2020年6月19日金曜日

2021年3月スタート予定 薬局等でのマイナンバーカードをつかった保険資格確認

令和元年5月に「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」が成立したことを受けて、2021年3月からマイナンバーカードまたは被保険者証により、医療機関等の窓口においてオンラインで加入者の資格を確認する仕組み【オンライン資格確認】が導入される予定です。

オンライン資格確認を円滑に導入するため、マイナンバーカードを読み取る機械(顔認証付きカードリーダー)は、なんと医療機関及び薬局に無償提供されます。素晴らしい税金の使い方です。
さらに、カードリーダーだけでは何もできませんから、レセコンの改修などが必要になりますが、初期導入経費(システム改修等)については、医療情報化支援基金による補助金を活用でるみたいです。薬局は32.1万円を上限に補助が受けられるようです。


いつ、カードリーダーが届くのでしょうか。
カードリーダーの無償提供を受けるには申込みが必要です。
支払基金が2020年7月頃に医療機関・薬局向け専用ポータルサイトを開設する予定です。そのポータルサイトで、顔認証付きカードリーダーの申込、オンライン資格確認等システムの利用申請及び医療情報化支援基金の補助申請の受付が行われます。顔認証付きカードリーダーの申込時期や詳細はポータルサイトのアカウント登録をしたメールに届くようなので、まずはポータルサイトのアカウントを作成しましょう。

なお、改修費用の補助金はシステム改修後、オンライン資格確認の導入準備が完了した後に、支払基金に補助申請を行うことになります。つまり事前申請ではなく、精算払いとなり医療機関・薬局における申請は導入作業後の11月以降です。


オンライン資格確認とは



そもそもオンライン資格確認とはどういったものなのでしょうか。
オンライン資格確認は「ICチップ内に格納された利用者証明用電子証明書付きのマイナンバーカード」又は「健康保険証の記号・番号等」で行います。
マイナンバーカードであれば「顔認証または暗証番号による本人確認」、健康保険証であれば「記号・番号等の入力」をすることで、オンライン資格確認等システムで患者の最新の資格情報を確認することが可能になります。



オンライン資格確認を導入することで得られるメリット

①資格情報の登録作業の削減
 患者の最新の資格情報を、医療機関システムへ取り込むことが可能になります。マイナンバーカードでは自動的に取得できますが、健康保険証では最小限の情報の入力が必要です。

<医療機関のメリット>
  1. 患者の資格情報の入力・再診時のチェック作業の軽減
  2. 正確な資格情報の取得(誤入力リスクの軽減) 

<患者のメリット>
  1. 医療機関等における受付時の待ち時間の短縮


②返戻レセプトの減少による事務負担の軽減
 患者の最新の資格情報が医療機関・薬局で確認可能となるため、資格喪失等によるレセプトの返戻が減少し、患者へ資格確認を行う業務が軽減されます。


また、審査支払機関において電子レセプトの資格情報を確認し、レセプトの請求先が変更となる場合は、電子レセプトの算定日情報等に基づき、請求先の振替又は請求先ごとにレセプトを分割して請求します。


<医療機関のメリット>
  1. 受付時に最新の資格情報が確認可能 ∴請求先誤りによる返戻レセプトが減少
  2. 保険者等からの請求先誤りに関する問い合わせが減少
  3. 保険者や患者等に対する資格情報の照会業務が軽減
  4. オンライン資格確認を未実施の医療機関等においても資格喪失等による返戻レセプトが減少


③限度額適用認定証等の連携
 患者から情報閲覧の同意が得られた場合は限度額適用認定証等の情報が取得可能となり、患者から保険者への申請がなくても、患者は限度額以上の医療費を窓口で支払う必要が
なくなります。 
限度額適用認定証および限度額適用・標準負担額減額認定証の情報はマイナンバーカードもしくは健康保険証で、特定疾病療養受療証の情報はマイナンバーカードにより本人確認を行った後、本人が同意した場合に資格情報を閲覧・取得することができます。

<医療機関のメリット>
  1. 加入者(患者)へのサービスの向上

<患者のメリット>
  1. 保険者へ限度額適用認定証等の申請手続きが不要
  2. 医療機関等の窓口に、限度額適用認定証の提示が不要
  3. 医療費が高額となった場合、申請手続きを行わなくても限度額以上の医療費の支払いが不要


④薬剤情報・特定健診情報の閲覧
 医師、歯科医師、薬剤師等の有資格者は、マイナンバーカードで患者の同意を確認した上で、「薬剤情報」や「特定健診情報」を閲覧することができます。ただし、薬剤師は薬剤情報の閲覧に限ります。
※薬剤情報の閲覧は2021年3年10月から開始されます。

<医療機関のメリット>
  1. お薬手帳の提示がなくても、患者の服薬履歴を確認でき、多剤投与や重複投与を防止可能
  2. 服薬履歴や健診結果を活用した診療や服薬指導等の実現

<患者のメリット>
  1. 服薬履歴や特定健診の結果を踏まえた診療を受けることが可能
  2. マイナポータルを活用して、医療機関等が処方した医薬品、特定健診の結果、医療費情報を確認し、自己の健康管理等に活用可能
  3. マイナポータルを通じて、医療費情報を取得し、医療費控除の手続きが可能

