2026年2月15日日曜日

2026年(令和8年度)調剤報酬改定:在宅薬学総合体制加算は「厳格化×手厚い評価」の二刀流に。在宅シフトの本気度が試される

令和8年度調剤報酬改定において、在宅薬学総合体制加算が大幅に見直されました。

今回の改定は「実績要件のハードルが非常に高く設定された(厳格化)」一方で、「真に地域で在宅医療の中核を担う薬局には高い評価(点数増)を行う」という、メリハリの効いた内容です。

1. 全体像と改定の狙い

「在宅薬学総合体制加算」は、在宅業務を行う薬局の体制を評価するものですが、今回の改定で「要件の厳格化」「評価の引き上げ(特に単一建物1人の場合)」が同時に行われました。

  • 加算1:点数は倍増しましたが、求められる訪問回数も倍増。
  • 加算2:点数は患者の居住形態に応じて2段階に。要件には「訪問回数の絶対数と割合」「常勤換算3名以上」など、極めて高いハードルが課されました。

改定の狙いは明確です。在宅を「片手間」ではなく「本気で専門的に取り組む薬局」にシフトさせること。設備から「人」と「実績」への評価軸変更が象徴的です。

2. 点数の変更

【在宅薬学総合体制加算1】

  • 改定前:15点
  • 改定後30点2倍に引き上げ)

【在宅薬学総合体制加算2】

  • 改定前:一律50点
  • 改定後:患者の居住形態による2区分
    • イ(単一建物診療患者が1人の場合 / 単一建物居住者が1人の場合)100点2倍に手厚く)
    • ロ(イ以外の場合):50点(据え置き)

※特別調剤基本料Aを算定する薬局は、それぞれの100分の10相当となります。

ポイント:居宅(個人宅)など単一建物1人の患者への訪問を強く優遇。施設在宅中心の薬局は点数据え置きですが、手間のかかる個人宅訪問を積極的に行う薬局が大きく報われる設計です。

3. 「在宅薬学総合体制加算1」の施設基準(厳格化)

点数が倍増した分、実績要件も引き上げられています。

  1. 体制整備
    地方厚生局長等への届出、必要な体制整備(大きな変更なし)。
  2. 実績要件(直近1年間)
    • 改定前:在宅訪問等の算定回数が計24回以上
    • 改定後:在宅訪問等の算定回数が計48回以上

    解説:年間24回(月平均2回)→年間48回(月平均4回)へ倍増。ライトに在宅を行っていた薬局にとって、この「月4回」の維持が加算1算定の大きな壁となります。

4. 「在宅薬学総合体制加算2」の施設基準(大幅な厳格化)

ここが今回の改定の最大のポイントです。無菌室等の設備要件は廃止された代わりに、「圧倒的な実績量」と「マンパワー」が求められるようになりました。以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 加算1の要件を満たしていること
  2. 圧倒的な在宅実績(回数とシェア)
    以下のまたはのいずれかを満たす
    • :直近1年間の訪問回数(協力薬局連携含む)が計240回以上、かつ総算定回数に占める在宅の割合が2割超
    • :直近1年間の訪問回数(協力薬局連携含む)が計480回以上、かつ総算定回数に占める在宅の割合が1割超

    解説:年間240回=月20回ペース、480回=月40回ペース。さらに「処方箋受付回数に対する在宅割合」が求められるため、外来中心の大型門前薬局は分母が大きすぎて「1割/2割」の壁を越えにくい設計です。

  3. 質の高い薬学的管理の実績
    以下のア~ウのいずれかを満たす
    • ア(麻薬):麻薬管理指導加算などの算定回数が直近1年間で合計10回以上
    • イ(無菌):無菌製剤処理加算の算定回数が直近1年間で1回以上
    • ウ(小児):乳幼児加算および小児特定加算の算定回数が直近1年間で合計6回以上(新設選択肢)。

    解説:以前の「無菌室設置」要件は削除され、実績ベースに。麻薬・無菌・小児のいずれかで実績を証明すればOKですが、いずれも「実際にやっているか」が問われます。

  4. 手厚い人員体制
    • 改定後常勤換算で3名以上の保険薬剤師が勤務。
    • 原則として開局時間は2名以上常駐し、常態として調剤応需および急変対応が可能な体制。

    解説「常勤換算3名」は小規模薬局にとって極めて高いハードルです。

まとめ

今回の改定は、以下の意図が明確です。

  1. 「在宅専門・重視型」へのシフトを強く推奨
    加算2の「240回/480回」や「シェア1割/2割」は、片手間の在宅では絶対に達成不可能。在宅専業レベルの覚悟が必要。
  2. 単身・居宅患者への評価を重点化
    施設(単一建物複数人)は50点据え置きですが、居宅(単一建物1人)は100点に倍増。手間のかかる個人宅訪問を積極的に行う薬局を優遇。
  3. 設備から「人」と「実績」へ完全シフト
    無菌室を持っているだけでは評価されず、実際に無菌調剤・麻薬対応をしたか、それを支える薬剤師3名以上がいるかが問われる。

小規模薬局の現実的な対応策

  • まずは加算1の年48回(月4回)クリアを目指す。
  • 医師連携強化で居宅患者を増やし、実績を積み上げる。
  • 人員確保(常勤3名体制構築)と教育を急ぐ。
  • 加算2は在宅専業レベルの薬局に絞られる可能性大。

在宅医療のニーズは今後さらに増大します。今回の改定は本気で取り組む薬局には手厚い内容になりました。逆に言えば、小さいところは在宅には関わるな、やるなら中途半端なことはするなというメッセージだと思います。