2018年8月2日木曜日

パーキン販売中止と代替品

パーキンソン病治療薬のパーキンが販売中止となるようです。
販売中止のご案内(田辺三菱2018.07)

経過措置期間は 2019年3月 31日まで(予定)

パーキンソン病の治療薬だから『パーキン』。とても覚えやすい名前です。
パーキンは 1962年2月に日本で販売が開始された薬で、販売中止の2018年まで56年もの間使用された薬です。
販売中止は諸般の事情とのことです。


パーキンはプロフェナミン塩酸塩を成分とするパーキンソン病治療薬で、アセチルコリンのはたらきを抑える抗コリン薬です。 

抗コリン薬によるパーキンソン病治療は、1867年のOrdensteinによるアトロピン使用がその始まりとされています。
1949年Cunninghamが、その時代の新しい副交感神経遮断薬であるトリヘキシフェニジルの薬理作用がアトロピンと類似しており、かつ中毒作用が少ないことを報告し今日まで使用され続けています。そして多くの同効薬が開発されました。パーキンもその一つです。

パーキンなど抗コリン薬はかつてはパーキンソン病の初期治療によく使われていましたが、高齢者で精神症状発現のリスクを上げることや長期に服用すると認知機能に影響を与える可能性が指摘され、最近ではあまり処方されなくなっています。
Ehrt U, et al.,Use of drugs with anticholinergic effect and impact on cognition in Parkinson's disease: a cohort study. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2010 Feb;81(2):160-5.[PMID: 19770163]

エビデンスは乏しいですが、相対的に抗振戦作用が強いと考えられています。
現在ではレボドパ製剤、ドパミンアゴニストが効果不十分な難治性の振戦に処方されることが多いようです。


パーキンソン病における抗コリン薬の作用機序


パーキンソン病ではドパミン神経の機能が低下し、アセチルコリン神経の活動が亢進しているとされています。抗コリン薬は、線条体においてムスカリン性アセチルコリン受容体を遮断することにより、ドパミン系に対して相対的に優位となったアセチルコリン系の作用を抑制し、ドパミン神経とアセチルコリン神経のアンバランスを是正することで治療効果を発現するとされています。

パーキンの代替品

パーキンの代替品は、同効品の抗コリン薬が候補となります。
アーテンがよく使用されている印象があります。



また、薬効分類上はH1ブロッカーですがパーキンと同じフェノチアジン誘導体のプロメタジン塩酸塩製剤(ヒベルナ/ピレチア)も候補となります。ちなみに、プロフェナミン100に対してプロメタジン50が等価と考えられています。

パーキンから他の抗コリン薬などへ切り替える際には、オフ状態やジスキネジアが出やすくなります。患者さんの状態をよく診ながら用量を調節するようにしましょう。




パーキンソン病診療ガイドライン2018
Posted with Amakuri at 2018.8.2
日本神経学会
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