2026年3月9日月曜日

2026年(令和8年度)調剤報酬改定:重要供給確保医薬品の備蓄要件と薬局の実務対応

2026年4月施行の調剤報酬改定で、医薬品の安定供給体制が大きく注目されています。特に「地域支援・医薬品供給対応体制加算」の新設に伴い、重要供給確保医薬品(内用薬・外用薬)の備蓄が施設基準の重要な要件となりました。


1. 「重要供給確保医薬品」策定の背景

現在、医療用医薬品の約20%が限定出荷や供給停止となるなど、特に後発医薬品を中心に長年にわたる供給不足が続いています。令和2年末に発覚した後発医薬品企業の不祥事をきっかけとした供給不安に加え、海外で承認されているが日本では開発されない「ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス」の問題が顕在化。国民に必要な医薬品が届かないという、保健衛生上の重大な課題が生じています。

サプライチェーンの観点からも、βラクタム系抗菌薬の原材料が特定の国(例:中国)にほぼ100%依存しているなど、潜在的な供給リスクが明らかになっています。

こうした状況を受け、政府は「医薬品の安定供給体制の強化」を目的に、令和7年5月に医療法等を改正し、同年11月20日に施行しました。この改正により、平時からの供給状況モニタリングや、国がメーカーに対して供給不足防止措置を指示できる仕組みが整備され、その対象として「重要供給確保医薬品」が指定されることになりました。


医療法第三十七条第四項及び第三十八条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する供給確保医薬品及び重要供給確保医薬品の告示について(産情発 1118 第2号令和7年 11 月 18 日)


2. 「重要供給確保医薬品」の厳密な定義

改正医療法に基づき、以下の2段階で分類・指定されています。

① 供給確保医薬品とは

要指導医薬品や一般用医薬品等を除く「特定医薬品」のうち、次の4要素を勘案し、「安定的な供給の確保を図る必要性が高いもの」として厚生労働大臣が指定した医薬品です。重要度に応じてA群・B群・C群に分類されます。

  • 対象疾患の重篤性
  • 代替医薬品・治療方法の有無
  • 製造・供給に関する留意事項(サプライチェーン状況など)
  • その他厚生労働省令で定める事項(使用患者数の多さなど)
② 重要供給確保医薬品とは

上記の供給確保医薬品のうち、さらに上記要素を勘案し、「その安定的な供給の確保を図ることが特に重要なもの」として厚生労働大臣が指定した医薬品です。具体的にはA群(最も優先)B群(優先)の成分が該当します。

指定されると、厚生労働大臣はメーカー等に対し、原薬等の供給源多様化、一定在庫の備蓄などの「供給不足防止措置計画」の作成・届出を指示可能になり、有事には増産・輸入拡大も命じることができます。


3. 備蓄要件の対象となる「内用薬・外用薬」全18項目一覧

「地域支援・医薬品供給対応体制加算」の要件では、重要供給確保医薬品(A群・B群)のうち内用薬および外用薬に該当するものが対象。1か月分程度の備蓄を「努めること」とされています。

※表は横にスクロールできます

有効成分の名称 投与形態 薬効分類
A群アセトアミノフェン外用剤114 解熱鎮痛消炎剤
A群シクロスポリン内用剤399 他に分類されない代謝性医薬品
A群タクロリムス水和物内用剤399 他に分類されない代謝性医薬品
A群トロンビン外用剤332 止血剤
A群ワルファリンカリウム内用剤333 血液凝固阻止剤
B群エベロリムス内用剤399 他に分類されない代謝性医薬品
B群エベロリムス内用剤429 その他の腫瘍用薬
B群乾燥BCG膀胱内用(日本株)外用剤639 その他の生物学的製剤
B群コルヒチン内用剤394 痛風治療剤
B群ジアゼパム外用剤112 催眠鎮静剤、抗不安剤
B群テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤 (TS-1等)内用剤422 代謝拮抗剤
B群トルバプタン内用剤213 利尿剤
B群パゾパニブ塩酸塩内用剤429 その他の腫瘍用薬
B群バルガンシクロビル塩酸塩内用剤625 抗ウイルス剤
B群ヒドロキシカルバミド内用剤422 代謝拮抗剤
B群ヒドロキシクロロキン硫酸塩内用剤399 他に分類されない代謝性医薬品
B群フルドロコルチゾン酢酸エステル内用剤245 副腎ホルモン剤
B群ポリカルボフィルカルシウム内用剤239 その他の消化器官用薬

※注射薬やワクチンなどは備蓄対象外です。最新の告示で確認を。(エベロリムスは薬効分類違いで2項目扱い)


4. 留意点

本加算の備蓄要件を満たす際のポイントは以下の通りです。

全品目を揃える必要はありません

備蓄対象は、直近1年間(開設1年未満は開設月以降)の自局での調剤実績のある品目に限られます。過去1年間に一度も処方されたことのない成分は、無理に在庫を抱える必要はありません。

「自局」での在庫確保が必須

1か月分の使用数量(直近実績に基づく平均)を算出し、自局の棚に現に在庫を保有することが求められます。卸売業者が代わりに在庫を持っているだけでは要件を満たしません。

流通改善の徹底も要件

卸売業者への過度な急配・休日夜間配送依頼、在庫調整目的の返品を慎むこと、単品単価交渉の実施などが算定要件に含まれています。適正な取引ルールを遵守し、地域の安定供給拠点としての役割を果たすことが重要です。

まずは、レセコンデータから過去1年間の上記18項目の調剤実績と数量を抽出。備蓄すべき「1か月分」の具体的な数量を明確にしましょう。在庫管理システムの活用や地域薬局との連携も有効です。

まとめ:早めの体制整備を

2026年改定では、後発医薬品調剤体制加算が廃止され、地域支援・医薬品供給対応体制加算(加算1:27点など)に統合されます。後発品使用割合85%以上+安定供給体制が共通要件となり、重要供給確保医薬品の備蓄が薬局の存続に直結する可能性があります。

経過措置(旧加算届出薬局は令和9年5月31日まで一部みなし)もありますが、早めの対応をおすすめします。詳細は厚生労働省の告示・通知をご確認ください。

(2026年3月時点の情報に基づきます。最新情報を随時チェックしてください。)