2023年3月12日日曜日

ペントナ散1% ・錠4mg 販売中止と代替品(経過措置:2023年3月31日迄)

 薬剤性パーキンソン症候群治療剤のペントナが販売中止となるようです。
https://medical.mt-pharma.co.jp/di/file/info/ifn_5390_P20289.pdf

経過措置は2023年3月31日までです。
https://medical.mt-pharma.co.jp/di/file/info/ifn_5457_P20356.pdf


ペントナの有効成分であるマザチコール塩酸塩水和物は、田辺製薬株式会社(現 田辺三菱製薬株式会社)がグラナタン誘導体群の化学構造と生物活性を系統的に検討したことにより見出され他化合物です。マザチコール塩酸塩水和物は、より選択的に中枢性抗コリン作用を有するを特性を持っています。

この特性を利用し 薬剤性パーキンソン症候群治療剤として1976年4月にペントナ錠剤、散剤の承認を取得し、1978年5月に販売を開始されました。

ペントナの名前の由来は「構造式に 5 員環(penta)をもった薬剤性パーキンソン症候群治療剤」ということらしいです。昔の薬は構造式に名前の由来を持つものが多い気がします。


「向精神薬投与によるパーキンソン症候群」という珍しい適応を持つ薬でしたが、誕生から45年で販売中止となってしましました。


薬剤性パーキンソニズム

ペントナの適応の薬剤性パーキンソニズムは、医薬品の副作用として引き起こされるパーキンソン病類似の症状のことです。薬剤性パーキンソニズムを起こしやすいものとして,一部の抗精神病薬,胃腸薬があります。ドパミン受容体をブロックし,線条体におけるドパミンの作用を減弱することに起因します。原因となる医薬品を継続して内服することによりリスクは高まります。



薬剤性パーキンソニズムの基本的な対応法は、原因として疑われる医薬品の中止です。投与中止、減量、代替の医薬品への変更により症状が改善たという報告は多いです。中止から稀に半年くらいかかることもありますが、ほとんどが2、3 ヵ月で症状が消失します。
ただ、重度の精神疾患が背景にあり、どうしても薬剤性パーキンソニズムの誘因となっている抗精神病薬を中止や減量ができない場合問題となりやすいです。そういう場合は薬剤性パーキンソニズムをより起こしにくい医薬品である非定型抗精神病薬のクエチアピンやクロザピンへの変更を検討します。精神症状が強く中止も変更も困難な場合に抗コリン薬が併用されます。
また、生活上、トラブルになるような運動症状を合併する例についてペントナ(マザチコール)などの抗コリン薬やレボドパ、アマンタジンで加療されます。
いずれの医薬品も、精神症状を悪化させるリスクもあるため、慎重に経過を見ながら投薬の継続、中止を判断します。

薬剤性パーキンソニズムを疑った場合の対応方法

ペントナの代替品

・抗コリン薬

日本でよく使用されている抗コリン薬にアーテン(トリヘキシフェニジル)があります。
ただし、抗コリン薬は薬剤性パーキンソニズムによる運動症状により生活上トラブルになるような場合に使用されていますが、一方で認知機能障害、せん妄、幻覚、便秘、排尿障害、口渇などを生じることがあり高齢患者や認知機能が低下している患者には注意が必要です。


参考:重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1c45.pdf