2019年3月5日火曜日

カリクレイン錠 販売中止と代替品


循環系作用酵素製剤のカリクレイン錠10単位が販売中止となるようです。

販売中止のお知らせ|バイエル薬品 2019年1月
https://pharma-navi.bayer.jp/omr/online/notice_info/KAL_PNS_201901070_1545022917.pdf

経過措置期間:未定


カリクレイン錠は新鮮な豚の膵臓から抽出生成された糖タンパク質からなる酵素であるカリジノゲナーゼを主成分とする薬剤です。
カリジノゲナーゼは1925年にヒトの尿中に存在する血圧を下げる物質として、ミュンヘン大学のFreyの研究グループによって発見されました。その後、バイエル社が降圧薬として研究・開発に着手し1930年代に製剤化に成功しました。
日本では、1951年当時の吉富製薬がドイツのバイエル社から輸入を取扱い国内の流通が開始されました。

2019年の販売中止まで約70年間医療現場で活躍した薬です。
カリクレインはカリクレイン・キニン系に作用する唯一の薬剤で、発売当初はレセルピンとともに高血圧や末梢循環改善の治療に使用されてきました。最近は降圧剤としての使用よりは、高血圧に伴う肩こり、頭痛症例に対して使われることが多いです。また基礎的な検討において蝸牛血流の増加が報告されていることから耳鼻科領域でめまい患者にも処方されています。


カリクレイン錠10単位の代替品


カリクレインの代替品として同じカリジノゲナーゼ製剤であるカルナクリンやサークレチンS及びその後発品があげられます。

効能効果はカリクレインもカルナクリンも同じです。
違いは、1錠あたりのカリジノゲナーゼの量です。
カリクレインが1錠あたり10単位なのに対し、カルナクリンは25単位と50単位配合されています。
また用法用量はカリクレインは1日量が30~60単位 分3なのに対しカルナクリンは30~150単位 分3と異なっています。

カルナクリン50単位はカリクレインの2倍程度の薬価しか差がないですがカリジノゲナーゼの量は5倍です。そのお得感もあってかはわかりませんが、処方量もカリジノゲナーゼ製剤の中では1位(第3回NDBデータ)となっています。2位はカルナクリンの後発品、カリジノゲナーゼ錠50単位「日医工」です。


カリクレイン錠から切り替えるとしたら、薬効的にはどのカリジノゲナーゼ製剤でも大差はないでしょう。そこで、錠剤のサイズに着目してみたいと思います。

カリクレインの錠剤の大きさは以下のとおりです。
直径(mm)6.2
厚さ(mm)2.6~3.1
色 白色

直径の長さが近いカリジノゲナーゼ製剤は次の通り。

  • カリジノゲナーゼ錠25単位「アメル」 
    6.3 mm 白色〜微黄白色
  • カリジノゲナーゼ錠25単位「サワイ」 
    6.2 mm 淡橙色
  • カリジノゲナーゼ錠25単位「日新」  
    6.3 mm 白色〜微黄白色
  • カリジノゲナーゼ錠50単位「日医工」 
    6.3 mm だいだい色
  • サークレチンS錠25
    6.6 mm 白色


「日医工」は25単位の間違いではありません。50単位のほうがサイズが小さく設計されているようです。


カリジノゲナーゼの作用機序


カリジノゲナーゼ(kallidinogenase)は血漿中のキニノーゲンからキニンを遊離させ、このキニンが直接血管平滑筋に作用して血管を拡張させます。さらにキニンはプロスタグランジン(PG)や一酸化窒素(NO)の産生を介して微小循環障害を改善すると考えられています。
適応疾患
1)以下の疾患における末梢循環障害の改善:高血圧症、メニエール症候群、閉塞性血栓血管炎(ビュルガー病)
2)以下の症状の改善:更年期障害、網脈絡膜の循環障害