今回は、2026年(令和8年度)調剤報酬改定の「服用薬剤調整支援料2」の見直しについて解説します。この改定は、薬局薬剤師の役割を「対物業務」から「対人業務(臨床的判断)」へシフトさせる決定的な転機となります。
何がどう変わるのか?
これまでの服用薬剤調整支援料2と、今回の改定(新・支援料2)の決定的な違いは、「成果の定義」にあります。これまでは「重複投薬等の解消(減薬)」が主眼でしたが、改定後は「かかりつけ薬剤師による薬物療法の適正化支援(薬剤レビュー)」そのものが評価対象となります。
| 項目 | 改定前(従来) | 改定後(新設) |
|---|---|---|
| 点数 | 90点 または 110点 | 1,000点 |
| 目的 | 重複投薬の解消(ムダを減らす) | 薬物療法の適正化(治療を最適化する) |
| 成果要件 | 実際に重複が解消されること | 「薬剤レビュー」を実施し提案すること ※必ずしも減薬(数)に至らなくても良い |
| 実施者 | 保険薬剤師 | 研修を受けたかかりつけ薬剤師 |
最大のポイントは、「必ずしも減薬(種類の減少)につながらなくても、しかるべき手順(薬剤レビュー)を踏んで処方医に提案を行えば算定対象となり得る」という点です。
1. 重複投薬解消から「薬物療法の適正化支援」へ
従来の評価(90点〜110点)は重複投薬の「解消(減薬)」が目的でしたが、新設される1,000点は、かかりつけ薬剤師による「薬剤レビュー(Medication Review)」そのものを評価する仕組みに生まれ変わります。
算定要件のポイント
- 点数: 1,000点(6月に1回、かかりつけ薬剤師1人につき月4回まで)
- 対象: 6種類以上の内服薬が処方されているポリファーマシー患者。
- 実施者: 極めて高度な専門性とポリファーマシー研修を受けた「かかりつけ薬剤師」に限定。
- 核心: 実際に薬が減らなくても、薬剤レビューに基づき医師へ「文書提案」を行えば算定可能。
薬剤レビューの業務プロセス:3つのA
薬剤レビューは、単なる残薬確認ではありません。以下の3つのサイクルを回す臨床スキルが求められます。
| プロセス | 具体的内容 | 経営ポイント |
|---|---|---|
| Ask(情報収集) | 主観的症状、客観情報(検査値・病院記録)、生活状況の聴取。 | 検査値入手の体制整備と患者との信頼関係構築が不可欠。 |
| Assess(評価) | 有効性・安全性評価、処方カスケード等の特定、治療目標の設定。 | ガイドライン等に基づく高度な専門性が必要。教育投資の対象。 |
| Advise(提案) | 医師への文書提案(SOAP形式)、患者説明、フォローアップ。 | 提案の質が評価のすべて。結果として減薬に至らなくてもOK。 |
2. 具体的な実践イメージ(症例)
1,000点の仕事とは具体的にどのようなものか。薬剤レビューの実証事業から、標準的なモデルケースを紹介します。
【80代女性、めまい・ふらつきの訴え】
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- 現状: 14種類服用。腎機能低下(CCr低値)が判明。
- 薬剤師の判断: 過活動膀胱薬の抗コリンリスク、および腎機能低下時の禁忌薬(エプレレノン)を特定。
- 結果: 医師へ中止・変更を提案し、症状が改善。腎機能のさらなる悪化も防止。
※このように、副作用リスクを回避しQOLを向上させることが「薬剤レビュー」の本質です。
3. 留意点と適用時期
非常に魅力的な点数ですが、算定には「時間」と「教育」のハードルがあります。
適用開始時期に注意
通常の改定は2026年4月ですが、この1,000点化の適用は令和9年(2027年)6月1日からとなります。これは、薬剤師が高度な研修を受けるための猶予期間です。
今すぐ準備
- 人材育成: 検査値解釈やフィジカルアセスメントの研修を2026年中に開始。
- 連携強化: トレーシングレポートの質を高め、医師との信頼関係を深めておく。
- 目標設定: 全対象患者の20%でのレビュー実施をパイロット目標にする。
今回の改定を機に、薬局は薬を渡す場所から「薬物治療をマネジメントする専門家集団」へと進化する絶好のチャンスです。
4. 服用薬剤調整支援料1の現状維持
一方、「服用薬剤調整支援料1」は大きな変更なし。減薬成果に対する評価です。- 点数:125点(変更なし)
- 要件:6種類以上の内服薬処方患者で、文書提案により調剤内服薬が2種類以上減少した場合。月1回限り。