2018年10月29日月曜日

スローケー販売中止と代替品

徐放性カリウム剤のスローケー錠600mgが販売中止となるようです。

販売中止のご案内(ノバルティスファーマ)
https://drs-net.novartis.co.jp/siteassets/common/pdf/discontinued_list/an_slk_201810.pdf

経過措置期間満了日: 2021年 3 月末日
※2021 年 4 月 1 日以降の保険請求はできません。


スローケー錠は塩化カリウムを含有する徐放錠です。
Wax Matrixという構造をもつ製剤的工夫が施された錠剤です。服用後消化管内で pH に関係なく徐々に塩化カリウムを放出し、消化管内において局所的高濃度になることを避け、カリウムによる消化管刺激を軽減し、より吸収されやすくするようにデザインされた徐放性製剤です。1976年2月に発売され約40年臨床現場で活躍してきました。

スローケーの代替品

スローケーのような経口カリウム製剤は低カリウム血症の補正に使われる薬です。特に緊急を要しない場合に使用されます。
経口カリウム製剤には、塩化カリウムやグルコン酸カリウム、L-アスパラギン酸カリウムなどの有機酸カリウムがあります。

塩化カリウム徐放錠600mg「St」(旧販売名:ケーサプライ錠 600mg)
スローケーには後発品があります。スローケーよりも錠剤が一回り小さいです。ただ、小さいとはいえ11mmあります。
先発品の販売中止で切り替え需要が高まり入手しづらくなっています。

K.C.Lエリキシル
スローケーと同じ塩化カリウム製剤です。10w/v%の液体製剤です。1mLあたり1.34mEqのカリウムが含まれています。徐放剤ではないので1日20~100mL を数回に分けて服用します。塩化カリウムの局所的な腸管刺激作用により胃腸障害などをきたすことがあるため液剤なのに大量の水と一緒に飲む必要があります。さらに、かなり強い苦味があるので飲みにくいことこの上ない薬です。アルコールを含むためアルコールに弱い人は注意が必要です。

有機酸カリウム製剤|アスパラカリウム、グルコン酸K
●アスパラカリウム
1錠1.8mEqのカリウムを含む錠剤と1gあたり2.9mEq含む散剤があります。カリウム5.4mEq~約16mEqを1日3回に分けて服用します。

Lアスパラギン酸カリウムは塩化カリウムに比べ2倍以上組織移行、保持能力が良いとされているのでアスパラカリウムの常用量は塩化カリウム製剤の常用量に比べ少なくなっています。スローケーからアスパラカリウム散へ切り替える際には1日量1.8 ~ 5.4gの中で、血中カリウム濃度を確認するなど患者さんの様子をみて加減する必要があります。

●グルコン酸K
1錠5mEqと2.5mEqのカリウムを含む錠剤と1gあたり4mEq含む散剤があります。1回あたりのカリウム量10mEqを1日3~4回服用します。大きさが2cm近くある錠剤は飲みづらいのですが、服用直前に割って飲むことができます。

塩化カリウム製剤と有機酸カリウム製剤
有機酸カリウム製剤は代謝物が重炭酸イオンとなるので、代謝性アルカローシスとなる可能性があります。また、既に代謝性アルカローシスを合併している低カリウム血症での補充には不向きです。

代謝性アルカローシスがある場合は塩化カリウムでの補充がよいでしょう。
有機酸カリウム製剤は、下痢や代謝性アシドーシスを合併した低カリウム血症に向いています。ただしアシドーシスの是正が低カリウム血症を増悪させるため、カリウムの補正を優先して塩化カリウムが基本となっています。