2017年9月5日火曜日

ペンタジン販売中止と代替品

ペンタジン錠25、ペンタジン注射液15・注射液30が販売中止となるようです。
https://www.medicallibrary-dsc.info/announce/other/pdf-data/2017/1706stop_pent_etc2.pdf

ペンタジンはペンタゾシンを成分とする非麻薬性の中枢性鎮痛剤です。

ペンタゾシンは米国スターリングウインスロップ社(現:SANOFI)で開発されたアゴニスト・アンタゴニスト作用を有するベンゾモルファン系の非麻薬性鎮痛薬です。モルヒネほどの鎮痛作用はありませんが、多幸感などの精神作用も少なく、大量投与で不快感を引き起こすため1966年WHOはこの薬物を麻薬規制外としました。

そのため1967年にペンタゾシンの注射剤は癌性疼痛の鎮痛及び麻酔前投薬、術中の麻酔補助として、米国において発売され、日本では 1970 年に発売され、広く臨床で使用されていくこととなります。

米国スターリングウインスロップ社は塩酸ペンタゾシンを主剤とする経口用製剤ペンタゾシン錠を、1969 年にTalwin錠として発売しました。しかし、この錠剤を水に溶解し、抽出された塩酸ペンタゾシンを注射する形の乱用が問題となりました。その後、米国スターリングウインスロップ社は 1983 年にモルヒネ急性中毒に用いられる麻薬拮抗薬であるナロキソン塩酸塩を添加した錠剤(Talwin Nx)を発売しました。ナロキソン塩酸塩は非経口投与できわめて強いオピオイド拮抗作用を示しますが、経口投与では肝臓で速やかに分解されるため拮抗作用を示しません。つまり、ジャンキー対策がとられた薬剤だといえます。

癌性疼痛の治療には、鎮痛薬を一定の順序で選択していく WHO 方式癌疼痛治療法(三段階式鎮痛薬選択順序)が一般的に推奨されています。
  • 第一段階には非オピオイド鎮痛薬
  • 第二段階には弱オピオイド鎮痛薬
  • 第三段階には強オピオイド鎮痛薬
非オピオイド鎮痛薬としては消炎鎮痛薬などが、強オピオイド鎮痛薬としてはモルヒネが一般的に用いられます。第二段階の弱オピオイド鎮痛薬としては麻薬指定医薬品であるコデインが用いられることが多く、外国ではその代替し得る経口鎮痛薬としてデキストロプロポキシフェンが用いられていました。しかし、日本においては当時(1983年)、適当な経口剤がなく、管理の容易な非麻薬指定のペンタゾシンの錠剤の開発が望まれていました。

そこで日本においてもナロキソン塩酸塩添加塩酸ペンタゾシン錠の開発が企画されるところとなりました。グレラン製薬(現:あすか製薬)、三共(現:第一三共株式会社)、山之内製薬(現:アステラス製薬)及びスターリングウインスロップ社(現:SANOFI)の 4 社による共同開発を実施し、1997年 7 月に製造販売承認を取得しました。
  • ペルタゾン錠(あすか製薬=日本化薬)
  • ペンタゾシン錠(第一三共)
  • ソセゴン錠(丸石:アステラスから販売移管)

1物3名称という珍しい薬剤です。

承認から20年経った今、ペンタゾシンは疼痛治療に対してあまり使われていません。それは、効果があまりにも短すぎるためです。がんの持続痛に対し1日に何度も投与することになり、結果として副作用のリスクが増大します。また肝心の鎮痛作用も弱く過量投与のリスクもはらんでいます。

そういう理由で使用量が減ってきています。

ペンタゾシン錠の代替品


同じ成分である
  • ペルタゾン錠(あすか製薬=日本化薬)
  • ソセゴン錠(丸石:アステラスから販売移管)
が候補となります。

しかし、これら2剤もいつまで供給されるか分かりません。

売上から見ると、ソセゴンのほうがメジャーなので、最後まで残りそうですね。