2020年3月30日月曜日

カルフェニール販売中止と代替品

関節リウマチ治療剤のカルフェニールが販売中止となるようです。

https://chugai-pharm.jp/content/dam/chugai/product/car/tab/if/doc/car_if.pdf

経過措置期間は2021年 3月31日までの予定です。

カルフェニールとは

カルフェニールの成分であるロベンザリットは、組織障害を示すフリーラジカル、いわゆる生体内活性酸素を捕まえる物質を探していた際に発見された化合物です。その後、基礎実験で T 細胞 subset への作用を介して各種免疫異常を是正する作用が認められました。一方で急性炎症に対する効果や PGE2生合成阻害作用がないことが明らかになりました。

ロベンザリットが臨床応用されたのは1976年のことです。このときはじめて関節リウマチに臨床応用されました。その後、第Ⅲ相二重盲検比較試験で関節リウマチに対するロベンザリットの有効性が確認され1986年3月1日にカルフェニールとして承認されました。

関節リウマチの臨床症状の改善をもたらすとともに血中免疫グロブリン等の諸種免疫パラメーターが改善されることもあり、免疫パラメーターの異常を是正して抗リウマチ作用を発揮する可能性のある薬剤であると考えられていました。


存在意義少なくなったカルフェニール
日本で早期に開発された関節リウマチ治療剤ですが、その後登場してきた薬剤に比べると効果は他の抗リウマチ薬に比して弱く,遅効性であることが目立ちます。
副作用として特に腎障害が問題となります。間質性腎障害が特徴で蛋白尿陰性にもかかわらず、BUNと血清クレアチニンが上昇し放置すれば腎不全に至ることがあるため使いにくい薬です。さらに皮疹、消化器症状も認められ、服薬コンプライアンスも得られにくいです。このように効果が弱い割に重大な副作用が多いことから、あえて本剤を使用する意義は少なく使用頻度は減少してきていました。


カルフェニールの代替品

関節リウマチは、関節滑膜の炎症を主とする慢性の炎症性疾患です。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、ADL(日常の動作)の障害、ひいては生活の質(QOL)の低下が起こってしまいます。また、適切に治療をしないと、様々な合併症により生命予後は健常人より約10年短いといわれています。したがって、発症早期から適切な治療を行わなくては関節予後及び生命予後を改善することはできないのです。このためには早期診断・早期治療が必要不可欠です。カルフェニールが誕生した頃の治療目標は臨床症状の軽減とADLの改善でしたが、治療薬としてメトトレキサート(MTX)と生物学的製剤が登場してから、リウマチ治療のパラダイムシフトが起きました。「寛解」が明確な治療目標へと変わったのです。寛解とは,臨床症状及び徴候の消失した状態と定義されます。
2016年に欧州リウマチ学会 (European League against Rheumatic Diseases, EULAR)によって提唱された「抗リウマチ薬による関節リウマチ治療推奨 」では,
①治療は,医師と患者との共同意思決定に基づく最善の治療でなくてはならない,
②治療法の決定は,疾患活動性の評価のみならず,関節破壊の程度,合併症,安全性などを総合的に勘案して行うことが必要である,
③治療法は費用対効果も考えて行うべきである,
が治療の原則であると記載されています。
欧州リウマチ学会の勧告ではメトトレキサートを第一選択薬に含むべきであるとしています。メトトレキサートが使用できない患者の場合にはスルファサラゾピリンもしくはレフルノミドを含んだ治療を選択すべきである、と推奨しています。

カルフェニールの代替品ですが、メトトレキサートが使用できないために、カルフェニールを選択されていたのですからスルファサラゾピリンのような従来型の抗リウマチ薬が候補としてあげられます。

・イグラチモド
日本で開発された比較的新しい抗リウマチ薬(csDMARD)です。第2相、第3相試験において本剤の臨床効果は有意にプラセボを上回り、サラゾスルファピリジンと同等であることが示されています。注意したいのは肝機能障害の頻度が比較的高いところです。漸増法により肝機能障害出現率が減少するとされるため、用法・用量は最初1日1回25mgを4週間服用し,その後1日2回(50mg)に増量することが勧められています。

・ブシラミン
金チオリンゴ酸ナトリウムやD-ペニシラミンと同等の効果が期待できると言われていました。製品名のネーミングがよいせいなのか日本でよく使用される抗リウマチ薬の一つです。副作用として、消化器症状(食欲不振,悪心,嘔吐,下痢)、皮膚粘膜症状(皮疹,口内炎,味覚障害)、腎障害(蛋白尿,ネフローゼ症候群)は頻度が高いです。頻度は少ないですが間質性肺炎、骨髄障害(白血球減少症・血小板減少症)、肝機能障害、爪の黄染・肥厚が認められます。比較的早期で症状と炎症反応が中等度以上の症例が適応と考えられています。

・サラゾスルファピリジン
関節リウマチにおける有用性が多くの無作為対照試験およびメタ分析で確認されている薬剤です。特に早期で比較的軽症の関節リウマチでの有用性が強調されています。効果の強さはヒドロキシクロロキンに優り、金チオリンゴ酸ナトリウムやD-ペニシラミンとほぼ同等とされていますがD-ペニシラミンにみられるような重篤な副作用は少ないです。効果発現は1~2カ月とより速やかです。副作用には胃腸障害が多いですが皮疹、肝機能障害、白血球減少が起こることがあります。少量投与(0.5g/日)から開始して漸増すると副作用発現を減少できるとされています。速効性が特徴であると考えられていて、比較的早期で軽症~中等症の関節リウマチに推奨されます。