2014年4月6日日曜日

NSAIDs潰瘍の予防

整形外科医からの質問。NSAIDsと胃粘膜保護薬(レバミピドやテプレノン)を併用しても出血性胃潰瘍を起こすことがあるが、良い予防方法はないか。


鎮痛薬として整形外科でよく処方される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や、心臓カテーテルやステント手術の後などに飲むことになる低容量アスピリンの副作用として、消化性潰瘍がもっとも重要です。消化性潰瘍の合併症として上部消化管出血のリスクも高まります。


日本リウマチ財団の報告によりますと、3ヶ月以上のNSAIDs投与を受けている関節炎患者さんの潰瘍発見率は胃潰瘍15.5%、十二指腸潰瘍1.9%であり、一般の集団検診における統計と比較して高くなっています。

Ryumachi. 1991 Feb;31(1):96-111. 


NSAIDsが消化性潰瘍を引き起こす仕組みには2つのポイントが有ります。1つ目は、アスピリンを含む酸性NSAIDsは胃酸と反応することで細胞膜を通り抜けやすくなり細胞の中に蓄積されます。胃壁の細胞が生きていくためのエネルギー代謝を障害するため胃の粘膜上皮細胞が死んでしまい潰瘍となります。
2つ目は、NSAIDsがプロスタグランジン(PG)の低下を引き起こす点です。PGは胃を守るバリアを産生、胃液を中和したり、胃を守るのに役に立っています。


NSAIDs潰瘍の予防には、高用量のNSAIDsの投与を避け、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、高用量のH2ブロッカーを投与します(保険適応外)。PG製剤を使用することもありますが、副作用として腹痛、下痢、子宮収縮作用がありますので注意が必要です。3ヶ月以上の長期的なNSAIDs投与による潰瘍に対する胃粘膜保護薬の抑制効果については実はエビデンスは乏しいのです。

消化性潰瘍診療ガイドライン


低容量アスピリンを服用する患者さんは消化性潰瘍の発症率や有病率が高くなっています。高齢といった平均的なリスクの低容量アスピリンを飲んでいる人では、H2ブロッカーあるいはPPIにより上部消化管病変が予防できます。

低容量アスピリンとPPIの2つがひとつになったお薬が2014年にお目見えします。
武田薬品のタケルダ配合錠です。アスピリン100mgとランソプラゾール15mgを配合したもので1日1回投与です。胃潰瘍や十二指腸潰瘍の既往があり、狭心症や冠動脈バイパス術、経皮経管冠動脈形成術施行した患者に対する血栓・塞栓形成の抑制を効能・効果とする新医療用配合剤。



患者さんと家族のための消化性潰瘍ガイドブック

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