地域フォーミュラリは、医療の質を保ちつつ医薬品の有効性・安全性・経済性を最適化する取り組みとして、日本各地で広がっています。2025年9月現在、16地域で推進されています。
政府の「経済財政運営と改革の基本方針2025」では、地域フォーミュラリの普及推進が明記されており、KPI設定を通じたさらなる拡大が期待されます。
地域フォーミュラリとは?
地域フォーミュラリは、医師会・薬剤師会・病院が連携し、科学的根拠に基づいた推奨医薬品リストを作成・運用する仕組みです。地域の医療資源を効率化し、患者の負担軽減や医療費抑制を目指します。
推進地域とフォーミュラリーリストの公開状況
| 地域 | 概要 | リスト公開状況 | 参考リンク |
|---|---|---|---|
| 山形県 - 酒田地区(庄内地域) | 国内初の地域フォーミュラリ事例(2018年開始)。薬局の在庫最適化や医療費抑制に成功。 | 非公開(医療従事者向け運用) | 日本海総合病院フォーミュラリ資料 |
| 山形県 - 北庄内地区 | 酒田地区の成功を受け、近隣で展開。日本海ヘルスケアネットがカバー。 | 非公開 | 日本フォーミュラリ学会ガイドライン |
| 大阪府 - 八尾市地区 | 地域医療連携によるフォーミュラリ推進。2020年委員会形成、2021年運用開始。 | 非公開(セミナーで議論あり) | 広島県薬剤師会セミナー資料 |
| 茨城県 - つくば地区 | 研究都市ならではの医療連携で推進。2022年開始、2023年更新。 | 非公開 | 日本フォーミュラリ学会ガイドライン |
| 北海道 - 札幌市手稲区(ていね地区) | 地域医療の標準化を目指す。「ていね地域フォーミュラリ」として2023年完成。 | 非公開 | 日本フォーミュラリ学会 |
| 北海道 - 上川北部地区 | 広域エリアでの取り組み。上川北部医療連携推進機構が主導。 | 非公開 | 日本フォーミュラリ学会ガイドライン |
| 広島県 - 三次市・庄原市(備北地区) | 備北メディカルネットワークが中心となり推進。2023年からモデル事業。 | 非公開(モデル事業の振り返り資料あり) | 広島県薬剤師会セミナー, 備北メディカルネットワーク |
| 秋田県 - 潟上市・三種町地区 | 地域連携による医薬品適正使用。AFSSがカバー。 | 非公開 | 厚生労働省科学研究報告 |
| 宮城県 - 仙台市宮城野区 | 都市部でのフォーミュラリ実践。 | 非公開 | 日本フォーミュラリ学会ガイドライン |
| 茨城県 - 古河市地区 | 地域医療の効率化を目的。 | 非公開 | 日本フォーミュラリ学会ガイドライン |
| 沖縄県 - 中南地区 | 沖縄県全体の取り組みの一環。 | 非公開 | 沖縄県医療関連ページ |
| 埼玉県 - 朝霞市地区 | 薬剤師会が主導。 | 非公開 | 日本フォーミュラリ学会ガイドライン |
| 長野県 - 飯田市・下伊那地区 | 南信州地域での連携。(注: ガイドラインに明示されていないが、関連事例から補完) | 非公開 | 飯田市HP |
| 徳島県 - 県内複数地域(マニュアル推進基盤) | 県全体でマニュアルを整備し、リスト作成を支援。災害時対応も考慮。 | 非公開だが、リスト作成テンプレートあり | 徳島県フォーミュラリマニュアル |
| 広島県 - 県内広域(研修推進) | 県全体での研修を通じた推進。 | 非公開 | 広島県ジェネリック医薬品推進 |
| 沖縄県 - やんばる地区(北部地区) | 北部地区薬剤師会が積極的に推進。スタチン系や鎮痛剤のリストを公開。 | 部分公開(特定領域のリストあり)。例: HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)、歯科用鎮痛剤、インフルエンザ治療薬。 | 北部地区薬剤師会フォーミュラリページ, スタチンリスト, 鎮痛剤リスト, インフルエンザリスト |
フォーミュラリーリスト公開の現状と課題
院内フォーミュラリーの場合、多くの病院が地域の薬局向けに推奨薬リストをホームページ上で公開しているところは珍しくなくなってきました。しかし、ほとんどの地域でフォーミュラリーリストは地域の関係者のみに限定的に公開されており、公衆向けの完全公開は稀です。沖縄県やんばる地区のように、一部リストや啓発資材を公開する地域もありますが、全体としては内部運用が主流です。これは、リストが地域の医療ニーズや地域医師会へ忖度しているためと考えられます。
日本フォーミュラリ学会のモデルリスト(会員向け)が多くの地域で参考にされており、標準的なリスト作成の基盤となっています。徳島県のように、マニュアルを公開する動きは、他の地域への普及に役立つはずです。
今後の展望
地域フォーミュラリは、2025年現在も拡大中です。厚生労働省や学会の支援により、新たな地域での導入が進む可能性があります。最新情報は、各都府県の薬剤師会や公式HP、日本フォーミュラリ学会のガイドラインで確認することをおすすめします。