今回の見直しでは、インフルエンザ流行期における薬局の感染リスクを伴う対面指導の実態が評価され、算定対象が拡大される一方で、算定間隔が延長されることになりました。慢性疾患患者の算定回数が減少するため、経営への影響を正確に把握しておくことが重要です。
1. 改定の背景
これまで吸入薬指導加算は、喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者に限定されていました。しかし、インフルエンザ治療で使用される吸入薬(イナビル、リレンザなど)の指導においても、慢性疾患と同程度の時間・労力が必要であり、個室対応や曝露リスクへの対策が求められる実態がありました。
厚生労働省の調査資料でも、インフルエンザ吸入薬の指導時に「実際に吸入を確認している」と回答した薬剤師が約半数を占めており、この負担が長年評価されてこなかった課題が指摘されていました。
これらの実態を踏まえ、令和8年度改定ではインフルエンザウイルス感染症の患者が算定対象に追加され、同時に算定可能な間隔が見直されました。
2. 主な変更点
- 対象患者の拡大
従来の「喘息・慢性閉塞性肺疾患」に加え、「インフルエンザウイルス感染症」の患者が追加 - 算定間隔の変更
「3月に1回」→「6月に1回」に延長 - 点数
30点(変更なし)
3. 新旧対照表
| 項目 | 改定後(令和8年度) | 改定前 |
|---|---|---|
| 対象患者 | 吸入薬の投薬が行われている患者 (喘息、慢性閉塞性肺疾患、インフルエンザウイルス感染症) |
喘息又は慢性閉塞性肺疾患の患者であって、吸入薬の投薬が行われているもの |
| 算定要件(主な部分) | 患者又はその家族等の同意を得た上で、文書及び練習用吸入器等を用いて必要な指導を行い、保険医療機関に必要な情報を文書により提供した場合 | 患者の同意を得た上で、文書及び練習用吸入器等を用いて必要な薬学的管理及び指導を行い、保険医療機関に必要な情報を文書により提供した場合 |
| 算定間隔 | 6月に1回に限り算定 | 3月に1回に限り算定 |
| 点数 | 30点 | 30点 |
| 併算定不可 | 服薬情報等提供料 | 服薬情報等提供料 |
4. 薬局経営上の運用ポイント
インフルエンザ患者への対応
インフルエンザ吸入薬は単回投与が多く、確実な吸入が治療効果に直結します。冬季の繁忙期に算定機会が増えるため、指導フローの標準化と算定漏れ防止が収益アップの鍵となります。感染対策(個室・マスク・換気)を徹底しつつ、積極的に算定を進めましょう。
算定間隔延長による影響
喘息・COPDの慢性患者については、算定頻度が半減(年2回→年1回)するため、既存患者からの収入が減少します。レセコンで患者ごとの算定可能時期を可視化しておくとよいでしょう。
全体収益への影響試算の目安
インフルエンザ患者の取り込みが不十分な場合、慢性疾患分の減収をカバーしきれず、薬局全体で1〜2%程度の減収となる可能性があります。一方で、地域のインフルエンザ流行期に積極対応できれば、プラス効果も期待できます。
まとめ
令和8年度改定の吸入薬指導加算は、「対象拡大による機会創出」と「算定間隔延長による減収リスク」の両面を持つ改定です。インフルエンザ期の集客・指導体制を強化しつつ、慢性患者の算定管理を徹底することで、収益へのマイナス影響を最小限に抑えられます。
改定内容は厚生労働省告示・通知に基づいています。最終的な運用通知が出たら、必ず最新情報を確認してください。