2014年4月4日金曜日

熱中症 予防と治療



予防:情報収集が命を救う


情報収集

 最近では、テレビやラジオ、新聞などで熱中症に関する情報が多く流れています。予防として特に重要な事は、まずは今日が熱中集の危険性が高い日であるかどうかの情報収集です。

具体的には「暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度)」という概念を知ることが重要です。
暑さ指数とは、気温、湿度、日射の3条件から算出されます。暑さ指数WBGT28℃以上では熱中症の危険性が増加することが知られています。

環境省熱中症予防情報サイトで、暑さ指数のチェックを行うことができます。

この情報を元にして当日の行動を決定して、日中の外出を避けるなどの工夫が可能です。


生活の工夫

食事や服装など、日々の生活における予防、熱中症対策も重要です。
衣服の素材や形状を気をつけるだけでも、だいぶ違います。
素材は吸水速乾性、吸湿性に優れた物が良いです。
形状は衿や裾が身体に密着せずに適度の体の表面を空気が流れるようなものが良いでしょう。

また、食生活も重要です。
ビタミン、水分、電解質(ミネラル)をまんべんなく摂取すること。
こまめな水分補給が大事です。
時間を決めて水を飲むことを習慣づけることも、熱中症対策の一つです。

身体が脱水状態なら喉が渇くから、飲みたくなったら飲めばいいやという考えの方は注意した方がいいです!

実は、汗を多くかいて起こる脱水、Na欠乏性脱水は喉が渇いた感じがしないことが特徴です。

脱水は気づかないのではなく、気づけないのです!

高温下での脱水は水分摂取が後手に回りやすいので、前もって飲水時間を決めておくことはとても有意義なことなのです。


暑さに慣れる

人間は環境に順応する能力があります。暑さにも耐性を獲得することが可能です。従来、日本人は四季という環境変化の中で自然と暑さへの慣らしを行ってきました。しかし、近年は異常気象の影響で、その慣らしをおこなうことなく猛暑を迎えています。若い人は、ある程度は暑さに対応することができますが、高齢者ではこの暑さへの慣らしが行えないことが熱中症へのリスクとなっています。
5月、6月頃から適宜、積極的に外出をしたり運動を行う習慣をつけることが熱中症への予防になります。

中井 誠一、他(2007)スポーツ活動および日常生活を含めた新しい熱中症予防対策の提案 —年齢, 着衣及び暑熱順化を考慮した予防指針— :体力科学;56(4):437-44.



治療:手軽でも強力な経口補水療法(ORS)


応急処置としては「FIRE」を認識しておくことが重要です。
F:Fluid 水分と塩分補給 
I:Ice 冷却 
R:Rest 安静 
E:Emergency 緊急事態

経口補水療法

意識があるならまず、飲ます。病院でも意識レベルが正常で、採血データに異常がなければ点滴にこだわらず、Naなどの適切な電解質を含んだ経口補水液を飲ませます。これは簡単な方法ですがとても重要な治療法です。

Naは小腸からの吸収が重要かつ効果的です。水分はNaにつられて吸収力が増加することが知られています。また、生理的に自然な行為である飲水は、精神面における満足度もの高いです。

しかし、吐き気や強い頭痛を認める場合には、経口補水は向いていません。点滴を行ったほうがいいでしょう。



扇風機とクーラーの使用

熱中症では体温が上昇します。ナゼでしょう。
それは、身体が内部を冷やそうとしているからです。体の内部から体の表面にかけて血液によって熱が移動します。さらに体の表面から空気に熱を移動させることで冷まします。したがいまして、体の表面と空気の温度差が大きいほど、効率よく熱が移動するのです。そのためには、空気の温度を冷ます必要があります。クーラーの効いた部屋に運び、扇風機やうちわであおぐとより効果的です。



輸液【医療者向け】

熱中症患者は脱水状態である場合が多いです。初期輸液から急速輸液が必要です。患者の全身状態や新機能、腎機能に応じた対応が重要です。高体温、脱水の是正がまず必要なので、初期治療時には冷やした輸液の急速投与を行います。そして、並行して血管内容量の評価や採血、画像診断などを進めます。
基本的に患者は脱水していて、血管内容量が不足しているため尿が出ない場合が多いです。尿が出ないからといって安易に利尿剤を使うことは避け、輸液負荷を強める意識を持つことが重要になります。
心機能、じんきのうが低下している高齢者の場合には、輸液速度の多少の調節が必要です。しかし、ブレーキをかけすぎて脱水を是正できていないケースが散見されるので注意が必要です。


医療機関では、様々な装置を使って急速に体温を低下させています。

冷却水を体内に循環させて体の表面をロール状に巻き込み、お腹と背中とで挟み込む体表クーリングや、体表へのパッド装着により冷却水を循環させる冷却促進や、バルーン付き中心静脈カテーテルを介して血管内で血液と熱交換を行う中心静脈留置型経皮的体温調節システムの使用などが行われています。


参考:
環境省が作成し、公表している保健活動にかかわる方々向けの保健指導マニュアル。「熱中症とは何か」「熱中症を防ぐためには」「保健指導のあり方」等について紹介しています。



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