゾール系の抗真菌剤です。日本では、1989年3月カプセル剤と注射剤が承認されています。 

ジフルカンは、カンジダ属及びクリプトコッカス属に抗真菌活性を示し、これらによる真菌血症、呼吸器真菌症、消化管真菌症、尿路真菌症及び真菌髄膜炎に対し使用されます。また、2010年12月に日本小児血液学会・日本小児がん学会から開発要請がなされ、2011年11月には「造血幹細胞移植患者における深在性真菌症の予防」の適応拡大され使用されています。


ジフルカンの代替品

ジフルカン静注液のプロドラッグであるプロジフ(ホスフルコナゾール)が候補となります。プロジフは生体内で速やかにフルコナゾールに加水分解されます。フルコナゾールと比べ溶解性が高まったことにより、液量負担が軽減されています。また、負荷投与法を採用することによって、血中フルコナゾール濃度を投与3日目より定常状態として維持することが可能となっています。
しかし、「小児用法・用量」および「造血幹細胞移植患者における深在性真菌症の予防」の適応はありません。

小児適応をもつ抗真菌薬はミカファンギン、リポソーマルアムホテリシン B(L-AMB)、フルコナゾール、ボリコナゾール、カスポファンギンがあり、感受性や忍容性を考慮し選択されます。

造血幹細胞移植患者における深在性真菌症の予防適応をもつ薬剤にはボリコナゾール、ポサコナゾールとキャンディン系のミカファンギンがあります。こちらも患者ごとの真菌症リスクと抗真菌薬スペクトラムと忍容性を考慮して選択されます。



デジレル 販売中止と代替品


デジレルが販売中止となるようです。

https://www.pfizermedicalinformation.jp/ja-jp/system/files/attachments/dsy27n001b.pdf?pmidf

販売中止時期は2024年10月を予定されています。



デジレルの成分であるトラゾドン塩酸塩は、1971年にイタリアのアンジェリーニ社で開発されたトリアゾロピリジン誘導体の抗うつ薬です。開発当初は慢性疼痛の治療薬として考えられていましたが、抗うつ効果も見出され、抗うつ薬として使われ始めました。

1982年にはアメリカで、ブリストル・マイヤーズスクイブ社の子会社のメッドジョンソン社からDesyrelの名前で発売されました。

日本では1984年に鐘紡株式会社(現:オルガノン)が開発に着手し、1988年から阪急共栄物産株式会社(後の日本アップジョン)が開発に参加し1991年に共同で発売しました。

鐘紡の販売名がレスリン、日本アップジョンはアメリカのメッドジョンソン社の販売名をそのまま使ってデジレルとして販売しました。

デジレル(Desyrel)の名前の由来は「Depressive Symptom Releiver(うつ症候軽減薬)」の略です。



睡眠薬っぽい抗うつ薬トラゾドン

トラゾドンは5HT2a/c受容体に拮抗する作用と、SERTを阻害する作用を兼ね備えている薬です。

不安に関連するセロトニン5HT2a/c受容体の拮抗とセロトニン再取り込み阻害作用によりセロトニンが効率よく働くことで抗うつ作用を示します。

しかし、アドレナリンα1受容体及びヒスタミンH1受容体遮断作用をもつため眠気の副作用があります。

この強い眠気のため、睡眠薬っぽい抗うつ薬として認知され、それどころか睡眠薬として書籍で紹介されていたりします。

適応用量は75mg~200mgですが、酷い眠気とふらつきのためここまで増量されることはほとんど無く、多くは50mg程度を眠前に服用されています。

25~50mgではセロトニン再取り込み阻害作用はほとんど無く、H1受容体遮断とセロトニン5HT2a/c受容体拮抗作用のみ現れます。

睡眠では5HT2c活性の低下は徐波睡眠を増やして深い眠りを与えると考えられています。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の乱用が叫ばれる昨今、価値のある睡眠薬です。


デジレルの代替品

デジレルには併売品のレスリンがあります。

そのほか、デジレル・レスリンには後発品があります。

2023年8月28日月曜日

アクトヒブ 薬価収載2023.08.30

乾燥ヘモフィルスb型ワクチン(破傷風トキソイド結合体)「アクトヒブ」(以下、アクトヒブ)が、2023年8月30日付で薬価基準に収載されることが、2023年8月23日中医協総会にて了承されました。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00202.html


なぜ、アクトヒブが薬価収載されたのでしょうか?

