2022年1月19日水曜日

健胃消化薬(医療用医薬品)ちがい早見表 2022年1月

健胃消化薬の考え方

消化器官のはたらきは、食欲を高め、唾液や胃液等の分泌を促進し、消化をよくし、消化された物質をよく吸収し、不要なものなどを排泄させることです。

すなわち、消化器系異常の治療においては、食欲・分泌能・消化・吸収の全体像の把握が対象となり、一症状の改善に限定せず、消化器系全般の機能異常と考え、これらを正常に回復させることが、より合理的と考えられています。

この考えに従うと、消化器官のはたらきを総合的な改善効果をもたらすためには、消化及び吸収に作用する薬物、運動刺激に作用する薬物、分泌刺激に作用する薬物を同時に投与することが有効と考えられます。
これらの薬物を配合したものが健胃消化薬として広く使用されています。健胃消化薬は、制酸剤、消化酵素剤、健胃剤(生薬)の配合が基本となっています。

配合処方される薬剤については、個々の薬剤に一長一短があり、それぞれの特性を生かす為の 研究が重ねられ、より優れたものとして種々の処方が検討されてきました。

医療用の健胃消化薬はその配合により大まかに8つに分類できます。



  1. カンゾウ末配合剤
  2. ジアスターゼ・生薬配合剤
  3. センブリ・重曹
  4. タカヂアスターゼ・生薬配合剤
  5. ビオヂアスターゼ・生薬配合剤
  6. ロートエキス・ゲンチアナ末配合剤
  7. 炭酸水素ナトリウム・ゲンチアナ末配合剤
  8. 炭酸水素ナトリウム・ニガキ


健胃消化薬のちがい

カンゾウ末配合剤

  • つくしA・M 配合散
  • エヌエス配合散(販売中止:2020年3月経過措置満了)
健胃生薬として芳香性健胃薬(ケイヒ末、ウイキョウ末)、苦味性健胃薬(ニガキ末、オウバク末)、芳香辛味性健胃薬(ショウキョウ末)を配合したものに、鎮痙作用を有するカンゾウ末を加えているのが特徴です。そのほか制酸剤と消化酵素のαアミラーゼが健胃作用を補助する目的で配合されています。
つくしA・M配合散はかつてはる消化酵素にリカーゼ(α-アミラーゼ)を採用していましたが、原薬の入手困難により同じα-アミラーゼのジアスメンに変更した過去があります。

ジアスターゼ・生薬配合剤

消化酵素にジアスターゼを採用し、制酸剤(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム,炭酸水
素ナトリウム,沈降炭酸カルシウム)及び生薬(チョウジ末,ウイキョウ末,ケイヒ末,シ
ョウキョウ末,オウレン末,サンショウ末,カンゾウ末)を加えた配合製剤です。
TM配合散とピーマーゲン配合散では、生薬の配合や消化酵素が追加されているという違いがみられます。

センブリ・重曹

  • センブリ・重曹散 シオエ
  • センブリ・重曹散「ヨシダ」
  • センブリ・重曹散「JG」
  • 日粉センブリ・重曹散N
  • 健胃配合錠「YD」
消化酵素が配合されていないタイプの健胃消化薬です。処方はシンプルで、制酸作用のある炭酸水素ナトリウムと生薬のセンブリを配合したものです。センブリ末は、苦味成分により胃機能を活発にして食欲を増進させる作用があります。
健胃消化薬で唯一の錠剤タイプである健胃配合錠「YD」は昭和42年に承認をうけたベテラン薬剤です。

タカヂアスターゼ・生薬配合剤

  • S・M配合散
S・M 配合散はタカヂアスターゼに制酸剤、健胃剤である生薬を配合したものです。消化酵素剤であるタカヂアスターゼは1889~1891 年頃、高峰譲吉という日本人によって発見・創製されたものです。明治末期に三共商店(現:第一三共株式会社)において生産、発売され製法上の改良を加えながら現在にいたります。タカヂアズターゼの主成分はアミラーゼで、それにプロテアーゼ、セルラーゼ等多くの酵素が含有されているものです。これら諸酵素が消化器管内に取り入れられ、総合して強力な消化力を発揮するものと考えられています。

生薬の配合はジアスターゼ・生薬配合剤と同じで、ジアスターゼ・生薬配合剤の消化酵素を変更した処方と覚えておくとよいでしょう。


ビオヂアスターゼ・生薬配合剤

制酸剤、生薬成分の健胃薬に加え消化酵素剤ビオヂアスターゼを配合した消化器症状改善を目的とした総合胃腸薬です。
YM散は制酸剤4種類に消化酵素剤2種類も配合されていて、サービスランチのような処方です。

ロートエキス・ゲンチアナ末配合剤

  • ベルサン
炭酸水素ナトリウムにロートエキスとゲンチアナ末を配合した製剤。ロートエキスが使われているので緑内障や前立腺肥大のある患者さんは服用できません。

炭酸水素ナトリウム・ゲンチアナ末配合剤

  • ビットサン
  • 重散
  • ビアサン
炭酸水素ナトリウムにゲンチアナ末を配合したものをベースに消化酵素のジアスターゼを配合したものがビットサンや重散。ビアサンは消化酵素ではなく生薬の種類を増やした処方になっています。

炭酸水素ナトリウム・ニガキ

  • 健胃散「スズ」
  • 健栄の健胃散
炭酸水素ナトリウムにニガキ末を配合したシンプルな処方です。ニガキ末は漢方では処方されない家庭薬原料の珍しい生薬です。