2020年4月23日木曜日

大うつ病治療薬 ボルチオキセチン

ボルチオキセチン(vortioxetin)はアメリカのLundbeck社が創製した大うつ病治療薬です。

大うつ病性障害治療薬として米国をはじめ77カ国で承認、60カ国以上で販売されています。
アメリカにおいてBrintellixという商品名で武田薬品が世界で初めて販売を開始しました。
Brintellix製品情報ページ(米国)http://us.brintellix.com/

日本ではトリンテリクスという商品名で2019年11月に発売されました。

ボルチオキセチンの特徴


ボルチオキセチンは神経伝達物質セロトニン(5-HT)の再取り込み阻害作用をもち、また、5-HT1A受容体刺激作用、5-HT1B受容体の部分的刺激作用をもちます。

ボルチオキセチンは5-HT3、5-HT7、5HT1-D受容体拮抗作用をもちます。

アメリカで承認された用量は1日5~20mgです。

Vortioxetine, a new serotonergic agent, has shown superiority over placebo in treating major depressive disorder in both adult and geriatric patients.

The multimodal pharmacologic activity of vortioxetine may convey benefit in cognitive function.

Vortioxetine’s safety profile is similar to that of other selective serotonin reuptake inhibitors.

Vortioxetine’s favorable tolerability profile may have meaningful advantages with regard to weight gain and low sexual dysfunction that may benefit patients.


作用機序は完全に解明されていませんが、うつ病に対する新しい治療薬として、神経伝達物質セロトニン(5-HT)の再取り込みを阻害し、また、5-HT1A受容体作動作用、5-HT1B受容体の部分的作動作用、5-HT3、5-HT1D、5-HT7の各受容体拮抗作用など複数のセロトニン受容体に作用すると考えられています。


SSRIの副作用に性機能障害があります。
ボルチオキセチンに切り替えることによってSSRIによって起こる性機能障害が改善したというデータが示されています。
最も有効性と忍容性の高い抗うつ薬としてしられるエスシタロプラムと比べても性機能改善は優位を示しています。
Jacobsen PL, Mahableshwarkar AR, Chen Y, Chrones L, Clayton AH. J Sex Med. 2015;12(10):2036-2048. (PMID:26331383)


◉適応

うつ病,うつ状態。

◉禁忌

本薬剤の成分に対する過敏症の既往歴、MAO-I投与中あるいは中止2週間以内。



◉相互作用

ボルチオキセチンは主に肝代謝酵素CYP2D6、CYP3A4/5、CYP2C19、CYP2C9、CYP2A6、CYP2C8及びCYP2B6で代謝されます。
CYP2D6の阻害作用を有する薬剤を投与中の患者又は遺伝的にCYP2D6の活性が欠損している(Poor Metabolizer)ことが判明している患者では、本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、10mgを上限とすることが望ましいとされています。
また、強力なCYP誘導剤の併用投与では増量するなどの用量調整が必要だと考えられます。



◉見逃してはいけない副作用

国内臨床試験においては,主な副作用は悪心(19.0%)、傾眠(6.0%)及び頭痛(5.7%)でした。
海外の臨床試験において悪心の頻度は用量に依存していました。悪心の強度は軽度から中等度で無処置で消失しています。
悪心の起きる時期は治療の最初の週がほとんどで、投与の1〜2日後に患者の15%〜20%が吐き気を経験しました。

悪心や吐き気は導入の際にうまくいかない副作用の1つです。モサプリドなどの併用を考慮するなどの対応が必要です。2週間程度は様子を見ておくのが良いでしょう。