通常、予防に使うワクチンは保険適応にならず薬価基準には収載されません。アクトヒブも2008年12月に発売されたときには薬価収載されていませんでした。

今回、アクトヒブが薬価基準収載されることとなった背景は2023年3月にインフルエンザ菌b型に対するワクチン接種が事前に必要な薬剤である「エムパベリ皮下注1080mg」が製造販売承認を取得したことにより、混合診療による保険給付の制限を回避するためです。

なおアクトヒブは、成人(造血幹細胞移植後や免疫を低下させる薬剤が投与された患者等)への接種ができるように、2023年6月1日に添付文書の改訂が行われ、5歳未満の年齢制限がなくなり、すべての年齢において接種が可能になっています。


アクトヒブの薬価(2023年8月時点)

10㎍1瓶(溶解液付) 4,941円


算定方式は類似薬効比較方式(I)で比較薬は肺炎球菌ワクチンのニューモバックスです。また、アクトヒブが標準的に予防接種法における定期接種のワクチンとして位置付けられていることから、有用性加算、新薬創出・適応外薬解消等促進加算が適応されました。


アクトヒブはどんな人が保険適応されますか?

添付文書の「25.保険給付上の注意」に記載があります。

アクトヒブはペグセタコプラン「エムパベリ皮下注1080mg」投与患者に保険給付が限定されます。

エムパベリRMP資料より


2023年3月21日火曜日

ビデュリオン皮下注用2mgペン 販売中止と代替品(経過措置2023年3月31日迄)

ビデュリオン皮下注用2mgペンが販売中止となるようです。2022年5月販売中止。


経過措置期間は2023年3月31日です。
2023年4月からは保険請求はできません。


販売中止の理由は、明確にはされていませんが「競合が多く、市場が厳しい」ことが理由だとも言われています。


ビデュリオン皮下注用2mgペンの有効成分であるエキセナチドはGLP-1の主成分であるGLP-1(7-36)amideの対応部分のアミノ酸配列において53%の相同性を示し、化学合成により製造されています。ビデュリオンはGLP-1受容体作動薬に分類される2型糖尿病治療薬です。薬理作用については、膵β細胞からのグルコース依存性のインスリン分泌促進作用、高血糖時における過度のグルカゴン分泌抑制作用などが考えられています。これにより2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善します。

エキセナチドは、2005年4月に1日2回投与製剤のバイエッタ皮下注として米国において世界で初めて承認を取得しています。日本においては2010年10月に承認されています。
ビデュリオンは、エキセナチド(バイエッタ皮下注)の週1回投与製剤として開発されました。エキセナチドを生分解性のポリ乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)のマイクロスフェア内に包埋することにより、週1回皮下投与の徐放性製剤として、エキセナチドを1日2回皮下投与するバイエッタ皮下注と同様な効果を示すように設計されています。

ビデュリオンは皮下投与するとPLGAが徐々に分解され、長時間にわたり循環血中にエキセナチドを放出するため、有効成分であるエキセナチドによる効果が持続し、週1回投与で2型糖尿病患者の血糖コントロール改善を可能としています。
もともとビデュリオンのシリンジ製剤をイーライリリー社とアミリン社で共同開発していました、2001年頃の話です。日本においては2012年に日本イーライリリー株式会社が製造販売承認を取得しその後、2012年11月にアストラゼネカ株式会社に承継されています。(当初からリリーはビデュリオンに見切りをつけてトルリシティに軸を移していたのでしょうか)

シリンジ製剤はバイアルに入ったエキセナチドマイクロスフェア、シリンジに充塡された懸濁用液、バイアルコネクター及び専用注射針を組み合わせ、単回投与用のキット製剤として提供されていましたが、調製及び操作手順が煩雑で使えたものではありませんでした。。

そのため患者がより簡便に自己注射できる製剤を検討し、エキセナチドマイクロスフェア及び懸濁用液がカートリッジ内に予め組み込まれた単回使用ペン型注入器が開発され2015年に承認されました。ペン型製剤の登場によりシリンジ製剤は販売を中止し2018年3月に薬価基準から削除されました。ペン型製剤を市場に投入しましたが、既にペン型製剤でシェアを獲っていたトルリシティの後塵を拝し2022年ビデュリオンは販売を中止しました。


ビデュリオンの代替品

エキセナチド1日2回投与製剤のバイエッタ皮下注が候補になります。

ただ、ビデュリオンからバイエッタ皮下注に切り替える際には、ビデュリオンとバイエッタ皮下注では併用可能な薬剤が異なるので注意が必要です。

ビデュリオンは、以下の場合に適用可能です。
食事療法・運動療法に加えて
スルホニルウレア剤、
ビグアナイド系薬剤及び
チアゾリジン系薬剤
(各薬剤単独療法又は併用療法を含む)
による治療で十分な効果が得られない場合

