2014年5月5日月曜日

お薬と果物の飲み合わせ


口から入った薬は小腸から吸収されて門脈血中に入り、肝臓を経由して全身に行き渡ります。
小腸には薬物代謝酵素CYPや、吸収された薬を腸管の中に逆輸送するP糖蛋白という異物(薬も含む)に対するバリア機構が発達しています。
また、小腸には薬物の吸収を促進する薬物輸送担体OATPというものも存在しています。


グレープフルーツが薬の代謝に影響を及ぼすことはよく知られています。
グレープフルーツはCYPやP糖蛋白のはたらきを阻害するために、阻害率の大きい薬物の血中濃度を上昇させます。そのために有害反応が出現する危険性が指摘されています。
けれども、血中薬物濃度に影響を及ぼす果物はグレープフルーツだけではないのです。


グレープフルーツ、オレンジおよびりんごがOATPを阻害すること明らかになっています。これらの果物は腸管からの薬物吸収を抑制する可能性があると考えられています。例えば、これらの果物がレニン阻害薬のアリスキレンの血中濃度を60%、β遮断薬のセリプロロールの血中濃度を80%そして抗アレルギー薬フェキソフェナジンの血中濃度を70%低下させることが報告されています。上記3つの薬物は代謝率が小さいためグレープフルーツなどでCYPが阻害されてもその影響は少ないものと考えられます。


グレープフルーツのみならず、オレンジやりんごでも治療効果に影響があるという認識を持つほうがよいでしょう。



Rodríguez-Fragoso L,et al,(2011)Potential risks resulting from fruit/vegetable-drug interactions: effects on drug-metabolizing enzymes and drug transporters.J Food Sci. May;76(4):R112-24.

Dolton MJ, et al,(2012)Fruit juices as perpetrators of drug interactions: the role of organic anion-transporting polypeptides.Clin Pharmacol Ther.Nov;92(5):622-30.