2026年2月16日月曜日

2026年調剤報酬改定:服用薬剤調整支援料2の1,000点化で薬局は『薬剤レビュー』時代へ

今回は、2026年(令和8年度)調剤報酬改定の「服用薬剤調整支援料2」の見直しについて解説します。この改定は、薬局薬剤師の役割を「対物業務」から「対人業務(臨床的判断)」へシフトさせる決定的な転機となります。
 

何がどう変わるのか?

これまでの服用薬剤調整支援料2と、今回の改定(新・支援料2)の決定的な違いは、「成果の定義」にあります。

これまでは「重複投薬等の解消(減薬)」が主眼でしたが、改定後は「かかりつけ薬剤師による薬物療法の適正化支援(薬剤レビュー)」そのものが評価対象となります。


項目改定前(従来)改定後(新設)
点数90点 または 110点1,000点
目的重複投薬の解消(ムダを減らす)薬物療法の適正化(治療を最適化する)
成果要件実際に重複が解消されること「薬剤レビュー」を実施し提案すること
※必ずしも減薬(数)に至らなくても良い
実施者保険薬剤師研修を受けたかかりつけ薬剤師

最大のポイントは、「必ずしも減薬(種類の減少)につながらなくても、しかるべき手順(薬剤レビュー)を踏んで処方医に提案を行えば算定対象となり得る」という点です。



1. 重複投薬解消から「薬物療法の適正化支援」へ

従来の評価(90点〜110点)は重複投薬の「解消(減薬)」が目的でしたが、新設される1,000点は、かかりつけ薬剤師による「薬剤レビュー(Medication Review)」そのものを評価する仕組みに生まれ変わります。

算定要件のポイント

  • 点数: 1,000点(6月に1回、かかりつけ薬剤師1人につき月4回まで)
  • 対象: 6種類以上の内服薬が処方されているポリファーマシー患者。
  • 実施者: 極めて高度な専門性とポリファーマシー研修を受けた「かかりつけ薬剤師」に限定。
  • 核心: 実際に薬が減らなくても、薬剤レビューに基づき医師へ「文書提案」を行えば算定可能。

薬剤レビューの業務プロセス:3つのA

薬剤レビューは、単なる残薬確認ではありません。以下の3つのサイクルを回す臨床スキルが求められます。

プロセス 具体的内容 経営ポイント
Ask(情報収集) 主観的症状、客観情報(検査値・病院記録)、生活状況の聴取。 検査値入手の体制整備と患者との信頼関係構築が不可欠。
Assess(評価) 有効性・安全性評価、処方カスケード等の特定、治療目標の設定。 ガイドライン等に基づく高度な専門性が必要。教育投資の対象。
Advise(提案) 医師への文書提案(SOAP形式)、患者説明、フォローアップ。 提案の質が評価のすべて。結果として減薬に至らなくてもOK。
---

2. 具体的な実践イメージ(症例)

1,000点の仕事とは具体的にどのようなものか。薬剤レビューの実証事業から、標準的なモデルケースを紹介します。

【80代女性、めまい・ふらつきの訴え】
  • 現状: 14種類服用。腎機能低下(CCr低値)が判明。
  • 薬剤師の判断: 過活動膀胱薬の抗コリンリスク、および腎機能低下時の禁忌薬(エプレレノン)を特定。
  • 結果: 医師へ中止・変更を提案し、症状が改善。腎機能のさらなる悪化も防止。

※このように、副作用リスクを回避しQOLを向上させることが「薬剤レビュー」の本質です。

---

3. 留意点と適用時期

非常に魅力的な点数ですが、算定には「時間」と「教育」のハードルがあります。

適用開始時期に注意

通常の改定は2026年4月ですが、この1,000点化の適用は令和9年(2027年)6月1日からとなります。これは、薬剤師が高度な研修を受けるための猶予期間です。

今すぐ準備

  • 人材育成: 検査値解釈やフィジカルアセスメントの研修を2026年中に開始。
  • 連携強化: トレーシングレポートの質を高め、医師との信頼関係を深めておく。
  • 目標設定: 全対象患者の20%でのレビュー実施をパイロット目標にする。

今回の改定を機に、薬局は薬を渡す場所から「薬物治療をマネジメントする専門家集団」へと進化する絶好のチャンスです。

4. 服用薬剤調整支援料1の現状維持

一方、「服用薬剤調整支援料1」は大きな変更なし。減薬成果に対する評価です。
  • 点数:125点(変更なし)
  • 要件:6種類以上の内服薬処方患者で、文書提案により調剤内服薬が2種類以上減少した場合。月1回限り。