⑤災害時における薬剤情報・特定健診情報の閲覧
 災害時は特別措置として、マイナンバーカードによる本人確認ができない場合でも薬剤情報・特定健診情報の閲覧ができるよう、厚生労働省で検討されています。

<医療機関のメリット>
  1. 災害の混乱時であっても、患者の服用薬や健診結果を確認した診療が可能
<患者のメリット>
  1. 主治医以外の医師に、普段服用している医薬品等の処方を受けることが可能


Q&A


Q. オンライン資格確認を導入したら、患者はマイナンバーカードがないと受診できないのですか?
A. 健康保険証でも受診できます。健康保険証とマイナンバーカードのどちらでもオンラインで資格確認ができるようになりますが、健康保険証の場合は記号番号等の入力が必要となります。
Q. 医療機関・薬局では患者のマイナンバー(12桁の番号)を取り扱うのですか?
A. 医療機関・薬局において患者のマイナンバー(12桁の番号)を取り扱うことはありません。オンライン資格確認では、マイナンバーではなく、マイナンバーカードのICチップ内の利用者証明用電子証明書を利用します。
Q. 医療機関・薬局内のレセプトコンピューター等の情報を支払基金・国保中央会が閲覧できるようになるのですか?
A. オンライン資格確認は、支払基金・国保中央会から資格情報等を提供する仕組みです。支払基金・国保中央会が、医療機関・薬局の診療情報等を閲覧したり、取得することはできません。
Q. オンライン資格確認は必ず導入しなければいけませんか?
A. 導入は義務ではありませんが、資格の確認を確実に行うことは保険制度の基本です。 また、オンライン資格確認を行うことにより、受付、診療・調剤・服 薬指導、診療報酬請求について効率化が図られるため、導入の検討をお願いします。 オンライン資格確認を導入した医療機関・薬局ではマイナンバーカードを健康保険証として利用できるようになります。
Q. 患者はマイナンバーカードを持っていればすぐに健康保険証として利用できるのでしょうか?
A. マイナンバーカードを健康保険証として利用するためには、あらかじめ患者がマイナポータルで初回登録をすることが必要です。なお、初回登録をしていない患者が受診した場合でも、医療機関・薬局の窓口において、顔認証付きカードリーダーによる認証または暗証番号(4桁)による認証を行うことで、初回登録ができます。
Q. マイナンバーカードの取扱いで気をつけるべきことはありますか?
A. 医療機関・薬局の窓口ではマインナンバーカードは預かりません。患者においては、顔認証付きカードリーダーの場合はカードリーダーに置いていただく、汎用カードリーダーの場合はカードリーダーにかざすとともに受付職員に見せていただきます。
Q. 患者がマイナンバーカードを忘れたらどのようにしたらよいですか?
A. 現行の健康保険証を忘れた場合の取り扱いと同様になります。もし、患者が健康保険証を持参していれば、健康保険証によるオンライン資格確認を実施してください。
Q. 医療機関・薬局でマイナンバーカードが健康保険証として使えることを、どのように患者さんに伝えたら良いですか?
A. マイナンバーカードでのオンライン資格確認が利用できることのポスター等を準備し、医療機関・薬局に送付させていただきます。
Q. オンライン資格確認はいつから始まりますか?
A. 令和3年3月から始まります。
Q. いつから準備を始めればよいですか?
A. 令和2年8月頃から導入作業を実施いただければ、令和3年3月のオンライン資格確認の開始に間に合います。 ご担当のシステムベンダ等にご相談ください。
Q. オンライン資格確認を利用するための手続きは、何が必要ですか?
A. ポータルサイトから、支払基金に利用の申込みをしていただく必要があります。手続きの内容・方法については、令和2年7月頃に示します。
Q. オンライン資格確認を始めるには、まず何をすればよいですか?
A. ご利用のシステムやネットワークの状況によって詳細が異なりますので、まずはご担当のシステムベンダやネットワークベンダにご相談ください。
Q. オンライン資格確認のためのシステム改修に関して、補助申請を行う時期はいつ頃ですか?
A. システム改修後、オンライン資格確認の導入準備が完了した後に、支払基金に補助申請を行っていただくことになりますので、医療機関・薬局における導入作業後である11月以降となります。(事前申請ではなく、精算払いとなります。)
Q. オンライン資格確認のための補助の詳細や手続きはいつ示されるでしょうか?
A. 補助申請の手続きについては支払基金から7月以降にお示しする予定です。
Q. レセプトのオンライン請求を利用していませんが、オンライン資格確認を始めることはできますか?
A. オンライン請求の回線環境を導入することで、オンライン資格確認を始めることが可能です。オンライン資格確認を行うために回線環境の導入をした場合にも、その回線費用は医療情報化支援基金の補助対象となります。

この記事では、患者向けの情報には触れませんでしたが、厚生労働省のページにマイナンバーカードの保険証利用についての患者向け解説が掲載されています。
・厚生労働省HP「マイナンバーカードの保険証利用についてお知らせします(被保険者向け)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08277.html


【参考】
・厚生労働省「オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08280.html