2014年5月6日火曜日

エネーボ配合経腸用液の特徴


医療における栄養管理は、病気に対する治療効果を左右するといわれています。

すなわち、栄養管理も基本的な治療の一部であり、特に手術などのカラダに大きな負担をかける時には必須です。

一般的に、栄養管理には2種類あるとされています。

経静脈的投与と経腸的投与です。

手術をした後、患者さんへ経腸的投与が可能であれば、できるだけ絶食期間を設けずに、経腸・経管栄養投与を行うことが、早期回復、合併症の減少、入院期間の短縮に貢献すると考えられています。

ラコールやエンシュアなどの経腸栄養剤、特に半消化態経腸栄養剤に分類される栄養剤は、いずれも発売後10年以上経過しています。

 
10年以上の間に、栄養学は進歩し、また日本人の栄養環境も変化してきているので、それらに対応した栄養剤の登場が期待されていました。。

そこで、最新の日本人の推奨栄養所要量や臨床栄養学を反映した栄養剤であるエネーボ配合経腸溶液が開発されたのです。


エネーボの特徴

エネーボは、近年、推奨栄養所要量として設定されたクロム、モリブデン、セレンなどのミネラル類を含有しているのが特徴です。

これらミネラルを含有する医療用医薬品の半消化態経腸栄養剤ニーズは高かったのですが、日本では存在していませんでした。


また投与液量と投与時間を短縮するため、カロリーを高濃度(1.2 kcal/mL)に配合しています。

配合成分のバランスをとることで、タンパク質・エネルギー低栄養状態を予防・改善できるようになっています。



エンシュアと比較して新たに配合された成分について


セレン、クロム、モリブデン、タウリン、カルニチン及びフラクトオリゴ糖が新たに配合されました。。

セレンは、エネーボ2000 kcal中134 μg配合されています。
これは、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」における耐容上限量(成人男女において210~300 μg)を下回る量です。
セレンは、ヒトにとって必須な微量元素です。
セレンは、酸化障害に対する生体防御に重要なグルタチオンペルオキシダーゼ類の活性中心であり、抗酸化反応において重要な役割を担っています。

 
クロムは、エネーボ2000 kcal中208 μg配合されています。
これは、WHOが許容上限の目安として定めている摂取量(250 μg)より少ない量です。
なお、クロムの過剰摂取による有害事象は600~1000 μg/日で報告されています。
クロムは、正常な糖代謝、脂質代謝を維持するのに重要かつ必須な元素です。
特に血糖値の調節に対する作用が注目されています。

 
モリブデンは、エネーボ2000 kcal中226.7 μg配合されています。
これは、一般的な日本人での摂取量(225~300 μg/日)と同じ量です。
「日本人の食事摂取基準(2010年版)」における耐容上限量(9 μg/kg/日)よりも低い量です。
モリブデンは酸化還元反応を触媒するモリブデン酵素の構成成分としてはたらきます。
モリブデン不足になると、頻脈、多呼吸、夜盲症などを引き起こすことがあります。

 
タウリンは、エネーボ2000 kcal中に300 mg配合されています。
参考として、普通の食事からのタウリン摂取量は、40~400 mg/日といわれています。
また、一般的に普及している栄養補給ドリンクのタウリン含有量は300~4000 mg/Lです。

EFSA Scientific Panel on Food Additives and Nutrient Sources added to Food: SCIENTIFIC OPINION

タウリンには心機能を改善したり、肝機能改善したりするという報告があります。

 
カルニチンは、エネーボ2000 kcal中214 mg配合されています。
「日本人の食事摂取基準(2010年版)」において摂取量の基準や耐容上限量は設定されていません。
一方、アメリカでの許容一日摂取量は20 mg/kg/日。スイスでの摂取上限は1000 mg/日となっています。


食安基発第0817001号、平成19年8月17日「「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」の食品衛生法上の取扱いの改正について」

カルニチンは脂質代謝に必須の成分です。

 
フラクトオリゴ糖はエネーボ標準量使用時に、一日摂取量の目安を上回る量が配合されています。
有害事象の発現はショ糖と比較して特に差はないという報告があります。
フラクトオリゴ糖は「ビフィズス菌の栄養となり、菌を増殖させる」などといわれています。
「おなかの調子を整える食品」、「ミネラルの吸収を助ける食品」として、フラクトオリゴ糖を関与成分とした特定保健用食品が許可されています。


ワルファリン併用には注意

エネーボにはビタミンKが含まれています。

ビタミンKはワルファリンと相互作用があるため、ワルファリンを服用している患者はビタミンKを多く含む食品の接種は禁止されています。

エネーボの標準量(2000 kcal)に含有するビタミンKは194.3 μgです。

モロヘイヤ及び青汁に含まれるビタミンKの量は可食部100 gあたり450~1970 μgです。
納豆については600~930 μgです。

エネーボの標準量に含有するビタミンK量はモロヘイヤや納豆よりも少ないとはいえ、相互作用が絶対起きないとはいえないので注意する必要があります。


エネーボ配合経腸用液
[効能・効果]
一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用する。

[用法・用量] 
通常、標準量として成人には 1 日 1,000~1,667 mL(1,200~2,000 kcal)を経管又は経口投与する。経管投与では本剤を 1 時間に 62.5~104 mL(75~125 kcal)の速度で持続的又は 1 日数回に分けて投与する。経口摂取可能な場合は 1 日 1 回又は数回に分けて経口投与することもできる。ただし、通常、初期量は 333 mL/日(400 kcal/日)を目安とし、低速度(約 41.7 mL/時間(50 kcal/時間)以下)で投与する。以後は患者の状態により徐々に増量し標準量とする。なお、年齢、体重、症状により投与量、投与濃度、投与速度を適宜増減する。特に投与初期は、水で希釈して投与することも考慮する。