2018年1月24日水曜日

新しいアトピー性皮膚炎治療薬のデュピクセント皮下注


新しいアトピー性皮膚炎治療薬のデュピクセント皮下注が

2018年4月頃登場予定です。

新規アトピー性皮膚炎治療薬「デュピクセント皮下注300㎎シリンジ」製造販売承認取得について
http://www.sanofi.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=E3D59EAC-8C1E-4E5D-B1D8-F93A7283C470.pdf


デュピクセントはステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等の抗炎症外用薬で効果不十分なアトピー性皮膚炎患者に対する治療薬として開発されました。


デュピクセントは既に先行してアメリカでは発売されていますが、使用した患者の約4割で⼤幅に症状が改善する試験結果が出ており「現場に光明をもたらすかもしれない」と医師の注⽬度も⾼い薬です。


デュピクセントの作用機序


アトピー性皮膚炎及び関連するアトピー性/アレルギー性疾患の病態には、Th2細胞という免疫細胞の活性化が重要な役割を果たすと考えられています。

また、そこにはIL-4やIL-13というサイトカインが大きく関与しています。

サイトカインとは免疫細胞同士が連絡を取り合う手紙のようなものだと考えると分かりやすいと思います。

Th2細胞は免疫の司令官のような役割を担っています。

ダニや花粉などのアレルゲンの侵入を感知すると、抗体を産生するB細胞に敵の侵入を手紙(サイトカイン)で伝えます。指令を受けたB細胞は、そのアレルゲンに対抗する大量の抗体を作り出しアレルギー反応を起こさせます。

また、皮膚真皮内のTh2細胞の放出するIL-4、IL-13は皮膚バリア機能を低下させ、皮膚炎の慢性化を引き起こします。

デュピクセントは
IL-4受容体及び IL-13 受容体複合体に共通の IL-4 受容体αサブユニットに特異的に結合することにより IL-4、 IL-13 のシグナル伝達を阻害することで薬効を発揮します。

例えるなら手紙であるIL-4とIL-13が目的地へ届かなくする薬です。


デュピクセントの効果

マスコミやネットの情報では夢のような薬と、もてはやされ注目を集めていますが。

デュピクセントを投与してもアトピーは治癒しません。
かゆみや炎症などの皮膚症状は治まります(寛解といいます)が、根本を治療できる薬ではないので過度の期待はしてはいけません。

デュピクセントを使用して症状が良くなった後も、保湿やタクロリムス軟膏を使い続け寛解状態を維持しなければなりません。

しかし、ステロイド外用で効果不十分な場合、副作用リスクのある経口ステロイドやネオーラルを使用することを考えると、デュピクセントの登場は明らかな福音です。



デュピクセントの使用は16週まで

デュピクセントによる治療反応は、通常投与開始から 16 週までには得られます。反対に16週までに治療反応が得られない場合は、それ以上投与を続けても良い反応が得られる可能性は低く、副作用のリスクが高くなるため投与中止を考慮します。

54週まで投与された臨床試験も行われたようですが、54週目まで投与を続けても16週目と効果に違いはなかったようです。


ステロイドの飲み薬は勝手にやめない

デュピクセントを使用する直前や使用中にステロイドの飲み薬を投与している場合、デュピクセント投与開始後に症状が良くなったからといって患者の判断で勝手にステロイドを急に中止しないようにしましょう。経口ステロイドの減量が必要な場合には、ステロイドのリバウンドによる副作用を防ぐため医師の管理下で徐々に行われます。


デュピクセントの在宅自己注射

自己投与は安全性などを確認するため発売後1年が経過してから可能になる予定です。



デュピクセントを予定の日に投与し忘れたら


投与忘れの対応としては、海外の添付文書が参考になります。

アメリカの添付文書には

「投与し忘れた場合については、投与し忘れた日から 7 日以内に投与することを指示し、その後は元のスケジュールどおりに再開する。投与し忘れた日から7日以内で無い場合は次の投与する日まで待つよう指示する。(2017年3月)」と記載されています。




デュピクセント皮下注300mgシリンジ

[効能及び効果]
既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎
[用法及び用量]
通常、成人にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与する。

本剤を針付きガラス製シリンジに充填・施栓した単回使用の注射剤で、安全装置付きプレフィルドシリンジである。針の太さは27G。