一方、バイエッタ皮下注は、
食事療法・運動療法に加えてスルホニルウレア剤単剤療法、
あるいは
スルホニルウレア剤を含むビグアナイド系薬剤又はチアゾリジン系薬剤
との併用療法で効果不十分な場合
に適用可能です。

ビデュリオンは、
スルホニルウレア剤を使用していない場合であっても、
ビグアナイド系薬剤及びチアゾリジン系薬剤の単独療法あるいは併用療法で効果が不十分な場合であれば適用が可能ですが
バイエッタ皮下注はスルホニルウレア剤の使用していることがマストとなっています。

以上のようにビデュリオンとバイエッタ皮下注では併用可能な薬剤が異なるため、ビデュリオンからバイエッタ皮下注に切り替える際には注意が必要です。

GLP-1受容体作動薬(注射)除く配合剤

ビデュリオンと同様に注射回数が減らせる長時間作用型が良い場合は、それぞれ特徴をもつデュラグルチド(トルリシティ)、セマグルチド(オゼンピック)、チルゼバチド(マンジャロ)が候補になります。

デュラグルチドは日本での承認用量ではありませんが心血管イベント抑制の有効性が実証されています。[PMID: 31189511]

セマグルチドは体重抑制・体重低下に関する報告が多く、日本でも「やせ薬」として『ウゴービ皮下注』として承認される見込みです。

チルゼパチドはGLP-1の他にGIP受容体にも作用し、日本人において顕著なHbA1c低下と体重減少をもたらすことが報告されています。[PMID: 35914543]


ゼストリル 販売中止と代替品(経過措置2023年3月31日迄)

ACE阻害薬のゼストリルが販売中止となるようです。2022年5月販売中止。

経過措置期間は2023年3月31日までです。
2023年4月からは保険請求できません。


ゼストリルの有効成分であるリシノプリルは,米国メルク・シャープ・アンド・ドーム社の研究所において 1970 年代の後半に200 種以上の N-カルボキシメチル置換ジペプチド誘導体の中から、SH 基を有さず、強力なアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性を有する化合物として合成されました。その後、米国メルク社と英国インペリアル・ケミカル・インダストリー PLC 社〔英国 ICI 社(現英国アストラゼネカ社)〕と降圧薬として共同開発されました。日本では1985 年より臨床試験を開始し、1991年6月に高血圧症の治療薬として承認を得ました。アストラゼネカと塩野義製薬によるプロモーションが開始されアストラゼネカはゼストリル、塩野義製薬はロンゲスの一物二名称で販売されました。

後に、慢性心不全についても、開発が行われ、ジギタリス製剤、利尿剤等の基礎治療剤を投与しても十分な効果が認められない軽症から中等症の慢性心不全に対する治療薬として、1995年6月に承認を得ています。

2022年に販売中止が決定されました。


ゼストリルの代替品

同一成分のロンゲスがあります。発売開始当初は塩野義製薬が販売していましたが、2016年に共和薬品工業株式会社に販売移管されています。

また、ゼストリルやロンゲスには後発品があります。

ACE阻害薬一覧(2023年3月時点)


2023年3月17日金曜日

ソロン錠・カプセル・細粒 販売中止と代替品(経過措置:2023年3月31日迄)

ソロン錠50、ソロンカプセル100、ソロン細粒20%が販売中止となるようです。
https://medical.taisho.co.jp/di/oshirase/others/202110sl.pdf

経過措置は2023年3月31日までです。(2023年4月1日以降は保険請求ができません)
https://medical.taisho.co.jp/di/oshirase/others/202301sl.pdf


ソロンはソファルコンを有効成分とする胃炎・胃潰瘍治療剤です。内因性プロスタグランジン増加作用、血流増加作用、粘液増加作用等、多面的な防御因子増強作用により、粘膜保護・組織修復を促進する作用があります。
ソファルコンの起源はは、古来より中国において主として消化器疾患の治療剤に用いられてきた漢薬広豆根(Sophora subprostrataの根)です。大正製薬株式会社がこの成分のスクリーニングを行い、その成分の一つであるソフォラジンに抗潰瘍作用のあることを見出しました。しかし、ソフォラジンは抽出あるいは合成収率が僅少であり、また化学的にも安定性を欠くため、ソフォラジンの類縁のイソプレニルカルコン誘導体を多数合成し、スクリーニングを行いました。その結果、ソファルコンが有効性、安全性並びに化学的安定性の面から、最も適切な消化性潰瘍治療剤になり得ると判断され、医薬品としての開発が始まりました。そして、ソロンカプセル及びソロン細粒が1984年に発売されました。
コンプライアンスの向上をはかることを目的に、患者個人の条件に合った最適な治療を可能にするため、これまでのカプセル剤、細粒剤に加え、新たにソロン錠が1994年発売されました。ソロン細粒はコンプライアンスの向上を目的に、1回に服用する製剤量を半量にし、清涼感のある風味(スペアミント)をつけた粒剤20%として2004年にマイナーチェンジされました。
2021年に販売中止が案内され、40年近い歴史に幕を閉じました。

