2017年12月22日金曜日

医療用でも小さい浣腸はありますか?



医療用のディスポーザブルの浣腸といえば
写真のようなものが思い浮かびますよね。




上の写真は小児用の30mLタイプですがノズルが約9cmあります。(全長18cm)
これでも小さい方ですが・・・

患者さんによっては、イチジク浣腸のような小さいタイプのものはないかと希望されることがあります。


ノズルの短いものはないのかというと、実はあります。

それは『ケンエーG浣腸液』のSタイプです。
http://www.kenei-pharm.com/medical/products/2942/


ただ、メリットは小さいというだけで、アコーディオン方式をとっているLタイプに比べると薬液を押し出しにくく、逆流防止機構も備わっていないのでうまく注入するにはテクニックが必要です。



グリセリン浣腸の作用機序


便秘では便の体積が小さいことと、便が硬いことで排便が難しくなっていることが多いと考えられています。
そこで浣腸により液体を注入して直腸内部の体積を強制的に増加させて排出を容易にします。
硬さについては、浣腸液自体は液体なので硬さはなく非常に排出しやすいため浣腸液が一度に大量に排出される際、便も道連れににして一緒に出てくる仕組みです。
また、注入された浣腸液によって、便がふやけ若干膨張して柔らかくなります。グリセリン自体は中性脂肪の構成成分でもあり体内にも存在する物質なので無害です。さらにグリセリンは潤滑剤としても働き、便の滑りを良くするだけでなく直腸を刺激して蠕動運動を誘発します。
このように様々な機序で、坐薬以上に即効性かつ意図したタイミングで排便を催すことが可能です。

グリセリン浣腸を使用するときの注意点


まず、以下のいずれかに該当する場合は使用できません。
腸管内出血、腹腔内炎症のある患者、腸管に穿孔又はそのおそれがある。
全身衰弱の強い。
下部消化管術直後。
吐気、嘔吐又は激しい腹痛等、急性腹症が疑われる場合。

浣腸を使用する際の体勢には注意が必要です。
ゼッタイに立ったままでは浣腸をしてはいけません。
何故かと言うと、立ったままで浣腸のノズルを挿入すると直腸の腸壁を傷つけ炎症を起こしたり、孔が空いたりするからです。さらにそこからグリセリンが吸収されると、溶血や腎不全の恐れがあるため大変危険です。

ノズル挿入時のコツを紹介します。
まず、左を下にして横になります。挿入するときには浣腸の中身を少し出しノズルの先端を濡らしておくとスムースです。
挿入角度は、肛門から続く直腸はお腹側ではなく、頭部・背中側へ向かっているので、挿入も頭部・背中側へ向けるイメージで行います。
引っかかる感じがしてうまく挿入できないときは無理押しせずに少し引き戻し挿入の向きを再調整しましょう。抵抗があるのに無理に押すと、腸壁を傷つける可能性があります。

注入速度の目安は10秒あたり30mL程度のペースです。
注入後は動き回らず、寝転んだままでいましょう。特に注入量が多い場合(30mL 以上)には左を下にするか、うつ伏せが良いでしょう。そうすることで大腸の奥まで薬液が届きやすくなります。

浣腸液の温度にも注意が必要です。
温度が高い(43℃以上)と炎症を起こしてしまいます。つまり、やけどのようなものです。
では、温度が低いのはどうなのでしょうか。排便誘発の観点から考えると冷たいことは必ずしも悪いとはいえません。
冷たい浣腸液を注入すると刺激で腸の強い収縮が誘発され、痛みや気分不快感の原因になります。また浣腸液が十分深部に到達しないうちに便意が我慢できなくなってしまう可能性があります。
このため、浣腸を36~40℃程度にあたためておくと刺激が少なくてすみます。
直腸通過遅延型便秘で、浣腸の反応が悪い場合は温めないほうが反応が良い場合があります。