 

胃潰瘍治療のソファルコンの位置づけ

胃潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)において、防御因子増強薬は酸分泌抑制薬と併用されることがあります。しかしPPIを使用する場合、PPIと防御因子増強薬の併用によっても潰瘍治癒の上乗せ効果は得られないため、PPIの単独投与が推奨されます。H2ブロッカーとテプレノンとの併用では潰瘍治癒の上乗せ効果がありますが、ソファルコンの併用には上乗せ効果はありません。
また、ソファルコンは胃潰瘍に対する非除菌治療(初期治療)では、プラセボとの比較について胃潰瘍治癒効果に関するエビデンスに乏しいとされています。酸分泌抑制薬と同等の胃潰瘍治癒効果を期待できないので、単剤では第一選択薬として勧められず、PPI、ボノプラザン、H2ブロッカー、スクラルファート、ミソプロストールのいずれの薬剤も投与できない場合に使用されるにとどまっています。


ソロンの代替品

ソロンには後発品が存在します。

ソファルコン細粒20%「YD」
ソファルコン細粒20%「サワイ」
ソファルコン細粒20%「TYK」
ソファルコン細粒10%「YD」
ソファルコン細粒10%「サワイ」
ソファルコン錠50mg「TCK」
ソファルコンカプセル100mg「TCK」


胃潰瘍治療においてソロンを選択する場合は、PPI、ボノプラザン、H2ブロッカー、スクラルファート、ミソプロストールのいずれの薬剤も投与できない状況が想定されます。ソロン以外の防御因子増強薬(スクラルファート、ミソプロストールを除く)には以下があります。

  • テプレノン(セルベックス)
  • レバミピド(ムコスタ)
  • イルソグラジンマレイン酸塩(ガスロンN)
  • スルピリド(ドグマチール)
  • セトラキサート塩酸塩(ノイエル)
  • トロキシピド(アプレース)
  • ベネキサート塩酸塩ベータデクス(ウルグート)
  • アズレンスルホン酸ナトリウム水和物(マーズレン)
  • アルギン酸ナトリウム(アルロイドG)
  • アルジオキサ
  • エカベトナトリウム水和物(ガストローム)
  • エグアレンナトリウム水和物(アズロキサ)
  • スクラルファート水和物(アルサルミン)
  • ポラプレジンク(プロマック)
  • メチルメチオニンスルホニウムクロリド(キャベジンU)

2023年3月15日水曜日

ニフラン錠75mg 販売中止と代替品(経過措置:2023年3月31日)

ニフラン錠75mgが販売中止となるようです。
https://medical.mt-pharma.co.jp/di/file/info/ifn_5389_P20288.pdf

経過措置期間:2023年3月31日迄
2023年 4月 1日以降の投薬分につきましては、保険請求ができなくなります。

ニフラン錠はプラノプロフェンを有効成分とする。日本初のプロピオン酸系の酸性非ステロイド性鎮痛・抗炎症・解熱剤です。
プラノプロフェンはサリチル酸系とプロピオン酸系薬剤の薬理作用を併せもつ三環構造を基本骨格とする化合物として創製されました
1981年6月4日プラノプロフェン製剤(ニフランカプセル)の承認を取得し、1981年12月にニフランカプセルの販売が開始されました。ニフランカプセルの販売開始後、高齢者や嚥下困難な患者での服用の容易化を目的に1988年9月よりニフラン錠の販売を開始されました。これに伴いニフランカプセルは販売を中止しています。
誕生から35年、二フラン錠剤はその役目を終え販売中止となりました。


ニフラン錠の代替品

ニフラン錠には後発品があります。
ただ、後発品には錠剤はなくすべてカプセル剤です。

  • プラノプロフェンカプセル75mg「日医工」


「痛風発作」の適応を持つNSAIDs
ニフラン錠は、「痛風発作」の適応を持っているのが特徴です。
ニフランと同じプロピオン酸系のNSAIDsには痛風発作の適応をもつものがいくつかあります。

  • アルボ(オキサプロジン)
  • ナイキサン(ナプロキセン)